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第七話 特別で格別な力

「アビス・グラジオラスだよ。さっき戦った人はアイディーって言ってた。」


アビス・グラジオラスにアイディー、そして黒い花の紋章。

これだけでも見つけられそうな、情報ばかりだ。


「ありがとう。これで犯人に近づける。」


話を終え、セレストの自室へと戻る。

だが、もし犯人を見つけたとして倒せるわけがない。今はとにかく力をつけないと...。そう決意を固めて、眠りについた。


翌朝、アルカナは約束通り〈獣気解放〉について教えるために、城から少し離れた草原へと連れて行かれた。


「それでは、これからアルカナ先生の霊獣使講座を始めます!」


「よろしくお願いしまーす!」


「ですが、今日は特別にエルガ君が担当してくれます!」


「...今日"も"だよね!」


「だって...教えるって難しいもん。」


難しいもんって...前回もだったが、アルカナは魔法に関して

は、感覚派だからしょうがないのか。


「...それじゃあ、エルガさんよろしくお願いします!」


「そこまでかしこまらなくていいですよ。緊張は魔法の天敵です。どんな時でもリラックスして使いましょう。」


アルカナ先生もとい、エルガ先生の講座が始まった。


「それでは、お手本を見せるのが一番なので、見ていてください。」


「〈獣気解放〉濤碧竜(マーレア)


エルガの言葉には、アルカナとはまた違った圧を感じた。エルガは、アルカナと同じように角と翼が生えてくると同時にエルガの霊獣である竜が現れた。ドラゴンというより、子供の頃に本で見た、手足のないドラゴン。ワイアームのような見た目をしている。


「こんなふうに、魔法と契約している霊獣の名前を唱えることで、魔法自体は発動します。ですが、問題はここから。

使う内に慣れることですが、初めは持続することが困難です。まあ一度使ってみるといいでしょう。」


「わかりました!...いきます」


一度呼吸して、心を落ち着かせる。エデンを見て、覚悟を決めて、魔法を唱えた。


「〈獣気解放〉聖馬(エデン)!」


強い光に包まれ、体の奥底から力が湧いてくる。あの時と同じ感じだ。体の変化に驚いていると、背中に違和感を感じた。不思議に思いながら背中を触る。すると、背中の中央あたりに二つ、肌の質感とは違うものがある。この触り心地どこかで...エデンの...翼...


翼だ!


僕もエデンと同じ翼が生えた。アルカナやエルガに生えてきているのだから、当たり前なのか?


「今、僕に翼生えてる!?」


「あぁ生えている。私の翼と全く同じだな。」


「やったー!エデンとお揃い!」


セレストは初めてのことに驚きが止まらないが、その反応とは、全く異なる反応を二人はしていた。


「いやいや、それはおめでとうなんだけど...」


二人は目を見開いてこちらを見ている。こちらというより、頭上を見ているように感じる。


「その輪っか、ていうか光輪ってやつだよね...天使の頭によくついてるやつ。」


「そう...ですね。〈獣気解放〉をした場合は、契約している霊獣の特徴が体に現れます。ペガサスの場合の話も聞きましたが、光輪が出たという話は聞いたことがないですね。」


