裏のポーション売り屋
「魔法薬!ポーション!売ってます~!」
輝く七色の液体に満ちているガラスの小瓶を街中に通りすがる人々に見せる。道端に座って、自分の商品をアピールする、決して怪しくない女性だ。
みすぼらしい服を身に着け、頭には小さ過ぎるベレー帽を被っている、私である。
「北方の人々みたいに青い目は欲しくありませんか?このポーションを飲めば手に入りますよ?鶏みたいに卵を産みたくありませんか?この魔法薬を飲めば人間でもできるようになります!」
今日は遅い日だ、まだ一本も売っていない。
ぐぅぅ〜 と私のお腹は鳴る。人々があちこちもをパタパタと移動している街の大通りの騒ぎのバックグラウンドでもはっきり聞こえた。
今日は食べないと…でもお金が…
なので私は周りをみて、客になりそうな人を探す。
「そこの少し可愛いあなた、こっちに来てもらえませんか?」
「わ、わたし?」
その結果、通りすがりの自信の低そうな女性に小声で呼びかけた。
「最近は自分の外見に関して悩んでいませんか?」
「えっ、そんな事は…」
「分かりますよ?当ててみましょうか?えっと…」
まず、彼女のボディーランゲージを観察する。私の言葉を聞いて彼女はまず、両腕を前にし、上半身を隠した。
「服…?」
いや違うか。少し可愛いし、この子はスタイルをそれほど気にしないはず。なら…
「胸…」
「胸?」
うわー、私より大きいね。そこが悩みだったら普通にこの場で殺す。
残っているのは…
「体重ね」
断言する私。
「!!」
そしてビクッ!と固まる女性。分かりやすい、この子を選んで正解だった。別に太っているようには見えないが、彼女自身がそうと思っているのならそれでいい。チャンスを利用させて貰う。
「わかりますよ、本当にわかります。体重が増えた事で周りの人があなたから目を逸らしたり、影で太った~と噂しているのでしょうね」
「そっ、そんな事…ないと…」
「本当に思う?あなたも、友達が少し太った時にヒソヒソとその人の話したことがありませんとでも言えます?」
「わっ、私はそんな事、した事がっ」
「ないでしょうね。でもされたことがあるでしょう?友達に」
「…」
ここで女性は少し黙り込む。思い浮かぶ記憶があったのだろう。よっし、もう一押しだ。
私は声を潜めて、女性にもう一歩近づかせる。
「ここだけの話ですが、まだ遅くありません」
「?…どういうこと?」
「私、結構細いでしょう?」
女性は目を上下させて、確認する。
「うーん…そう?」
「…」
なにが「そう?」普通に細い体の手本だろう!と私は眉をピンピンさせながら怒りを抑える。とりあえず話を続けよう。
「そんな細い私なりの秘密ですが、実は私に、自作の、体重を少しずつ減らすポーションはあります」
「!?」
そうです、そうです、もっと食いついて。
「バレたくないから普通は売らないようにはしていますが、あなたになら特別に、少し譲ってもいいです。困っているようですし…」
「お願い!幾ら!?」
女性は小声で、即座に値段を聞いて、速やかに私たちの間に取引が成立されました。
「因みに副作用効果は頭痛、眠気、発疹、下痢、等々」
「え、なにか言った?」
「買い上げありがとうございますしたって言いました」
私は微笑みながら金を受け取って、お客さんとなってくれた女性にバイバイと手を振る。
「こんにちは、カミラ先輩」
そして彼女と入れ替わりに、ある女が人込みから現れた。挨拶をして、怒りの味のある笑みを私に掛ける。彼女この街の医者部の青いコートを着て、片手には救急箱らしき物を担いでいる。
名前を呼ばれた時点でもわかっていたけど、私はこの子を知っている。
「私は医者と商売しない主義ですから帰ってもらいますか?」
「あら、そうなの?じゃあ医学学院での可愛い後輩エレナちゃんとして商売してくれない?」
医者の資格を持っていないとポーションの販売は禁止されている。
「私は退学となったので私はあなたの先輩としてカウントしないはずです」
そして私も彼女みたいな青いコートを着ていない時点でもわかるが、私は魔医者の資格は得られなかった。
なので私は鞄を取り出して、自分の商品であるポーションを収め始める。
「もう行くの?スタンドを開けたばっかりじゃない?」
最初から見てたのか、性悪。ちぇ。
「豚が現れたので、閉まっておこうと思いました」
「そう?残念ね、私はあの女性と同じものが欲しかったのに…ね、なんだった?体重を少しずつ減らすポーションなんて凄い発明ね」
エレナの声は皮肉の音色でベタベタだ。
「バカしにきただけですか?」
そういうポーションはないと、この人は誰よりも分かっているはず。
「私が作った弱いアンチ重力のポーションですよ」
体重計を踏むと、痩せた!とも思うし、間違いなく少しだけ体重が一時的に少なくなっている。
「はぁぁ…カミラ先輩はやっぱり相変わらず藪医者わね」
「仕方ないでしょう。私、あなたが通っていた偉大なる医学学院から追い出されましたし。免許がない以上、私は合法な薬なんて売れません。藪医者でしかやって行く方法はありません」
「ちゃんとわかっているのなら私が先輩を叱るまでもないでしょう?」
はいはいギルティですよ。相変わらず警察も呼ぶつもりだから、さっさとここから離れないと。
「…」
私は彼女の魔医者である証の青いコートを羨ましく見つめる。
私もそのコートさえあれば…
「着てみたい?」
「結構です」
ドヤ顔するエレナに頬を膨らむ私。
「では私はこれで失礼しますね」
「もう?警察はまだ呼んでいないよ?」
「まだと言うことはやっぱり呼ぶつもりでしたか」
言ったでしょう?
「勿論よ、いくらカミラ先輩が可哀想だって、不法な行為は不法わよ?」
「同情しなくてもは結構です」
寧ろその方が気持ち悪くなる。私は役立たず、失敗作、無能、はいはいわかってます。わかってるからほっといてくれ。毎回はっきりにさせなくてもわかる。
とりあえず警備が呼ばれる前に、ここから離れよう。今なら日に明るさが残っている。街の反対側に行って、また店を開ける時間だって十分にある。そこまでは付いていくと思わないし。
「カミラちゃん待って!いつかは!やり直す気はないの!?」
だけど離れて行く私の背中になぜかエレナは声を掛け続ける。
「また学院に…いや別の学院でもいいから!また合法でやってみてくれない?カミラ先輩をこれ以上このままでほっとおくわけには…」
「はいはい考えておきます」
「それ、本当?」
「はぁぁ…」
するわけありますか。医学の世界の中で私はもうやらかしてしまった。あの業界で私のいい場所は闇の中にしかない。
私は狭い路地裏に入って、できるだけ人目の少ない道を通る。
このサイトを使うのは初めてなので、これでいいのかが分かりませんが…助言やお勧めのアクションとか会ったらありがたいです。よろしくお願いします。