第1話 賢者と呼ばれたスライムテイマーは若返る
長年研究を続けてきた若返りの薬を完成させた、後はどれくらいの間若返る事ができるのか実験を行うだけとなり初めてテイムしたスライムが見届ける。
「ようやく完成じゃ、長かった……人生どれだけ女性にアタックしても伴侶となってくれる者はおらんかった。 御年80歳にしてスライムしかテイム出来ないとか馬鹿にされて来たがこの薬で若返り新たな人生のスタートをきるぞいグビッ!」
ワシの名はアルト・バイエル、職業テイマーでスライムしかテイム出来ないが科学者でもある。
「ふぅ、プルコどうじゃ? ワシ若返っとるか?」
スライムはプルプルと震えるだけで自分に変化が起きたかどうかは分からない様だ。
「うーむ、鏡を見ても特に変わらんか……失敗したとは思えんが効果が出るまで寝るとするかの。」
研究用に作った小屋へと戻りスライムと共に睡眠を摂り、朝を迎えるとなんと身体が縮んでいた。
「何じゃ!? 物がやけにデカく感じるぞ? まさか!?」
慌てて鏡を見ると子供の頃の自分自身が映っていた。
「わ、若返りすぎじゃあああああ!! 何を間違えた、配合は合っとった筈じゃ! こんなガキの姿じゃ美人なお姉さんをナンパ出来んじゃないか!!」
そこへプルコが慰める様に近付く。
「おお、ワシの事分かってくれるのはプルコだけじゃよ。 …………いや待てよ、諦めるのはまだ早いぞい! 見た目は12歳前後といった頃か、ならば温泉に行って女風呂にまだ入れる歳の筈じゃ! ぐふふふふ♡ プルコよ、そうと決まれば早速出発じゃ!」
「プルプル」
プルコを連れて街に着き温泉宿へと入り金を払い女風呂に入ろうとすると止められる。
「ちょっと君、何処の子か知らないけどそこは女性専用の場所よ。」
「え? ワシまだ12歳じゃよ?」
「数年前から10歳までに下がったのよ、だから男湯に入ってね。」
「そんな!?」
(時代錯誤と言うやつか、ワシの楽しみががががが……。)
がっかりしながら男湯に入るとむさ苦しい野郎共の裸を見てしまい嫌気が刺すが頭にプルコを乗せ冷静になる。
(落ち着けワシ、まだ手が無くなった訳ではない。 長年の研究の末編み出したスライム透過法と言う技術があるてわはないか、まずは風呂で身体を清めるとしようかの。)
汗を流し50度の浴槽に肩まで入り100数えている間に隣の女風呂に入っているであろう女性達の姿を想像し悶々としていたら直ぐに数え終わり浴槽から出てプルコを抱えて壁際へと立つ。
(よし、このくらいの位置でよいかな? では早速、お楽しみタイムといくぞいグヘヘヘへ。)
プルコを壁際に押し付け透過法を試してみるも何も起こらず壁しか見えなかった。
「む? おかしいのそんな筈は。」
「おうボウズ、それスライム透過法とか言う奴だろ?」
「何じゃ、知っとるのか?」
「知ってるも何も数年前にそれやって出禁になった爺さんが居てな、今じゃその覗きの手法が使えない様に特殊な鉱石を練り込んだ壁を仕切りにしたみたいだぜ?」
「嘘じゃ、ワシの楽しみが……」
「ま、諦めるこったな。」
残念な事に男湯に居た屈強そうな身体付きの男からスライム透過法が封じられている事に落胆する。
「いったい誰じゃスライム透過法なんて考えて女湯覗けなくなる様なへまやらかした奴は!」
「プルプル」
「あ、ワシ以外居らんか……。」
数年前に自分の編み出したスライム透過法により風呂屋の番頭に見つかり出禁を言い渡されていた。
「はぁ……何処かにワシの伴侶となってくれるナイスバデーな姉ちゃん居ないかのう。」
「か、可愛い!」
「な、何じゃ?」
後ろから女の声がし振り向くと目の前には胸の谷間と言う名の渓谷が広がっていた。
「うほおおおお!!」
「あ、ごめんねぼく……それスライムだよね?」
「え? ワシのスライムが何か?」
「スライムは害の無いモンスターとしてペットとしても大人気なんだ。」
「そ、そうなのか? なら少し触って見るかの?」
「良いの! ありがとう!!」
茶髪が腰までかかるストレートヘアで青い目をした胸の大きな女性はしゃがみながらプルコを撫でる姿を見ると先程よりも胸が強調されワシは吸い込まれる様に顔を埋めていた。
「ちょっと君大丈夫!? しっかりして!!」
「プルプル」
(あ〜たまらんのう……スライムとは違う弾力性が有って最高じゃ♡)
「ねえ君! 君ってば!!」
「はっ! すまんすまんワシ、お姉さんの事好きになっちゃったわい。」
「え?」
「ワシと結婚を前提に付き合ってくれい!!」
「うーん、ごめんね私彼氏居るからだめなの。」
(か、彼氏持ち!? それはそうか、こんな美人に彼氏が居らん訳ないしの。)
「ははは、言ってみただけじゃ冗談じゃよ冗談……チクショー!!」
プルコを抱えるとワシは恥ずかしさと悔しさのあまり泣きながら街中を走り回った。
「あーもう、何じゃこの年になっても目から汗が止め処なく出てくるわいズヒビビビ!!」
「ぎゃあああああ何だこのガキいいいい!? 私のローブで鼻噛むなボケ!!」
「ほえ?」
「もう! 本当についてないわ、パーティーから追放されるわ服は汚されるわ最悪!!」
魔法使いだろうか黒いローブを纏い、赤い髪が肩までかかる目が緑色の胸の大きさは控えめだがスタイルは良い方と思われる女性に出会う。
「おっと、すまん先程失恋したばかりでな許せ。」
「ガキのする事に一々腹立ててたら拉致ガ空かないし別にいいよ、気にしないから。」
「プルコ、汚れを取ってくれるか?」
そう言うとプルコは汚れた箇所にくっ付くと一瞬にして綺麗にする。
「そのスライムの能力か? 一瞬にして汚れが無くなっただけでなく、他の箇所が気になるくらいに綺麗にしないでくれる?」
仕方なくプルコに頼み服全体を覆わせ新品の状態にし女性に事情を聴く事にした。
「私の名前はシャウ・エッセよ、パーティーに私より上位の魔法が使える賢者が加入してお払い箱って訳。」
「何じゃ、まだそんな阿呆な考えしとる奴が居るんか。 そのパーティー連携とれなくて落ちぶれるじゃろうな。」
「Sランクパーティーなのよ、そんな訳ないじゃない。」
「なら見てみるかの、プルコを通して見れるがどうする?」
「ま、気にはなるし見てみるわ。」
「そんじゃプルコ頼むぞい。」
「プルプル」
手を翳すとシャウの所属していたパーティーが映し出され、今まさにSランクの討伐依頼を受注していた。