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再び

派手やかな街を歩き、昨日と同じ場所に向かう。


昨日と同じ服なんて絶対に無理だった。

だから、手持ちの中でいちばん“勝負っぽい”服を選んだ。

気合いの入ったメイク、ほんのり香水もつけて――。


(絶対、後悔させてやる)


高鳴る鼓動を誤魔化すように、莉子は自動ドアを押し開けた。


「いらっしゃいませー!」


音楽、照明、シャンパンの匂い。

全部、昨日と同じはずなのに――心の中は違った。


(来てやったわよ)


ボーイに案内されるまま席に着く。

客足の多い時間帯、まだ担当が来ない。

ざわついた空間の中で、莉子は思わず目で探していた。


――いた。


端のテーブル、昨日と同じソファ席に、燈さんの姿。

今日はグラス片手に笑っている。昨日の事なんて忘れているかのように。


「……っ」


気づかれた。


遠目に視線が合った。

一瞬、目を見開いたあと――燈さんはふっと笑って、席からすぐに立ち上がった。


まっすぐ、私のところへ。


「今日も来てくれたのね。嬉しい、でも何で昨日は帰っちゃったの?待ってたのに」


燈さんのその一言に苛立ちが募る。

何で帰ったのかも察してはくれないの?本当は気づいてやってるんならタチが悪い。


「...赤姫さんが悪いんじゃない。私のこと放ってばっかりで、それでNo.1取れたんでしょ。おめでとうございます」


嫌味を充分に含めて笑いかける。


燈さんは若干気まずそうに視線を逸らし、申し訳なさそうに眉を下げる。

そんな表情を見ると――子供っぽい自分に気づいて、莉子の胸が少しだけチクッとする。


「それは...あのね、莉子に話すことがあるの」


「もういいですから、早く席に座りたいです」


「え、えぇそうよね。ごめんなさいね、今案内するわ。ボーイさんお願いします」


控えていたボーイがやって来て、莉子を昨日と同じ席へと案内する。

その間にも言葉は止まらなかった。


「ボーイさん、1番高いシャンパンを――3本、お願いします」


「何してるの、そんなお金」


「お金ならあります、赤姫さんはキャバ嬢ですよね?貢いでもらう立場なんですから喜んでください。その為に私はいるんですから」


棘のある言い方かもしれない、でも事実だし何より喜んで欲しかった。

あの男には笑顔を向けていたのに何で私の時は喜んでくれないの。


「支払いはカードで」


莉子はバックからブラックカードを取り出して、ボーイに渡す。


「っ!了解しました」


ボーイが小走りでバックヤードに消えていく。

一瞬その背中を見送り、再び莉子に視線を戻す。


「まずは....素直にありがとうよね。嬉しいわ...お金の事は口出さないようにするけどシャンパン飲めなでしょ?」


「えぇ、まぁ...でも飲めなくても頼む事に意味あるんで、赤姫さん飲んでください。それかボーイさん達でもいいですし」


「そうね...売り上げに入るしお酒だし残したとしてもバチは当たらないわよね」


「バチなんて気にしてるんですか?かわいい。当たらないですよ、当たるとしたら私ですから」


「っありがとう」



少しだけ動揺する燈さんの様子に、ちょっとだけ気持ちが良くなる。



「赤姫さん私の服装、どうですか?」



莉子は、グラスに添えた指先に力を込める。

他愛ない質問のはずなのに、返ってくる言葉ひとつで、自分の機嫌が天と地ほども変わってしまいそうで――怖い。


昨日は昨日とは違いちょっとアレンジを加えて燈さんが着てそうな好みにも近づけてきた。


燈さんは一拍おいて私の全身をしっかりと見つめる。


「……綺麗。すごく、似合ってるわ」


その声は、どこか柔らかくて、私の胸を刺激してくる。

くすぐったい嬉しさを表情に出さないように隠す。


「昨日と違うのちゃんと気づいたわよ。ずっと莉子の事見てたんだから、当たり前でしょ?」


表情を隠そうとしてたけど無意味だと理解する。

だって、頬が熱いから。


だから顔はそむけたまま、あくまで冷静を装う。


「ふーん……でもプロの方なら気づきますよね。普通の対応です」


「ふふっ。じゃあ、私に莉子が求める“普通”ができててよかったわ」


そうやって軽く返す燈さんの余裕が、少しだけ羨ましい。


(私だけ翻弄されてる……ほんとずるいよ)


































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