電子の葬列
「……『本日、アケロン都市再生記念日を迎える』」
静かな声が、記事を読み上げる。
薄暗い店内で、女は眼鏡の位置を直し、手元の古いタブレット端末に視線を走らせていた。
「『三年前の大粛清。都市を脅かしたテロリストを鎮圧し、市民の平穏を取り戻した特殊部隊・葬儀屋。その尊い犠牲と栄光を、我々は永遠に記憶するだろう』……だそうよ」
女は鼻で笑い、画面を指先で弾いた。
記事には、加工された美しい「遺影」が掲載されている。
黒い喪章のついた、二人の女性の写真。
記事の下には『彼女たちの魂に、永遠の安らぎがあらんことを』という、白々しい献辞が添えられていた。
「へえ、いい記事じゃん。感動的で涙が出ちゃうね」
カウンターの向こうで、少女がケラケラと笑った。
彼女はスナック菓子を放り投げ、空中で器用に口でキャッチしながら、その記事を逆さまに覗き込んだ。
「でもさあ、店長。これ書いた記者、現場見たことないでしょ。あの日の私たち、もっと泥だらけで、血みどろで、ひどい顔してたのに」
「ええ。美談というのは、得てしてそういうものよ」
女──マキナは、タブレットの電源ボタンに指をかけた。
その瞳は、記事の中の「英雄」よりもずっと冷たく、そして鋭い光を宿している。
「都合の悪い『掃除屋』は死体にして、神棚に飾る。……奴らの常套手段ね」
プツン。
マキナがスイッチを切ると、画面の中の英雄たちは一瞬にして闇へと消えた。
あとに残ったのは、湿ったオイルの匂いと、行き場のない二人の「亡霊」だけだった。




