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第73話 誤算

ダンジョン内は、見渡す限り何もない広大な荒野が広がっていた。

頭上には星空が瞬いている。

まるで外にいる様な感覚だが、周囲に漂う強い違和感がそれを否定する。


「……」


この空間には、良く分からない波動の様な物が満ちていた。

間違いなく魔王が用意した仕掛けだろう。


≪マイロード。この空間からは、強力な回復の力を感じます≫


成程。

魔王は戦いながら自身を回復する手段として、このダンジョンに俺をおびき寄せた訳か。

最初から何らかの罠があるとは思っていたが、奴は想像以上に厄介な物を用意していた様だ。


自動回復によるアドバンテージ。

以前の俺なら、この条件下で戦えばきっと負けていただろう。


まあ以前ならば……の話ではあるが。


今の俺には、強化されたアクアスによる回復(サポート)がある。

条件的にはほぼ五分だ。


≪この空間の回復効果……どうやらマイロードにも働いている用です≫


俺にも?


優秀な回復能力を持つ彼女が言うのなら、間違いはないだろう。

単純に魔王がミスを犯したという可能性もなくはないが、それよりも、何らかの意図でそうしたと考えるのが自然だ。


奴は一体何を企んでいる?


≪それは分かりませんが、気を付けた方がよろしいかと≫


ああ、分かってる……


「どうした?かかって来ないのか?」


「魔王……ここは本当に、2週間維持されるんだろうな?」


あのスキルを使用中、俺は破壊の衝動に飲み込まれ自我を失う。


もし魔王を倒した後にこのダンジョンが消滅してしまえば、体力が続く限り、俺は目につく全てを破壊して周る事になる。

そうなれば状況次第では万単位、もしくはそれ以上の死者が出る可能性があった。


そう、大虐殺だ。


だから確認する。

勿論、魔王が嘘をつかないという保証はない。

だがそれでも、聞かずにはいられなかった。


最悪の場合、魔王に騙されて仕方なかったという、自身に対する免罪符を得るために。


「無論だ。私は嘘はつかんよ。それに、保険の為に土の精霊を置いて来たのだろう?今更迷ってどうする」


「……」


俺はクレイスを、魔王との戦いのために呼び戻さなかった。

いてもそれ程役に立たないというのもあったが、彼女には他にやって貰いたい事があったからだ。


それは――家族や友人に危険が及びそうなら、彼女に連れて逃げて貰う事だ。


俺の手でどれ程の死者が出ようとも、それでも家族や友人だけは守りたかった。

自分勝手で、最低の行動である事は重々承知している。

だがそれでも、自らの手で彼らを手をかける事だけは絶対に避けたい。


「まあどちらにせよ、外の事を心配する必要はない。何故なら――」


魔王が口の端を歪めて笑う。

その瞬間、俺の背筋に寒気が走った。


「勇気蓮人。貴様が勝つ事など……天地がひっくり返ろうとも、起こりえないからだ」


魔王の体から、凄まじいエネルギーが放たれる。

攻撃ではない。

単に全身に、力を巡らせただけだ。


だがそれだけでハッキリと分かる。

奴の力が、以前とは比べ物になら程に増している事が。


「馬鹿な……」


魔王が身体強化辺りを手に入れているだろう事は、予想してはいた。

だがこれは、そう言う次元の話ではない。

その力はまるで別物レベルだ。


……勝てない。


一瞬でそれを悟った俺は、思わず後ずさる。


「見ての通り、このダンジョンに出口は無い。2週間は嫌でも私と一緒だ。逃げ様なんて考えても無駄だぞ」


魔王の言う通り、本来ならばある筈の脱出用のクリスタルはどこにも見当たらなかった。

仮にどこかに出口があったとしても、魔王がこの世界にいる以上、逃げ切るのはそもそも不可能だ。


――ならば戦うしかない。


俺が生き延びる術はただ一つ。

奴に先を期待させるだけの力を、見せつけるのみ。


「さあ、全力で俺にかかって来い。見込み次第では、また見逃してやろうではないか。あの時、お前の仲間だけを皆殺しにした時の様にな!」


「魔王……」


俺はそれまで押さえていた奴への怒りと憎しみを爆発させ、スキルを発動させる。


破壊の化身化(バスター・モード)】を

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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