第一話 金と魔法と失敗と
セレストとエデンは、情報収集のために近くの村へ来た。
「情報を集めるには、人の集まる場所が一番だ。この辺りの地図を買っていこう。」
「それなんだけど...お金がなくって。」
「そうか、今あの家に戻るのは危険だしな。」
家にはまだ犯人がいる可能性がある。それ故に戻ることはできない。しかし金が無くては何も...
何かないか周りを見渡す。そしてエデンは閃いた。
「ならば、依頼でもこなしてみるか。」
「依頼?」
「あぁ、あそこに掲示板があるだろう。とりあえず見に行く ぞ。」
エデンの視線は村の中心に集まっている。そこには村の広場があり、かなりの量の紙が貼られている掲示板が置かれていた。
「...これと、これだ。」
セレストはエデンの選んだ依頼の紙を取った。
「僕、武器とか持ってないよ...」
「前に言っていただろう。魔法を使いたいと。教えてやるからついてこい。」
エデンとセレストは村から少し離れた草原まで歩いた。するとエデンは目標を見つけたのか背の高い草むらに身を隠す。
「受けた依頼はアルミラージ討伐だ。
アルミラージは角の付いた兎だ。あそこにいるだろう。」
二人の隠れている草むらの数m先に、アルミラージの群れがある
「角を七本、肉を五個、角はポーション屋で肉は肉屋が依頼を出してるからちょうどいいだろう。」
「では手本を見せるぞ。」
エデンは小さな石を作り出しアルミラージに向かって飛ばす。飛ばした石は瞬く間にアルミラージの頭へ当たり、絶命させた。
「すごいね...」
セレストはエデンの綺麗な魔法捌き?に目をキラキラさせなている。
「説明するぞ。まずは...」
要約すると、まず形を想像して、魔力をその形に変形させる、最後に軌道や速度などを設定する。これで魔法を放つことができるらしい...
「魔力を変形...」
「よく言われているのは、血のように身体中を魔力が巡っていることを認識するとわかりやすいらしい。」
「認識できたら後は、その魔力を体の一部に集中させる。例えば、手のひらとかな。」
「わかった。......こんな感じ?」
セレストは頭の中で鋭い石を想像し。その石の形に魔力を変形させる。すると空中に鋭い石が生まれる。そして軌道と速度を設定すれば...
「おぉ!上手いぞ。」
「いくよ、えい!」
セレストの石はアルミラージに向かって真っ直ぐに飛んで行く...
と思ったがあらぬ方向に飛んでいってしまい、アルミラージを逃がしてしまった。
「まあ、初めてだからな。石を作るだけでも大した物だ。」
「そう、だよね...」
上手く魔法を発動できなかったことに気分が落ちてしまったが、沸々とやる気がみなぎってくる。
「エデン!次行くよ!!!」
セレストは失敗したことをかき消すような大声でエデンを急かした。
1時間後
「やったー!出来た!」
回数を重ねに重ねた結果ついに、アルミラージ討伐を成功させた。そして要領を掴かみ、依頼の個数の7匹のアルミラージを仕留めた。
「よし、では次だ。こいつの角を取る。」
「今度はどんな魔法?」
「物を切れる魔法だ。一般的なのは〈風剣〉だな。」
「名前があるの?」
「そうだな。名前を付けると、その魔法は世界に記憶される。そうすれば次からは、魔力を込め、その魔法の名前を唱えるだけで発動できるわけだ。」
魔法で大変なのは、想像と魔力の変形だからな。とエデンは付け加える。
「なら、石を飛ばす魔法の名前もあったの?」
「あれは〈石矢〉が近いな。」
「あるなら教えてよ〜」
「そこまで万能な訳わけじゃないぞ。ある程度自分で使い、要領を理解することが重要だ。」
「そっか。なら〈石矢〉はもう使えるってこと?」
「やってみたらどうだ。」
「わかった!」
セレストが標的を探していると。少し離れた場所にいい大きさの木があった。
セレストは早速、木に向かって魔法を唱える。
「〈石矢〉!!」
セレストの放った〈石矢〉は木を抉り貫いた。
「やるじゃないか。完璧だ。じゃあ今度こそ、〈風剣〉だな。」
こうだ、と当たり前の様にアルミラージの角を切り取る。切り取られた断面は初めから何もなかったかの様に綺麗だった。
「今なら、何でも出来そうだよ!」
セレストはかなり自信ありげに答える。そのまま〈風剣〉を発動するための練習を始めるが...