光輪!?自分で確認することは叶わないが、二人が言うなら本当なんだろう。なぜそんなものがあるのか、考えると一つの結論に辿り着く。


「...つまり、エデンは特別ってことだよね。」


二人はツッコミもせず、ただただ頷いた。光輪から目が離せないようだ。


「僕は会った時から分かってたよ。エデンはすごいって。」


エデンを褒めると、少し照れているのを感じたので、好奇心を抑えきれず、執拗に褒め続けた。


「分かった!そこはもういい。それよりその力の使い方を聞いておけ。」


エデンは話を断ち切り、セレストから少し離れてしまった。


「それじゃあ、講座の続きお願いします!今なら...なんで..も...」


あれ、何でだろう。ちからが、ぬけていく。

セレストに生えた翼と光輪が消え、先程までのテンションが嘘だったかのように、唐突に気を失い倒れてしまった。

エデンはセレストの顔を見て、気を失っていることに気づく。そしてセレストを守るように、セレストの周りに半透明で巨大な盾の壁が現れた。


「大丈夫ですよ。エデンさん。初めはこうなってしまうんです。少し待ったら起きますよ。」


エルガの言葉を聞いて、警戒はしているが、すぐにセレストの側に駆け寄り、横になった。そして自らの翼でセレストを覆った。

少し時間が経ち、セレストは気がつく。瞼を開き、周りを見るが真っ白な何かに囲われている。少し触ってみると、囲いが少しずつ開いていく。寝起きでぼーっとしていたが少しずつ意識が戻り、状況を理解すると地面から飛び起きた。


「どのくらい寝てた!?」


「数分だ。大丈夫か、体は痛まないか。」


「大丈夫だよ。守ってくれてありがとう。」


エデンは翼をたたみ、元いた場所へ戻る。

その光景を見ていたアルカナは後ろの方で、満足そうに腕を組んでいる。


「どうしたの?エデンが何かした?」


「いやいや、何でもないよー。さあ、講座を続けよう。」


そんなことより、エルガさんの言うとおり、持続することが出来なかった。何が原因なんだろうか。


「何で急に倒れたんだろう?。」


独り言が声に出てしまったことを、エルガは聞き逃さなかった。


「セレスト君は魔力をいつ使いますか?」


「?...魔法を使う時だけです。」


「そう!魔力を使う時は、限られているのに。それなのに!

〈獣気解放〉を使用している時は、〈感覚共有〉などの魔法を常時発動して、魔力を放出し続けている状態になってしまう。体が慣れてないんですよ。その状態に。」


「なら、使っていれば、少しずつ使える時間も増えるってことですか?」


「正解です。なので、一日一回使っていけば、いつか安定して使える日が来ます。魔力って体力と似てるんですよね。一日一回走り込みをすれば、少しずつ慣れて、疲れを感じなくなる。それと似ているんです。」


なるほど。エルガさんに教わってよかった。アルカナならこんなふうに教えてくれることはないだろう。多分、気づいたら出来てたなんて言っているのが想像できる。


「分かりました。忘れないようにします。...ちなみに、アルカナはどうやって覚えたの?」


エルガの後ろで、暇そうにしているアルカナへ問いかけた。


「僕?気づいたら出来てたんだよね。」


やっぱり...


「それでは次の話に行きますよ。」


「お願いします!」


「セレストさんも見たことあると思いますが、アルカナ様の使う特殊な魔法。あれは、アストラルさんの持つ"ユニーク"と言うものです。」


特殊な魔法というと、アルカナがこの前アイディーと戦った時に使っていた魔法のことだろうか。ユニーク?というのはなんだろう。


「ユニーク?魔法の種類か何かですか?」


「はい。魔法には種類があります。一般(ジェネラル)専門(テクニカル)そして特異(ユニーク)の三種類です。」


「そして、これから説明するのはユニーク、特別な魔獣だけが持ち合わせている格別な魔法です。」


「魔獣だけ?でも、似たような魔法を作ればいいんじゃないですか?」


普通の質問をしたはずだが、なぜかエルガの目が輝き始める。


「知っているのですか!そうなんですよ。元来、魔法は魔導書に記載されているものしか使うことが出来ませんでした。ですが、最近発見された文献に載っていたんです。魔法の作り方について。」


ここだけの話ですよ。と釘を刺されたが、そもそも話についていけてない。だってエデンは魔法の作り方を教えてくれたし、実際に自分で作りもした。話が噛み合っていない気がする...


