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第86話 参上

「くそぉ!よくも蓮人を!!」


「落ち着いて!」


友人の死に我を失い、暴れようとする郷間武を神木沙也加が素早く止める。


「止めるなよ!あいつが蓮人を!!」


「死んでないから落ち着いてください!」


ばしんと乾いた音が響く。

沙也加が郷間武の頬を叩いた音だ。


「死んで……いない?」


沙也加の言葉に、郷間武が目を丸める。


「あの状態でか?」


その言葉を耳にした鉄針が怪訝そうに尋ねた。

その言葉に答える様に、沙也加が指さす。


――その場に立ったままの、首のないエギールの姿を。


「なにを――っ!!?」


そこで鉄針も気づいた。

頭を砕かれた人間が倒れず立ったままである事の不自然さに。


そう、その状態で死者が立っていられるはずがないのだ。


更に――


「首から血が出ていないな。それに……飛び散ったはずの頭部がただの土になっている」


通常、頭部が粉砕されれば血肉や脳が飛び散り、陰惨な血だまりを作る事になる。

だが床にそれらの痕跡は一切なく、ただの土くれが散乱しているだけだった。


つまり――


「あの状態で死んでいないとは……つくづく、エギールと言う人物は化け物だな」


想像以上の化け物ぶりに、鉄針の背筋に寒気が走る。

そしてそれは彼の警戒度を大きく引き上げた。


万一シェン様に危険が及ぶ様なら……


その状況に対処できる様、いつでも郷間武や神木沙也加を人質にとれるよう彼は身構える。


「……」


騒ぐ外野を他所に、手応えから砕けたのが頭部でない事に一瞬で気づいたシェンはエギールから離れて様子を見ていた。


彼がエギールに想定していたのは、自身と似たような力である。

だが砕けた頭部が土に代わる様な奇っ怪な真似は、彼の換骨奪胎をもってしても不可能だ。

その未知なる力に対する警戒が、シェンの動きを止め観察へと移行させたのだ。


「む……」


その場の全員の視線が集まる中、頭部を失って棒立ちだったエギールに動きが起きた。


その首元の切断面が泡立つかの様に蠢き、そこから土が湧きだし人の頭部の様な物を形成し出したのだ。

やがてそれはフルフェイスを被った形となり、土だったものが金属質な表面へと変わる。


そして頭部が復元したエギールは――


「危ない所だった。危うく頭が吹き飛ぶところだ」


――なかった事にしようとする。


「それは一体なんの冗談だ?」


が、当然そんな物が通じる訳もない。


「はぁ……やっぱぁ、無理ですよねぇ?」


エギールの声質が変わる。

それまでの高く、可愛らしいものね。


「仕方ありませんねぇ。えい!」


掛け声とともに、彼女の全身を覆う鎧にヒビが入った。

それはあっという間に全身に広がっていき、そして砕けて飛び散る。


そして姿を現す。

その中から、一人の少女が。


「マジカルぅ、クレイスちゃん参上ですぅ」


中から出てきたのは幼い魔法少女。

マジカルクレイスである。


そう、この場にいたエギールはクレイスによる偽装だったのだ。

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