「あ、」
セレストの初〈風剣〉がエデンにぶつかってから1時間後
「やっと依頼の個数集まったね。」
「初めはどうなるかと思ったが、やはり覚えがいいな。」
「やっぱりそうだよね〜!」
調子に乗りつつも依頼人に依頼品を届け、やっと当初の目的であるお金と地図を手に入れた。
「じゃあ、最初の目的地を決めよう。」
地図を手に入れたセレスト達は、村の広場で地図を広げて、人の集まる場所を目指していた。
「これから行くのは、ここだな。」
「ドラゴリニスってとこだよね。」
「そうだ、この国の首都はあの村の商人がよく訪れていると言っていたな。」
商人が言うには交易の場になっているため、商品も色々集まる。それ故に、冒険者もかなり訪れているらしい。
「情報集めにはもってこいだね!よし、行こう!」
ついに目的地が決まり、セレストは闘志を燃やしている。そのまま、軽快な足取りで森へ進んでいった。すると、少し進んだ先に、液体の塊のような物が見えた。
「あれ何?」
「スライムだな。弱点が無さそうに見えるが、体の中央あたりに核がある。それを破壊すれば倒せるぞ。」
「なら、新しく覚えた魔法、試してみようかな。」
スライムの背後?と思われる方向に隠れ、新たな魔法を放つ。
「〈火弾〉!...あれ?」
アルミラージ狩りの際に、基礎として学んだ〈火弾〉はスライムに当たった瞬間、溶ける様に消えてしまった。
「スライムは火や風の様な物体ではない物の攻撃は魔力として吸収してしまうぞ。」
「なら、これでどうだ!」
セレストは〈火弾〉に〈岩矢〉を纏わせる。
「名付けて!〈爆岩〉」
セレストの放った〈爆岩〉はスライムを貫き、内側から爆破した。
「やるじゃないか。このように魔法はできる。」
「魔法って面白いね。」
「そうだ、だが使い方次第では人の命を奪うことも出来る。だから、気を付けるんだな。」
自作魔法でスライムを倒し、さらに上機嫌になったセレストは始めよりも森を進む速度を上げる。
「それにしても、魔獣全然いないね。」
「まあ、いないに越したことはないだろう。」
セレストの意見は至極真っ当で、これだけ進んできたのに今まで会った魔獣は、スライムぐらいだった。
「確かにそうだね。」
セレストは納得いかなそうだが、目的地を目指して歩き出した。そして森も中盤に差し掛かった時、とてつもない大きさの咆哮が轟いた。
「ねえエデン、今の鳴き声って...」
「これはまずいな。逃げるぞ。」
エデンは私の背中に乗れとセレストに呼びかけ、セレストを背に乗せ、走り出した。と同時に森の奥から巨大で深緑色の生き物が迫ってくる。
「あれって!ドラゴンだよね!」
セレストはエデンの背の上で興奮気味に聞く。
「そうだ、私達はアイツの縄張りに入ったみたいだな」
「だから魔獣が少なかったんだ。」
「そう言うことだが、まだ安心はできないぞ、後ろを見てみろ。」
「え?何で?」
ドラゴンから逃げ始め、まだ1分も経っていないが気付けば
もう追いつかれそうな位置まで近づかれていた。
「うわぁ!!〈風...」
「待て、私に捕まれ!落ちるなよ!」
エデンはそう叫ぶと、翼を羽ばたかせ空へと飛び立つ。
セレストは振り落とされそうになりながらも目を瞑り、エデンに力一杯抱きついた。少しの浮遊感があり、目を開けると
紺碧の空が広がっていた。
「綺麗だね...」
「そうだろう。私のお気に入りの景色だ。」
エデンは自慢げに周りを見渡し、今の状況を楽しんでいる。
「でも...ドラゴン来てるよ...」
「それだけが問題だな。どうしたものか...」
エデンがドラゴンをどう撒こうか考えていると、セレストが慌てて叫ぶ。
「エデン!前!前!」
「大丈夫だ、このあたりはこの高さに生息している魔獣は...」
いないと言いたかったが、前から飛んでくる生物を見て、その考えは吹き飛んだ。
「あれって...」
その生物の体は巨大で、星空の様な模様のある...
「ドラゴン...だな。」
ドラゴンだった。
「ど、どうするの!」
「とりあえず、森へ入るぞ。少しは時間を稼げるだろう。」
エデンは進む方向を変え、森へ急降下。とりあえず森の中の茂みへと姿を隠した。
「一応隠れられたけど、大丈夫かな...」
「音を出さなければ気付かれないはずだ。」
エデンが茂みからドラゴンの様子を伺っていると、隣の方から大きな呼吸音が聞こえる。
「おい、もう少し静かにしろ。」
「僕じゃないよ...」
「じゃあ、何の音...」
背後から刺さる様な気配を感じ、二人は恐る恐る後ろを振り返った。
「うわぁぁ!!!!」
隠れていることすら忘れ、思いのままに叫んでしまう。
後ろを振り向くと、星空模様のドラゴンが二人をじっと見つめながら立っていた。
魔法
〈火弾〉
爆発する火球を作る魔法、着弾するまでは任意のタイミングで爆破できる。
|〈爆岩〉
セレストが初めて作った魔法。〈火弾〉に〈石矢〉を纏わせることで、標的を貫通し内側から爆破できる。任意のタイミングで起爆可
〈石矢〉
生成した石を標的に飛ばす魔法。
〈風剣〉
空気の刃を作る魔法。エデンは斬撃として飛ばしていたが、名の通り剣として使うことも可能。
魔獣図鑑
角兎
角の付いているうさぎ
角はポーションの素材、肉は食料、皮は袋の素材など余すことなく使えるため、よく狩られる。
粘塊
魔力で出来ている核に、少し粘りのある魔法で出来た液体で形作られている。
いわば魔力の塊のような魔獣。その性質故に、他の魔獣に魔力回復のため食べられることもある。
魔力を持つ物に集まり、消化液を出し吸収する。
※魔獣図鑑では漢字表記の名前も掲載しますが、作中では、カタカナの方が多いのであまり気にしないでだいじょぶです。