「で、でも、僕魔法作ったことあるんですけど...」


「え?」


「アルカナの前でも作ったよね?レイクサーペント倒した時。」


アルカナへ確認しようとしたが、全力で首を振っている。戦闘中に作ったはずだが、身に覚えがないらしい。


「...アルカナ様?」


「本当に知らないよ...そ、そうだ。セレスト、作った魔法使ってみてよ。」


エルガの鋭い視線がアルカナに刺さる。アルカナは声を震わせながら、セレストへ提案した。


「分かった。〈水殻〉(アクアシェル)


セレストの体を中心に、水で出来た中空球型の壁が現れた。

これはレイクサーペント戦で作成した魔法だ。城の自室で名前を付けて魔法にした。

この〈水殻〉や、以前作った〈岩爆〉(ストーンブラスト)などの自作した魔法は、何故か練習なしで放つことが出来るようだ。


「〈水殻〉?〈水壁〉(アクアウォール)と似ていますが。このような形にはできないはず...。セレスト君がこの魔法を作ったのですか?。」


エルガはその鋭い瞳をこちらに向けてくる。はい。顔色を伺い、ゆっくりと頷いた。するとエルガは、考え始めた。二十秒ほど経ち、考えがまとまったのかセレストへ問いかける。


「今、新しい魔法を作ることはできますか?例えば、空中に、自分の意思で動かすことが出来る、大きな手を作る魔法なんてどうでしょう。」


「少し待っててください。やってみます。」


早速、魔法作りに取り掛かる。

自分の手を拡大するイメージ。自分の意思で動かすなら...本物の手と一緒に動く方がわかりやすいかも、手の形を模る方法は、魔力で空気を固める〈風剣〉(ウィンドブレイド)と似たやり方でいいかな。これをそうしてあれをどうして。

考えていくうちに、徐々に手が作られていく。

数秒後には、人をつかめそうなほど大きな手が完成した。


「じゃあ動かしますよ!」


動作確認で自分の指を動かすと、連動して大きな手の指も動いた。次に手のひらを上に向け、エデンの前に魔法の手を動かす。


「上に乗ってみて。」


「?...まあ、いいぞ。」


エデンが手に乗った瞬間に、自分の手を振り上げる。すると魔法の手が急上昇し、エデンが宙に舞い上がった。

セレスト〜...。エデンの声がどんどん小さくなっていく。


「名付けて、〈魔手〉(マジックハンド)!」


魔法を一度解除する。作られた手は消えてしまう。


「そして、もう一回!〈魔手〉!」


魔法を唱えると、先程と同様に手が現れた。これで魔法完成だ。飛んでいったエデンは羽を広げ、ゆっくりと降りてきた。


「...」


ハッ!魔法作りに夢中になりすぎて、エルガのことを忘れていた。エルガは顔を伏せ、手を当てている。


「これでいい、でしょうか...」


重たい空気に、思わず口調が変わってしまう。どう言い訳しようか考えていると、笑い声が聞こえてきた。その声の主は、アルカナ...ではなく、エルガだった、


「これはまいりましたね!本当だったとは!こうしちゃいられません。後はアルカナ様でも説明できると思うので、私は研究に戻ります。セレスト君は暇な時にでも、研究室に顔を出しに来てくださいね。今日はありがとうございました。それでは!」


行ってしまった。やっぱり嵐の様な人だ。アルカナが止めようともしなかったということは、いつもこんな感じなんだろう。


「は〜緊張した〜。それじゃあ話を戻すよ。ユニークについての話だったよね。」


「え?...あ、そうだったね。」


「うん。それでユニークには...。説明しにくいな...アストラルを例に話すね。」


「アストラルのユニーク。〈運命の道(タロット)導〉っていうんだけど、その中に、"必殺技"として〈8.正義〉(ラメド ジャスティス)とか〈14.節制〉(サメフ テンパランス)とかがあるってのが一般的かな。」


