牙
僕たちは
猛獣のように、
柔らかな身体[肉]を
食い破る牙を持たない
僕たちは
猛禽のように、
柔らかな身体[肉]を
抉り取る爪を持たない
けれど、
僕たちは
獣よりも鋭い
牙をたて
鳥よりも尖った
爪をたて
その、柔らかな心に
見えることのない
消えることのない
傷痕を残すのだ
噛み千切り
切り裂いて
決して目には見えることのない
止めどない鮮血に
気づくことができないまま
今日も僕たちは
無知であることに気付かずに
実体のない
その牙を
その爪を
無造作に振るい続けている