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僕だけ行けない異世界RPG   作者: せりざわなる
第一章 親友と始まりの少女。
5/10

友の旅立ち




スグルは度々僕の家にやってきて、「RPG」について二人で勉強した。

残念ながら、やっぱりゲームとか小説とかは合わないみたいで、そこから興味を広げてくれる事もなかったし、知識を深めようとしてもなかなか上手くいかなかった。

だから勉強というよりは、世界観に馴染もうとしている感じか。


共感が得られないってのはもどかしいけれど、スグルはめげずに知ろうとしたし、楽しもうとしてる雰囲気は伝わってくるので、僕も出来る限りスグルのペースにあわせて楽しむ事にした。


もちろん、あの【ザ・サバイバル】は購入して、二人で読み込みましたとも。




スグル自身の話もするようになった。


地方出身、1人暮らしの僕とは逆で、

スグルは地元出身、実家暮らし。

両親とスグルを溺愛する1つ上の姉がいるとか。


自分で溺愛するって言っちゃうのかよ。


「察して」


嫌いとか仲が悪いとかではないが、他人の僕かわかるように伝える自信がないんだと。

姉に限らず、両親の事もあまり他人に話すようなエピソードがないらしい。

正直なところ、家族それぞれが家よりも外へ活動しに出るタイプなので、互いに深く関わるような出来事が極端に少ないようだ。

姉との間をのぞいて。

他の人からすれば、家庭内は放任か信頼か分かれるところだけど、スグルは家族に対して尊敬も愛情も信頼ももってるなら。


「それでいいんじゃない」


スグルと話せる事はまだまだあるしね。




学校でもスグルと話すようになった。

だけど、もともと僕はそうだし、スグルも何故かRPGの話はしなかった。

だから今度はスグルが先生になった。授業の事、日々の事。スグルの興味があること。スグルと一緒に行動する友人達の事。

スグルのコミュ力のアシストもあって、少しずつ話が続く人が学校で増えた気がする。


スグルは、外で友人と遊ぶ楽しさを体験させてくれた。

子供の時とは違う今の僕が楽しめる遊び。

学校でスグルを通じて話すようになったクラスメイトへの反応を見て、選択したのは初心者コースのショッピング。

いつも価格のみで利用していたファストファッション店をコーディネートを目的に行った。

新しいことをするのに関心があるが、積極的にしようとまでは思わない。

スグルもそんな僕のペースに合わせてくれて、色々教えてくれた。


スグルは、本当に人を心地よく流れに乗せるのがうまい。

悪用だって出きるだろうに、それがないから僕もやがて自然に「スグル」と呼べるようになっていった。



夏休みになった。

スグルは短くて単純なRPGゲームなら最後まで続けられるようになった。

畳の上にあぐらをかいて座りながら、ゲームを進めるスグル。

その後ろにあるベッドの上に座ってアイスを食べながら、僕は聞かなきゃいけない質問をした。


「なんで、RPGを知りたかったの?」


ぴ。

スグルは、ゲームを一時停止して振り替える


「ってか、それ最初に聞くもんじゃね?」


スグルは爆笑した。


え!

やっぱ、そうかー。


久しぶりにスグルの前であわあわした状態になる。

そんな状態の僕を更に笑うスグル。

ひとしきり笑った後、スグルは僕から目をそらして困ったような表情になった。


「あー、なんて言ったらいいんだろうな」

「え?そんな難しい事情?」

「いやー、単純ちゃあ単純」

「好きな子がRPG好きとか?」

「それは説明しやすすぎ」

「なんかの勝負とか?」

「どうやって勝負すんだよ」


デスヨネ。

姉の話をした時のような顔をしてるな、スグル。

追求しなくてもいいか。


「いつかは教えてくれる?」

「ああ」

「嫌ならいいんだよ」

「嫌じゃない。いずれ、わかる」


スグルは再びゲームを始めた。


「なあ、ミキ」

「うん?」

「今度、近所で夏祭りあるんだ。行く?」

「神社で屋台とかある、そーゆーの?」

「そう。ミキも嫌いじゃないだろ」


わかってらっしゃる。


「浴衣の女の子」

「そっちかよ!」




8月に入った頃、スグルは突然アパートにやってきた。

いつもは連絡を入れてからくるのに、初めての事だった。


「どうしたの」

「本を返しに来た」

「え?え、ああ。うん」


自分の靴をもって部屋にあがってきたスグルは、背負っていた大きなリュックをドスンと足元におき、その口を開いて本を取り出した。


「ありがとうな」


差し出された本をうけとるけれど。

それよりも。

スグルの瞳。

僕を見る瞳の印象が、何か暗い。


「スグル。どうしたの」

「ミキ。お祭りの約束をしてだろう?」

「う、うん」

「約束は守れない。ごめんな」


いつものスグルじゃない。

そういえば、なんかいっぱい詰め込んだリュックなんかもってるし、ファッションもいつもと違う。

アクセサリー類はつけてないし、8月なのに袖をまくった長袖シャツや厚手のジーンズを着用していた。


スグルはリュックの中から袋を取り出して靴を包み、またリュックにしまいこむ。


「旅行でも行くの」

「んー」

「約束の事はいいよ。でも、何か変だ」


スバルは整えたリュックをまた背負う。


「ミキ、俺は出かける」

「うん」

「前々からオファーうけてたんだけどさ。受け入れ先の準備が整わなくてちょっと余裕があった。それで、向こうの事を少しでもしっておこうと思って。そうしたら、ミキに会った」

「うん……うん?」


なんか方向がズレてる?


「ミキは面白そうだったし、実際に面白かったし、本当に楽しかったよ」

「おい、こら!」

「友達になって本当によかった」


どきゅん!

何をいきなり言うの?

そんな気がなくても、ときめいちゃうじゃないか!


いやいや。

そんな場合でなくってね!


スグルはにっと笑って、でも真顔に戻る。


「色々、教えてくれてありがとうな」

「へ?」

「受け入れ先の準備が整ったんだ。俺は行く」

「うん」

「行き先は異世界だ」

「え!え?」


いきなり話がぶっとんたよ!

あわあわするしかないだろう。

スグルが何を言い出したのかわからない。


「ちょっと!」

「じゃあいってくる。後は頼むな」


スグルの足元周りに円状の紋章が浮かび上がりー。


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