アイディーに使った、黄金の剣。森林竜に使った、二つの盃。確かに、他の魔法とは格別といっていいほど強力な魔法だった。


「ユニークってエデンにもある?」


「私には、どれがユニークとやらに該当するか知らないからな。なんとも言えん。」


そっかー。エデンの言葉にセレストは肩を落とす。



「あるよ。絶対。」



やけに真剣な顔でアルカナは、"ある"と断言した。その言葉には、絶対的な自信ととてつもない期待が感じられた。


「まあ、セレストが〈獣気解放〉出来るようになったらわかる事だけどね...。そこで、修行の一環として、セレストに頼みたいことがあるんだけど。」


「修行?何をするの?」


「えっと、最近、事件が増えてること言ったよね。」


事件。確か、アイディーの所属している組織が関わってるとか。母さんの仇が見つかるかもしれない、今一番知っておきたい話だ。


「聞いたよ。アビス・グラジオラスが関わってるかもしれないって。」


「それで、犯人逮捕に協力してくれないかな。支援もするからさ。」


誘われなくても、自分で探そうとしていたから願ったり叶ったりな話だ。断る理由もなく、すぐに承諾した。


「よかった。じゃあ、明日にでも行ってもらおうかな。場所は明日の朝話すから、今日は城でゆっくりしていってよ。」


城へ戻り、挨拶回りをしたが、エルガに魔法について聞いたり聞かれたりして、ゆっくりする暇もなく、すぐに日が暮れてしまった。寝支度をして、眠りにつく。

朝になり、急いでアルカナの元へ向かう。アルカナはすでに起きていて、書類とにらめっこをしていた。


「あ、おはようセレスト。準備はできたかな?」


「もちろん!」


「よし。これからセレストに向かってもらうのはイヴァン。ここから北へ進むとある町だよ。そこに人を送るから合流してね。」


「分かった!」


「それじゃあ、行ってらっしゃい。」


「行ってきます!」


アルカナとの話を終え、城から出る。霊獣使になり、ついにエデンと街を歩くことができるようになった。

大きな一歩を踏み出したが、旅は始まったばかりである。






セレストが出ていった後、アルカナはエルガに、研究室へ呼び出されていた。研究室には、二人以外誰もいない状態にされ、沈黙に包まれていた。


「どうしたの?」


「分かっているでしょう。セレスト君の件です!」


あ〜...。アルカナは事情を理解し、近くにある椅子へと座った。


「あの子、どこで拾ってきたんですか。セレスト君に作ってもらった魔法のこと覚えてますよね?あの行為がどんな意味を持つのかということも。」


「セレストは普通の男の子だよ。ちょっと特別なだけ。」


「それは普通とは言いません!いいですか、あの〈魔手〉という魔法。あれはフィアスグリズリーのユニークと瓜二つ。ということは、セレスト君がその気になれば...」



「全ての魔獣のユニークを模倣できるね。」



「そう!そうです!そんなことができてしまったら。魔法会に激震が、あ、ちょっとアルカナ様!?」


面倒くさそうな話が始まりそうなので、ここはおいとまさしてもらおう。研究室からこっそりと抜け出し〈歪門〉(ワープゲート)で屋上へ出る。

確か模倣できるとはいえ、問題は魔力が持つかという所だな。逆にいえば魔力量の問題さえ、解決してしまえば、本当に全てを模倣できてしまうってことだけど...


「やっぱり面白いな〜、セレストは。」






魔法

〈水殻〉(アクアシェル)

セレスト自作魔法第二弾

自分を中心に、水で出来た中空球型の壁を作り出す魔法。

水系の魔法ならとてつもない勢いじゃない限り、勢いを殺すことができる。


〈魔手〉(マジックハンド)

セレスト自作魔法第三弾

空中に大きな手を召喚する魔法。

魔法を発動した本人の手の動きと連動して動く。


〈水壁〉(アクアウォール)

水でできた縦長の壁を作る魔法。

〈水殻〉と同じ。

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