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第85話 結末

「く……想像以上か……」


顔面を殴られ吹きとばされたシェンは、鼻血を垂れ流しながらも起き上がって来る。


「だがそうではないとな!」


そして起き上がって鼻血を手で拭い。

すぐさまエギールへと突っ込んでいく。


「……」


もろに攻撃が入ったにも関わらず、その直後から元気に突っ込んでくるシェンの打たれ強さに感心しつつも、彼女は攻撃を裁いてカウンターの蹴りを入れる。


「ぐぅっ!?」


こんどはボディーにもろに入った。

これで終わりだろう。

エギールはそう判断したが、だがその予想とは裏腹にシェンは吹き飛ばされた態勢を一瞬で立て直して再度突っ込んできた。


「なっ……」


「ははは!その程度で勝ったと思ったら大間違いだ」


明らかに身体能力を遥かに超える、驚異的なまでの耐久力。


スキルか?

それとも身に着けているボディスーツの効果か?


何らかのタネがある事は疑いようがなかったが、それを鑑定などで知る事は出来ない。

何故ならシェンは鑑定対策を用意していたからだ。


「むむむぅ」


殴っても殴っても、ゾンビの様に起き上がって攻撃してくるシェン。

そのしつこさに、うんざりしたエギールはついつい可愛く唸り声を上げる。

負ける事が無いとはいえ、延々続くゾンビアタックに嫌気がさすのは仕方ない事だろう。


「くくく、もうウンザリと言った所か。だが私はまだまだ戦えるぞ。長期戦といこうではないか」


シェンのゾンビアタックは続く。

最初はダメージだけに目の言っていたエギールだったが、途中で気づく。

彼が全く疲労していない事に。


実は実力を隠し、疲れない程度に戦っている?


一瞬彼女はそう考えたが、直ぐにその考えを捨てる。

一方的に殴られているこの状況で、そんな意味不明な真似をする理由などないのだから。

殴られて楽しみ特殊な性癖でもない限りは。


ではなぜ?

そう続いて考えるが当然その答えは出ない。

そのため彼女は余計な考えは捨て、目の前の敵を殴り続ける事にだけ注力する事に切り替えた。


――シェンのありえない耐久力とスタミナ。


その答えは、彼のスキルである練丹術にあった。

実はシェンはずっと、自らが作った丹薬を服用していたのだ。


そんな物を服用していたなら、エギールは気づいていたはず?


確かに、通常の経口摂取の形で服用していたならすぐに気づいただろう。

だが彼の服用の仕方は特殊だった。

体内にストックしてある無数の丹薬の成分を、直接血管に流す形で薬効を素早く発動させていたのだ。


更に言うなら、本来、丹薬の効果は本来5分ほどかけて回復させる物である。

複数同時に服用してもその効果は、重複しない。


言ってしまえば、体力や気力も回復するリジェネ効果と思って貰えばいいだろう。


その手の回復効果には瞬間的な回復力はなく、本来なら、エギールから何度も受けた大ダメージを無視できるはずもなかった。

だが、現にシェンはまるで不死身であるかの様に戦っている。


その理由は彼の一族の持つ秘術、換骨奪胎にあった。

シェンは丹薬の回復効果を瞬間的に吸収発揮できるよう、換骨奪胎で自らの肉体をそれに適した体質へと変化させていたのである。


ただしこれは相当無茶な行為だ。

本来、いくら体を変化させようと、そこまでの無茶な改良は難しい。

やり過ぎると自らの生命を危機に晒す事になる。


だがシェンの体は既に普通ではなかった。

何故なら、練丹術で錬化した魔物を取り込み自らの血肉にしていたのだから。


なので、これは半分魔物と化した彼だったからこそできた改造と言える。


「がぁっ!?」


エギールの拳がシェンのみぞおちを強く捕らえた。

これで相手は吹き飛び、仕切り直しになる。

エギールはそう考えた。


だが――


「えっ!?」


シェンは吹き飛ばなかった。


「感謝するぞエギール!」


何故ならその瞬間、シェンのレベルが上がったからだ。

そして予想外の事態に一瞬固まってしまったエギールに、シェンの拳がもろにヒットする。


「「「——っ!?」」」


シェンの拳がその仮面を。

いや、それどころかエギールの頭部さえも粉砕してしまう。


砕けて飛び散る破片。


そのありえない光景に、場にいた者達全てが息を飲む。

殴った本人のシェンも含め。


それ程までにあっけなくエギールは敗北——いや、その命を落としてしまったのだ。


「蓮人!!!!」


誰も予想だにしなかったありえない結末を迎えた広い空間に、郷間の悲痛な声が響き渡った。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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