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どういうつもりで3

 い、一緒・・一緒に・・風呂・・!?



 言葉の衝撃が凄すぎて、頭がパニックになっていた。だけど御影君は目を白黒させていた私を見て、ぷっと吹き出した。



「足洗うだけなら一緒でもいいかな、なんて思いましたけど。でも俺は二階の風呂使いますね。どうぞごゆっくり」


 

(二階にあるんかい!!)


 それなら最初からそうと・・唖然とする私になにやらクスリと笑みを浮かべて、彼は脱衣所の扉を閉めた。やっと嵐が去った、と思った瞬間、再び扉が開いた。



「そういえば洗濯機はここだけだった」



 彼はそう言って、ビショビショに濡れた服を脱いだ。私の目の前で。露わになった御影君の上半身。そして彼は、下のチノパンのボタンに、手をかけて────・・



「あ────さすがにこれは、奈緒子さんの前で脱ぐのは、はしたないですよね」



 そして彼は、真っ赤になって硬直する私を置き去りに、脱衣所を出て行った。最後に少し意地悪そうな笑みを私に向けて。



「・・・・」




 お・・おちょくられてる。


 今のはぜーったいに、揶揄われている・・!


  

(なんって生意気なの、あの子は〜!!)







◆◇◆◇◆◇◆



 言われた通りに足を洗い、御影君に渡された服に着替え、ドライヤーを拝借した。下着はちょっと湿ってたけど、ドライヤーを少し当てれば乾いたので、ほんとによかった。さすがに下着は借りれないもんね。



 渡された服は多分、御影君のものと思われるTシャツとスウェット。当然だが、ぶかぶかで半袖が七部袖みたいになっている。スウェットの裾は引きずるので折り返してなんとか履いた。御影君の部屋だと指示された部屋のドアをノックしてから開けると、最初に飛び込んで来たのは、正面の壁一面の本棚。その前に机とベッド。円形のカーペットにカラフルなビーズクッションと、テーブルを兼ねている皮のスツール。広くてすっごいお洒落だ。同じく着替えを済ませてクッションに座っていた御影君と目が合うと、彼は何故だか、姿勢を正座に正し、そのまま土下座をした。



「ありがとうございます」


「何が!?」


「いえ、こっちの話で・・あ。あっち向いてホイで俺に勝てたら、教えてあげますよ」


「どゆこと!?」


「はい。あっち向いて────」


「えっ? えっ?」


「ホイ」



 訳もわからず、ホイの声につられて左へ顔を向けると、彼の指の差した方向とがっつり一致する。


「あっち向いて────」


 え? また??


「ホイ」



 今度は咄嗟に上を向くと、またそれは御影君の指の方向と、美しく一致した。するとそれを見た御影君は、私から目を逸らし、口元を隠す様に手を当てて────。




「弱っ」




 わ・・笑われている。御影君がめちゃくちゃ、肩を震わせて笑いを堪えている・・。大人の威厳が、もうゼロどころかマイナスに・・。



「そ、そんなに笑わないでよ・・」



 恥ずかしさに真っ赤になりつつ、私を揶揄ってばかりいる御影君に恨みがましい睨みを向けた。すると彼はまだ口元を隠しながら、その場にすっと立ち上がった。



「すみません。濡れた服、乾燥機にかけるのでもらいますね。一時間もあれば乾きますから。何か飲み物持って来ます。コーヒーでいいですか?」


「あ、うん。ごめん、ありがと・・」



 パタン、という音と共に、彼はドアの向こうに消えていった。その向こうで、彼がこんな事を呟いていたなんて・・





「やば。可愛いすぎか、あの人・・」






(続く)

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