秘密
「久しぶりに楽しかったわね、デート」
「はい、すごく楽しかったです。また」
「また来ようね」
「っ、はい!」
重なる声にドキドキと胸が高鳴る。
私が燈さんに会いたいと想うように、燈さんもまた私に会いたいと想ってくれている事が嬉しい。
「今日はありがとうございました、人生の中で1番楽しかったです」
「大袈裟よ。ふふ、でも私も人生で1番楽しかった...かもね」
この人は天使のような顔をして私を誑かす。
近くにいれば、深みにハマってしまう。
燈さんのお客さんはみんなこの人の事を本当に愛してしまう魅力がある。
「じゃあ、また」
「えぇ、またね」
改札へ向かって歩き出す背中を、私はその場に立ったまま見送った。
彼女が角を曲がって見えなくなるまで、ずっと、ずっと。
やがて迎えの車が来て、私は静かにそれに乗った。
家に戻り、自分の部屋のドアを閉めた瞬間、こみ上げるように思い出が溢れ出した。
(今日は最高の日よ!燈さんと一緒に...ふふっ)
顔が火照っている。心がまだ浮かんでる。
このままじゃ眠れない、でも眠らなきゃ。
だって明日は高校の《《入学式》》があるのだから。
燈さんには18歳と嘘を言っているけど、私は16歳でお店に入る事が禁止されている年。
お店に入る資格すらない年齢。
でも、もし本当のことを言ったら、彼女は怒る。
きっと「来ちゃダメ」って言って、私にお金を使わせてもくれなくなる。
……それは、イヤ。絶対に。
彼女に嘘をついてる私が悪い、燈さんは悪くない。でももしバレたら....
いえ、考えるのをやめよう。
明日は早いのだから。
「おやすみなさい、燈さん」
「今日は凄く楽しかったわね...久しぶりに羽を伸ばせたわ」
ベットに横になり、今日の楽しかった記憶を思い返す。
同僚の女の子たちと遊ぶことはある。
でも、あの子たちと行く遊びとは違う。
今日の時間には、もっと素の自分が出せていた気がする。
でもよかった、莉子が18歳で。
初めて出会ったあのときは、まだあどけなくて。
正直、中学生かと思ったくらい。
でも今では――
(色気って言うのかしら?子どもじゃ出せない何かを、あの子は持ってる)
ほんと2年で成長しすぎよね...2年前ってことはあの時高1ね。今は高3って所かしら。
私に貢いでるけど、就活とか大丈夫なのか心配になってくる。
でも、私たちはキャバ嬢と客でしかない。深くは考えない。
(キスもしちゃったけど……18歳でほんとよかった)
それ以下だったら犯罪になってたかもしれないし。
お店だって入れない。
――ほんと、タイミングは運命かもね。
あと2年したら20歳で一緒にお酒飲めるわね。
それまで莉子が私の側に居てくれるかわからない。でも、もし側に居てくれたなら一緒に乾杯したい。
お酒を飲んで色々な話をしたい。
恋愛でも仕事でもなんでも良い、彼女のことがもっと知りたい。
「明日も頑張らないとね。おやすみ莉子」
−読んでくれている皆様へ−
前回の話から結構な期間が空いたにも関わらず読んでくださる方がいることが嬉しいです。
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