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No.2だけど

私の人生は2位でしかなかった。

絶対に1位にはなれない。それが私、遠坂燈トオサカ アカリ原指名は赤姫あかひめ

なぜなのか私がどれだけ努力を重ねようが必ず2位になる。


だから私は勉強や運動を諦めた。

だって努力と才能が結局関わってくるじゃない。

勉強は要領が良くないとダメだし、運動は運動神経が良くないとダメだし。

でもこの職業は違う。


笑顔で明るく接客していれば客はつく。

適当にすごい、かっこいいと褒めれば高いお酒を入れてくれる。


ただ、誰でもなれるわけじゃないまず顔が可愛くないとスタート地点にすら立てない。

私は可愛い。愛嬌だって自信がある、私が唯一他より優れているのは他の誰よりも可愛いこと。

でも...それでも1位にはなれない。


「おはようございまーす!今日もよろしくお願いします」

The Tempestというキャバのお店で私は働いてる。

今日も明るく全員に挨拶が届くように声を出す。

「おはよ、今日も可愛いねぇ。今日も頑張ってね!」

「はい、頑張ります!」


男には媚を売れば可愛がってもらえる、女には下手に出て褒めれば気に入ってもらえる。

楽勝だと入って1週間経ったところは思ってた。

半年経った今、その考えは変わらない。でも毎回No.2でしか私は輝けない。



「はぁ、何で私は1位になれないのよ」

「んー、なんでだろうね?顔が可愛くて愛嬌だってあるのにね不思議だなぁ」

のんびりと話す癖がある癖っ毛のこの子はルビー。もちろん原指名、本名を知ってる子は誰1人いない。



もちろん私の本名を教えてる子も誰1人いない。

半年たったのに新しく入った子がNo.1にいるしそれもずっとじゃなくて変わり変わりになってるから今回は誰がNo.1かなんて知らない。

毎回2位は私なんだけどね。



「No.1になりたいな」


今の夢はそれだけこの職業でしか私は輝けないのかもしれない。

周りから可愛がられる楽しいお仕事。

不意に店長が休憩室に訪れると共に名前を呼ばれる。



「赤姫ちゃん若いお客さんの指名だよ、めっちゃかわいいスカウトしといてよ」

「はーい、今行きまーす」

店長がスカウトしてなんて珍しいな。

そんなに可愛い子が何で私なんかを指名するんだろ?興味本位ならNo.1の人を指名すればいいのに。



遠目からでもわかる若い女の子が華やかな席にちょこんと座っていた。


なんとも可愛らしい、庇護欲が湧いてしまう。

初めてのお店かもしれないから相手を安心させるため、他の人に向ける媚びた笑顔ではなくできる限り優しく安心させる笑みを浮かべて接客をしよう。



「はじめまして、赤姫アカリっていいます。今日は指名してくれてありがとうございます、お店自体は初めてですか?」


彼女の隣にそっと座り、近くで良く見ると肌にハリがあり、睫毛も長く、瞳はグレーっぽい色をして配置が完璧でお人形さんみたいに美しい顔立ちをしていた。

これはNo.1になれる顔をしてる。


初めてみた圧倒的な美しさに変に緊張しちゃう。

伏せ目がちだった瞳が私の方へ動き、じった観察するように見つめられる。



「会えた....やっと」

「え?どこかで会ったことありますか?」

こんなに綺麗な子あったから覚えてると思うけど記憶にない。

「いえ、なんでもないです。あの」

彼女はまっすぐな瞳でこちらを見つめ躊躇いがちに問いかける。

「貴方をNo.1にさせるにはいくら必要ですか?」



「え...っとあと数百」

こんな若くて美しい子に予想外な質問をされたことに動揺したが無難にそれっぽい値段を答えとくが。

「1000万あれば足りますか」

「いっせんまん??余裕どころかここらへんのお店で1番売れたキャバ嬢になれちゃうよ」

「そうですか、ならよかったです」



真面目な顔で言う冗談を言う彼女の表情と発言がチグハグで面白いなぁと微笑んでいると


「あの冗談じゃないです」


少し顔をムッとして不貞腐れた表情の彼女は私が本気で受け取ってないと感じたらしい。


(その通りだけどね)


実際見た感じ女子高校生っぽい子が1000万も用意するなんて誰が間に受けるの?

流石にそんな馬鹿じゃないし、私たちは騙す側であって騙される側ではない。


「私は赤姫さんを一位にしたくてこのお店に来たんです...1番高いお酒ください」


「え?ダメだよ...貴方未成年でしょ」


「....違います」


「嘘ついてる顔してるけど?」


流石に否定の言葉が出なかったが納得してる顔ではなかった。

でもどう見たって女子高校生にしか見えない。

にしても、ほんと顔整ってるなぁと羨ましがらずにはいられない。私もこんな顔で生まれてくれば誰からも必要とされる価値のある人間に生きれたのにね。


「なんですか」


「綺麗な顔だなって」


「っっ!!冗談はやめて...ください。赤姫さんの方が綺麗です」


本当の事を言っただけなのに彼女は茹で蛸のように真っ赤に顔が赤く染まり、恥ずかしそうに俯いてしまう。

こんなにウブで大丈夫なのか心配になってくる。

私にはこんな表情できないし、したこともない。


たった今あったばかりなのに、初めて会った気がしないどころか前に会ったことがある?


前にあっていたとしても私たちの関係はキャバ嬢と客でしかない、それは覆らないし意味のない質問をして困らせる意味もないしまぁいいかと考えるのをやめる。


「赤姫さん!富田さんがお呼びです」


「あ、もうこんな時間?ごめんなさい、ちょっと行ってくるね」


「あ...」


そんな寂しそうな顔されたら行きたくなくなる...あぁやばいさっきからこの子の表情に惹かれてる自分がいるのを否定できない。


なんかこう、守りたくなるっていうか側で見守っててあげたいような感情になる。

まさに母親...私の母親は蒸発してあまりいい記憶がないけど、居た頃は私が大好きなオムライスを楽しそうに作っていてくれた。


あれが1番美味しかった、もうあれを超える料理はないと思うと寂しい感情になる。

彼女といると何故か昔のことを思い出す、昔のことなんて今まで思い出したことなんてなかったのに。だからこそ怖い、彼女といると楽しいこと嫌なこと全て思い出してしまいそうで。





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