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クリームとわたし

作者: 奥田 繭

風の音 びゅーびゅーひゅるり

昨日のわたしを薄っぺらくしながら

雨の音 しとしとぴたぴた

昨日のわたしを透明にしながら

寝息の音 すやすやこーこー

昨日のわたしを思い出しながら


いってきますと言ったあの日

おかえりなさいは永遠に消えた

手のひらに乗せたシュークリームひとつ

ほおばって目をつぶって甘さにおぼれてそれから


ささやき声 ぶつぶつさわさわ

明日のわたしを確かめながら

笑い声 けらけらわいわい

明日のわたしを楽しみにしながら

歌い声 ららららるるるる

明日のわたしを迎えにきながら


なにもないなんてない世界のなかで

今日のわたしは昨日と明日に備え中

なくした言葉を探し続けて

指先についたクリームをなめた

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― 新着の感想 ―
[良い点] 音の描写と表現が多彩で、しかも一つひとつがとても印象に残りました。 そして、「いってきますと言ったあの日 おかえりなさいは永遠に消えた」という言葉が胸に響きました。奥田様のご趣旨を捉えきれ…
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