『不変の愛』の証明理論5
怒っちゃったよ。しかもちょっと偉そうに無茶苦茶なこと言ってるよ・・!
突然ワガママ言って年下感出さないでよぉぉ! 言う事聞いてあげたくなっちゃうでしょぉぉぉ!?
「くっ・・だ、だめったら、だめなんだってば・・」
「成人したら何も問題はないでしょう」
「いや、だから・・年の差がありすぎて、周りの目が・・」
「奈緒子さん童顔ですし俺は老けてるんで思ってるほど違和感ないですよ。そもそもそんなにみんな俺達のことなんか見てませんし」
「話も合わないだろうし・・」
「大丈夫です、俺友達とも全然話合わないんで。そればかりか腹の中では、心から信頼してる友達なんか一人しかいないですし」
「親に紹介なんか出来ないでしょ!?」
「今はちょっと気まずくても、大学を卒業するまでの話ですから。その後は所得の高い職に就く予定なので投資だと思って下さい。俺、頭も外面もいいので」
「そこまで続かないよ!」
私は大声で怒鳴った。
彼と────自分に言い聞かせる為に。
「御影君が大学を卒業する頃、私は32歳だよ。完全にオバさんだよ。例えそこを乗り越えたとしても、御影君が30歳になったら私は40歳。もう女として終わってるの。年上のお姉さんが聞こえがいいのなんて、今だけなんだよ・・」
怖いの。
いつか捨てられるのが分かっていながら・・これ以上貴方を好きになるのが。いつ終わりがくるのかと怯えながら過ごすことが。もう分かってよ────。
逃してほしいのに。そんなに必死になられると、気持ちに迷いが出来てしまう。先の幸せ全部捨てても、今この一瞬の輝きに全てを捧げてしまいたくなる。いつか後悔する日が必ず訪れるのだと、分かっていても。
「俺はそういう肉欲みたいなものだけで奈緒子さんを好きな訳じゃありません」
「分かるよ御影君の気持ちは。私だって恋するたびに、運命だって本気でそう思ってた。だけど違うんだよ。大人になってから思い返すと、やっぱり今と全然、重みなんて違うの」
「分かったように言わないで下さい。俺と奈緒子さんは違います。俺は一生、奈緒子さんを好きでいると思います」
一生────・・
始まりは多くの恋人達はそれを信じている。でもそんなものは奇跡のような希少なもの。
貴方はまだ子供だから、その現実を知らないだけ。
「堂々めぐりだよ、もうやめよう。口では何とでも言えるもん。一生好きでいるなんて、証明なんか出来ないでしょ・・」
「・・『不変の愛』の証明、ですか・・・・」
彼がそう呟いた後、しばしの沈黙が訪れる。しかし次に彼が口にした言葉は、私にとって意外すぎるものだった。
「奈緒子さんは円の面積が何故、πr2になるのか知っていますか?」
・・え?
(続く)




