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御影君の苦手なもの2

「か・・彼氏!?」



 叔母の恋愛事情など、小学生にはちょっと耳に毒なのではないだろうか。懸念の通り、翔馬は目に見えて動揺していた。



「う、嘘だろ奈緒子っ! 彼氏なんかいたためしねーじゃねぇか!」



 ドスっ。子供って正直で時に残酷。



「い、いや・・おばちゃんにもたまには、彼氏いるときくらいあるよ〜?」


「と、とにかく早く帰るぞ! 家でママも待ってるしっ・・」



 翔馬が私の手をグイッと引っ張ったその時、隣でクスッと笑う声が聞こえた。それは笑う口元を手で隠した、御影君の・・



「ママ、ね・・」



 私と翔馬はそのとき、同じ事を思ったに違いない。



 か・・感じ悪っ・・







 ────で。


「なんでお前まで着いてくんだよ!」


「いつも送って帰ってるから。大事な彼女が危ない目にでもあったら大変でしょ」


「今日は俺がついてるから大丈夫だっつの!」



 すると御影君はまたクスッと笑った。あのいかにも馬鹿にしたような高圧的な笑みで・・



「小学生が・・? まぁ確かに、話す能があるだけ番犬よりは有能かな」



 翔馬が顔を真っ赤にさせて憤慨したのは言うまでもない。


「うるせーわ、この嫌味ったらしい性格ねじ曲がり男! いいからさっさと帰れよ!」


「なんで? 俺がどうしようと俺の勝手でしょ。子供だからって駄々こねれば大人がみんな言う事聞いてくれると思わない方がいいよ。来年から中学生でしょ? そろそろ可愛いで許して貰える年じゃなくなってくるしね。どうしても俺に帰って欲しいなら、癇癪起こすんじゃなくてせめてお願いしなきゃ」



 お・・大人気ない。そういえば御影君、子供は嫌いだと言っていたけど、これはさすがに酷いのでは?



「御影君・・子供相手にそんなに意地悪言わなくても、いいんじゃないかな〜?」


 引き攣った笑顔でそう御影君を諭した。だけど彼は・・



「俺もまだ子供なんで」



 プイッとそっぽを向かれてしまった。


 な、なんで今日はそんな・・というか都合のいいときだけ子供って、ズルいでしょそれは。でも突然のその拗ねっぷり、なんっか可愛いんだよな〜!


 

 早くこの困った状況を解消したい。そこまででも家まで10分の距離がものすごく長く感じていたのに、しかし空気は更に悪化する。翔馬は私の服の袖をクイッと引っ張った。



「おい奈緒子っ。明日休みだよな? 遊びに行くぞ、遊園地!」


「え? い、いやその・・」



 口ごもった私のもう一方の手を、今度はガシッと御影君が掴んだのに気がついて、私はそちらを振り向いた。するとそこには、ムスッと不機嫌な表情でじっと私を睨む、彼の視線が待ち受けていた訳で。



 こ、これは・・


 「お前は俺と約束してるだろ」の意。だよなぁ、多分・・。



「ご、ごめんね翔馬。おばちゃん明日は、御影お兄ちゃんとお出かけする約束があって・・ね?」


「え────」



 翔馬は怒ったような顔で、それきり黙り込んでしまった。楽しみにしていたのに。そう言わんばかりのその表情を見ているとなんだかやるせなくなってきて、どうにかしてやれないものかと、私は反対隣の御影君の方へチラリと視線を移したのだけれど。


 そこにあったのは、相変わらず冷たい目で翔馬を見る、彼の視線・・



(だ・・だめだこりゃ)




 年下彼氏と我が子同然の甥っ子、二人の間で板挟み。ああ、一体どうしてこんな事に・・





 しかし更に更に、事態は悪化する。それはやっとの思いで家に辿り着いたときだった。翔馬がこんな爆弾を投げ込んだのは。



「じゃーな性格最悪男。俺達はこれから家族で楽しく過ごすからよ」


「じゃ、じゃあね、御影君」


「今日も一緒に寝よーなー、奈緒子」



 仕返しとばかりに放たれたその翔馬の一言が────彼の逆鱗に触れた。



 パシッと捕らえられた私の手首。驚いて顔を上げた先には、以前一度だけ見た事のある、本気で怒ったときの御影君の顔・・




「ちょっと話があります」





(続く)



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