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第十話 冒険者ギルド

ギルドの建物の扉を開けて中に入ると、この場に不相応な子供が入ってきたことで目線はセレストに集まり、品定めするかのような目がセレストに突き刺さる。


「おい坊主、ここはお前みたいな奴が来るとこじゃねえ。さっさと家に帰りな。」


セレストを見ていたうちの一人の細身な男がセレストへ話しかけた。


「ここに用事があるんですけど...」


「用事?場所間違えてんじゃねえか?」


男がセレストを詰めていると、受付の女性がセレストの姿を見て何かに気付いたように近寄ってくる。


「失礼しました。セレスト様ですね。イグニ様から話は聞いております。こちらへ。」


「良かった...お願いします。」


階段の方へ案内されたので、男の横を駆け足で通り過ぎ受付の人についていく。背後から鋭い視線を感じたが、平然を装い階段を一気に駆け上がった。セレストが2階に登り見えなくなった時に男は周りの冒険者達に尋ねる。


「おい、今イグニって言ってたよな?何もんだよあいつ...」




階段を登ると部屋が並び、簡易的な宿になっている。セレストは一番奥の部屋へ案内された。


「こちらがセレスト様のお部屋になります。」


「ありがとうございます。」


部屋へ入り、荷物をベットの横に置き、ベットに飛び込んだ。最近はお城の高級そうなベットを使ってばかりだったけど、やっぱりこっちの方が落ち着くな。


「怖かった...でも、またあそこ通らないといけないね。」


「危害を加えてきたら、私が数十倍で返してやる。」


「それはいいよ。エデンが悪くなっちゃうから。とりあえず行ってみよう。」


階段を降りて大部屋へ戻る。すると先程の男がセレストへ近寄ってきた。警戒して少し距離を取ったが、関係なしに男は口を開く。何を言われてもいいよう構えていると予想外のことを言って来た。


「あー、さっきは悪かった...普通の子供かと思ってよ。ここにいるのは大抵いい奴だが、たまに悪意の塊みてぇな奴も来る。気をつけるこったな。」


男は申し訳なさそうに頭を掻いている。優しさで言ってくれた言葉だったと分かり、セレストは安堵した。


「忠告ありがとうございます!僕にはエデンも付いてるから大丈夫です!」


男はセレストの後ろにいる小さなエデンを見た。ここに入った時にも見えていたはずだから、あまり驚いてはいないが、不思議そうな顔はしている。


「やっぱ霊獣契約もしてんのかよ...すげえな最近の子供。なあ、答えなくてもいいが聞いていいか?」


「何ですか?」


男はためらいつつも、さながらその質問が禁忌に触れているかのような重苦しい態度で問いかけた。


「冒険者ランクは何だ?」


何か大切な話をされるのかと思い気を張っていたが、さっぱり分からない話で逆に落ち着いた。冒険者ランクという言葉を聞いたことはない。そのことを素直に伝えると、男はありえないと言いたげな顔でこちらを見ていた。


「は?知らねえってことは、お前冒険者じゃねえの?」


「全然違いますけど...」


「何だよ...。でも霊獣契約してるってことは多少は腕が立つんだろ。じゃあよ!なってみねえか冒険者。」


男からしたら、霊獣契約している子供。なんて只者ではない雰囲気が漂っていたのだろう。しかしその提案はとても良いものだと思った。冒険者業ならば力をつけながら、お金を稼げる。さらに、もしかしたら母さんのことを知っている人と出会えるかもしれない。自分のペースで事を進められるから修行と両立できるしいい事ずくめだ。


「今すぐ始めたいんですけど、出来ますか?」


「お、ずいぶん乗り気だな!受付のねーちゃんに話してきな。手続きしてくれるはずだ。」


早速、受付へ行き冒険者の手続きをしてもらい、簡単に冒険者になることができた。


「冒険者ランクは一番下のアイアンクラスからになります。セレストは今日が初めてなので、今から一つ依頼をこなしていただきます。」


受付窓口の隣にあるクエストボードから自分のクラス帯の依頼書を選んで、達成したら報酬がもらえるらしい。クラスを上げるには依頼をこなしまくるしかない。そして記念すべき最初の依頼は薬草採取だ。町から少し離れた湖のほとりに自生しているらしい。それを刈って、依頼者に届けてサインを貰う。それで依頼完了だ、


「分かりました!行ってきます!」


意気揚々と湖へと向かったが、特に何もなく薬草を集め、その後も魔獣に襲われることもなく町まで帰った。納品先が指定されていて、"星竜騎士団"詰所と書かれている。依頼書の裏に書かれた地図を見ながら入り口前まで来てみたが、立派な建物なせいか少し近寄りがたい。まあ、そんなことも言ってられないのでとりあえず中へ入った。


