『不変の愛』の証明理論3
正直・・鳥肌が立った。
「い、いやでも・・せっかく皆で集まったんだし・・」
「いいじゃん。俺、佐藤みたいな優しそうな子、好きなんだよな」
「い、いや・・」
"奈緒子さんがそうやっていつも、はっきりと断れない人間だから"
また御影君の言葉が脳裏に蘇った。
そうだね。ダメだよね、大人なのにこんなんじゃ・・
私は肩に置かれた栗原君の手を払い、その場に立ち上がった。彼に辛辣な視線を落として。
「心配してくれてありがとね。でもお店の経営は順調なんだ。今の税理士さんもちゃんとしてる人で、私は信頼してるから。私他の皆とも話したいから、これで失礼するね」
呆然として黙り込んだマウント男を置き去りにして、私はトイレへと逃げ込んだ。
い、言った・・。私にしてはかなり感じ悪く、言ってやった!
(私だって言おうと思えばちゃんと言えるんだからね、御影君・・)
押されれば誰にでもついていくとか、そういうわけじゃないんだからね・・。
トイレから出て戻ろうとすると、私の方へ慌てた様子で声をかけてきた人物がいる。
「いたいた! 佐藤・・!」
飯塚君だ。彼は私を見つけるなり駆け寄り、怖い顔でガシッと私の両肩を掴んだ。
「お前そろそろ帰った方がいい!」
・・ん?
「は? いきなり何? てゆうかタバコくさっ! 外でタバコ吸ってたね?」
「いいからお前、もう十分飲んだだろ? 店のこともあるし飲み過ぎは良くないな! さぁもう帰った帰った!」
────は?
店休みにして来いって言ったり帰れって言ったり、なんなの飯塚君。いい加減自分勝手すぎるよ??
「いきなり帰れってお会計もまだ・・」
「お前にはいつも世話になってるし、俺が払うから! 店休みにさせちゃって悪かったしな!」
「だからせっかく休みにしたならもうちょっと」
「いいから! また今度、お前の休みの日に仲良い奴だけで飲もう! 俺セッティングするから、な?」
飯塚君はグイグイと私を押して、強引にエレベーターへと押し込んだ。ご丁寧に1階のボタンまで押して扉を閉められ、私は強制的に店から出されてしまった。
なんだろう・・もしかしてさっきので栗原君が怒ってて、戻ると修羅場になりそうだからとか・・?
「でもそれならもう少し説明してよね。本当にいつも強引なんだから。大体、飯塚君のお節介のせいで御影君とも喧嘩になって・・」
ぶつぶつと一人愚痴をこぼしながら、居酒屋の入った商業ビルの出口を出た私。
だけどそこで────私は信じられないものに遭遇する。
ビルの出口のすぐ脇に座り込んだ・・御影君に。
目が合った。
すると彼は、その場から立ち上がり、私の方へと向き直った。
心臓が・・異常なくらいに音を鳴らし始める。
そうか────だから飯塚君は・・
(本当にあのお節介!)
「・・近くを通ったらたまたま、飯塚さんがいて・・」
彼はそう切り出してすぐ、私から目を逸らした。
「・・・・なんて、嘘ですけど。本当は邪魔してやろうと思って来ました」
────やめて。せっかく貴方を諦めようとしてるのに、こんなの・・
「幸せにしてやれる能力もないのにこんな事を言うのは間違いだと、分かってはいるんですが・・でも嫌なんです。奈緒子さんを他の男に取られるのは、どうしても我慢ならないんです」
言わないでよ。
また・・辛くなるから。
「奈緒子さんが好きです。
俺と────付き合って下さい」
(続く)




