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「……とりあえず、色々話し合いしないとだよな」


 サクッと5人で自己紹介をした後、丁度空腹になり掛けていた米田は保存食を見て長期保存のカロリーメイトを開ける。


「すげ、カロリーメイトの備蓄とかあんだ」


「あるよ!以外といろんなのあるんだよ。カロリーメイトは軽いけど持ち運びには不便だから食べた方がいいかも!」


「え?そうなの?」


「うん、ブロックタイプのだと走ったりしてる間に粉々になるから自宅での備蓄にはいいけど、移動にはイマイチなんだー」


「……桃園詳しいな」


「……前の彼氏が備蓄好きだったんだ」


「「…………」」


 フッと視線をズラした桃園に全員口を噤んだ。

 なんかあったっぽい、聞かないことにしよう。


「……じゃあ、何がいいか見て選ばないか」


 上司が荷物を開けて中を見ると、桃園はそれを確認した。

 合わせて米田も鞄を出したので、全員荷物チェックを始める。


「……水は必須。米とタンパク質はいるからアルファ米数個と、缶詰の魚とか肉系。……あと、缶詰のパンなら軽いし、調理いらないからこれも。贅沢言っていいなら、甘味が有るといいよ。イライラしちゃうから」


 そう言ってチョコのプロテインバーや、羊羹を見せる。


「とくに、羊羹オススメ。腹持ちいいし甘いしお腹に溜まるし、手が汚れない」


 そう言って鞄に羊羹を入れた桃園を見て全員が迷わず羊羹を入れた。

 鞄の容量と重さを見ながら調節して荷物を入れ、残りを袋に入れる。

 それでもかなりの量で、当分飢える事は無さそうだ。


「……じゃあ、ゾンビの事と今後の事について話そうぜ」


 刈谷は座り込み言うと、全員輪になるように座った。

 足を崩して軽く揉みほぐす佐藤。

 ダイエットしとけばよかった……と呟いているのを聞かないふりをして話し始めた。


「とりあえず生き延びるのを第一に考えて、ゾンビの動きなんだけどよ、どうやら走るタイプと歩くタイプがいるみたいだから」


「……え?なんか違うの?」


「全然違うのよ。映画によってゾンビの種類があって追いかけてくるのにゆっくり歩くタイプと思いっきり走ってくるタイプがいるの。階段を駆け上がってきたのは走るタイプ」


「ほら、ちょっと見てみ。あれが歩くヤツらな」


 刈田がテレビを指差すと緩慢な動きで体をユラユラと揺らし歩いているゾンビが映し出されていた。

 それは一体では無く複数人いて、それぞれが道を開けるように歩いている。


「……目が見えてるな、厄介」


「ちゃんと避けてる……でも、直前に避けているから視力はわるいんじゃないか」


 上司もテレビを確認している。どうやらゾンビ同士ギリギリに避けているようだ。

 逆に電柱や窓ガラスに激突しているのを見るとあまり動いていなかったり色の薄いのは認識しずらいのかもしれない。


「でも、耳はいいな」


 まだ生きて逃げ惑っている人はなるべく音を立てないようにしているようだ。

 3人の男女がなんとか建物の影を利用して歩いているのだが、隣の窓にバン!と血塗れの人がぶつかりズルズルと落ちていくのを見た女性が悲鳴を上げたようだ。

 ノイズ混じりに聞こえる音に反応して一斉に向きを変えたゾンビは走る足音を立てて3人に向かっていった。

 ゆっくりと歩くゾンビもそれに続いているが、既にゾンビに囲まれ3人の姿が見えなくなっている。


『外にいる人は直ちに屋内に避難してください。外は危険です。しっかりと窓と扉を施錠して避難してください。なるべく音を立てずに刺激を与えず隠れてください。夜中に電気は付けず気付かれないように過ごしてください。また、応戦する場合は頭を狙ってください。体を傷付けても動きは止めません』


「………………情報山盛り」


 ヒクヒクと口端を引き攣らして米田は言うと、全員が静かに頷いた。


「なるほど。音を立てない光は最低限、は鉄則でいこう。武器になるものを探して各自持った方がいいな」


「…………武器」


「課長大丈夫ですか?」


「あ、ああ……すまん」


 気丈に見えていても元々映画など見ない桃園と同じく知識皆無な上司はふぅ、と息を吐き出して空を見上げた。

 ヘリが飛んでいる。


「…………ヘリだ。助けに来てくれないかな」


「……どうでしょう、それも頭に入れて色々行動を考えた方がいいかもしれないですね」


「……そうか」


 必ず来ると決まっている訳じゃないことをむやみやたらに言って希望を持たすのは危険だ。

 米田は言葉を濁し行動についてどうするか話し合いの続きを促した。


「しばらくはここで立てこもり?」


「そうなると思うよ。食べ物や衛生用品も探せば有るだろうからかき集めつつ、逃げれる経路とか出たあとの行先とか決めた方がいいんだけど……下には行けないんだよね」


「上一択なんだけど、そっから逃げ道があるかと言われるとって感じなんだよな」


「避難経路は?」


「この階の向こう端に外に続く階段が有るけど、そこから降りるには死亡率高いと思うよ」


 佐藤が窓から指差すと階段が見える。

 まだゾンビはいないが1番下の周りにはゾンビが徘徊していて、階段を降りる音に気付き上がってくるんじゃないかとの事だった。


「……そっかぁ」


「あと、この階の扉はかなり薄い。あの防火扉が破られたらこの階にも来ると思うぜ」


「……厳しいな」


「じゃあ、屋上に行くしかないの?」


「そうだね、それしかないと思う。…………屋上」


 佐藤はハッとして隣のビルを見る。

 そこはオフィス街のビルが並んでいて距離も近かった。


「……さ、最悪飛び移る……とか?」


「…………………………」


 全員が隣のビルを見てから顔を見合わせる。


「…………お、屋上行ってみる……?」


 桃園が恐る恐る聞くと、全員は決死の表情で頷き周りに気付かれないようにそっと階段へと向かった。

 静かに上にあがり屋上への扉を開けると、少し強い風が吹上、髪をバサリと揺らした。

 広めに作られている屋上、そのすぐ隣にはビルがすぐ側にありなんとかジャンプで行けなくもない距離である。

 しかし、フェンスが邪魔をしている。


「……一応、見といて良かった」


「……工具探そうか」


 フェンスを見てから言うと、全員が頷いた。

 向こう側にもフェンスはあるが、一部壊れついて注意の看板がある。

 場所も近く飛ぶならあそこだろうと目星を付けてから屋上を後にした。







 

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