「依頼の品を届けにきたんですけど...」


詰所の中では、騎士の人達が慌ただしく動き回り職務をこなしている。依頼書には詰所としか書かれておらず誰に渡せばいいか、それらしい場所を探していると。


「おや、セレスト君か。」


聞き覚えのある声が聞こえ周囲を見渡すと、屈強な男がセレストを見て手を挙げていた。薬草を入れた袋片手に男の前まで駆け寄った、


「あなたは!イグニさんと一緒にいた人...ですよね?」


「そうだ、私はフェーゴ。ここにいる騎竜隊の副隊長を任されている。依頼の品は私が受け取ろうか。」


フェーゴは薬草袋を受け取った。薬草の本数を数え他の団員へと袋を渡す。


「では、サインを書くので依頼書を出してくれると助かるのだが。」


「え?あ、はい。これです、」


まだ何も言っていないのにサクサクと話が進む。フェーゴはサインを書き終え、セレストへ返した。


「おめでとう。これで正式に冒険者として活動できるぞ。」


「何でそのこと知ってるんですか?」


「大した理由はないが、君に教えないといけないこともある、先にギルドへそれを提出してその後話そうか。」


フェーゴの意見に同意して、別れを告げて詰所を立ち去った。そして、なるべく急いでギルドへ向かい依頼書を提出した。


「これで依頼完了です。報酬はあちらの窓口で受け取れます。それでは、これからの冒険者活動に聖なる加護があらんことを。」


「ありがとうございます!」


初めての依頼の報酬を受け取った。ポーションと銅貨20枚、やはり自分でお金を稼げた時の喜びは言葉では表せない。


「やったな!これでお前も俺たちの仲間入りだ。困ったことがあったら何でも聞けよ。俺様が手伝ってやらんこともないぞ!」


お前に何ができるんだよ!とか、そこまで強くねぇだろ!と周りから笑い声混じりのやじが飛んできた。男も笑いながら言い返している。セレストはなんだかんだ皆んな良い人そうだと感じた。


「それじゃあ、何かあったら頼らせてもらいます!」


陽気な冒険者達に見送られながら、ギルドの建物から出た。これで、今日はひと段落ついた。


「それじゃあ、フェーゴさんのところに行こうかな。」


「それなら手間が省けたな。私はもうここにいる。」


中で話をしていた時間で、すでに入り口のそばにフェーゴが仁王立ちしていた。身長が高く、道ゆく人からの視線があらゆる方向から浴びせられていたが、それでも臆することなく立っていた。


「あ!来てくれたんですね。」


「誘った手前、場所を言っていなかったので急いで来たが、もう用事は済んだのか?」


「ちょうど終わったところなので大丈夫です!」


「そうか。なら町を歩きながらでも話そう。」


町の建物の説明や事件の詳細などについて教えてもらいつつ町を歩いた。そして話は本題に入る。


「セレスト君に受けてもらった依頼は我々星竜騎士団が、新米冒険者が冒険者業を円滑に進められるように作った依頼だ。なので、すぐに事情が理解できた。」


あの依頼は騎士団が作ったものだったらしい。貰ったポーションは依頼品の薬草から作り、数日の宿泊費と食費を補える量の銅貨を報酬として提供しているそうだ。


「そして、これは伝え損ねていた私が悪いのだが、"隊長"の髪飾りの件について。」


「隊長ってやっぱりイグニさんのことですよね...」


フェーゴは当たり前の事を言われセレストの言葉を上手く捉えられていなかった。おそらくアルカナから伝えられていると思っていたのだろう。フェーゴが副隊長と聞いた時に副隊長は従えていたイグニの立ち位置はどこだろうと考えていたが、商人を捕まえた時にも言ってたし、やっぱり隊長だった。


「その件についてはイグニさんに教えてもらいました。本当にすみませんでした!」


「すでに聞いていたのか、それであれば問題ない。あの人達も悪気はないと思うのだが。」


「あの人たちのこと知ってるんですか?」


「なんてことはない。この町の住民達だ。というのも、隊長は口調は強いが、困った人にはすぐに手を差し伸べてしまう性格でな。あの人達はそんな隊長の人柄に魅せられて慕ってくれている。」


イグニの周りに集まって来た人達が放った言葉を思い出す。

犯人を追おうと焦っていて正確には思い出せないが、確かに温かい言葉が多く、好奇の目で見られているわけではないことはわかった。


「なるほど...かっこいい人ですね。」


「だろう。そう、隊長はかっこいい。そして可愛いのだ!」


ん?話があらぬ方向へ飛んでいきそう...


「君もなかなかみる目がある。口調のせいで台無しという無粋な輩もいるが、私としては、意外性があってそれもまた...」


楽しそうに語っているフェーゴの頭に拳が叩きつけられた。

フェーゴはその場に倒れてしまった。呼びかけてみるが返事がない。しかしなぜこうなったかはすぐに分かった。すぐにフェーゴの背後からイグニが出てきたからである。


「あー...明日も訓練はあるから早めに休めよ。」


イグニはフェーゴの腕を肩に乗せ、引きずって運ぼうとしていた。さっきの話を思い出しイグニを見てみると確かにフェーゴの言っていることはわからなくもない。イグニは口調がかなり強い。だが、それさえ除けばどこかのお姫様と言われても違和感を感じないほど可憐な雰囲気を醸し出している。


「おい...今何考えてた?」


「...ギルドへ帰ろうかなと考えてました。」


「そうかそうか。じゃあ俺はもう行くわ。こいつも倒れるまで仕事してたんだな。"労って"やらねえと...」


明らかに殺意を感じるが気のせいだろう。セレストは我関せずといった態度でそそくさとギルドの建物へ逃げ帰った。ささっと部屋まで戻り、荷物を置いてベットへ飛び込む。特にすることもなく、明日の訓練に支障が出ないようセレストは眠りについた。


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