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第65話 交渉

「サーヤは思った以上に強かったな」


ダンジョン攻略は特に問題なく終わっている。

その中で最も活躍したのがサーヤだ。

彼女は同じレベル4である郷間や凛音と比べ、明らかに抜きんでた強さを持っていた。


「流石はぁ……もぐもぐ……私の……んぐんぐ……パートナーですぅ」


クレイスがゲームをしつつ、口に入ったお菓子をもぐもぐさせながら同意を返して来る。

死ぬ程行儀が悪いが、まあいいだろう。

精霊に行儀や作法なんて押し付けてもしょうがないしな。


「魔法少女の能力が優秀なだけに、俺自身が使えないのはやっぱり痛いな」


魔法少女はかなり強力な能力だ。


身体強化に近いステータスアップ。

見た目に反して防御力の糞高い魔法少女装束。

魔法――実際は魔法ではないんだが――による遠距離攻撃。

そこに必殺の一撃まで備わっていると来ている。


魔法少女という能力は、戦闘能力面ではぶっちぎりの特殊能力と言って差し支えないだろう。


だからこそ残念なのだ。

扱えないのが。


魔法少女への強い愛とか言う意味不明な制限さえなければと、心の底から惜しまれてならない。

まあそう言うマイナス要素があるからこその、強能力なのかもしれないが。


「とりあえず……サーヤがいるから、Cランクダンジョン攻略はもうあいつらだけでいいな」


魔法少女という強い特殊能力に加え、魔法剣?を使うスタイルとオーラブレードは相性がすこぶる良かった。

更に、彼女自身の剣技の腕前も俺と同等クラスと来ている。


そんなサーヤの強さは、レベル4としては破格。

レベル5どころか、下手をしたらレベル6でも通用するだろう。

そんな彼女なら、当然Cランクのダンジョン如きは楽勝である。


見た目というハンデこそあるが、彼女が優秀な人材である事は疑いようがない。


「さて、ではゲームをば……」


≪マイロード。少し宜しいですか?≫


携帯ゲーム機を手に取ろうとして、アクアスに声をかけられる。

基本的に用が無い時は、彼女は俺に語りかけて来ない。

つまり、何かあるという事だろう。


「何かあるのか?」


≪先程から、この家を見張っていると思わしい者達がいます≫


「見張ってる?どれ」


俺は探索のスキルを発動させる。

発動しっぱなしにしないのは、アクアスがその代わりを務めてくれているからだ。


あと、スキルを使ってるとゲームに没入しきれないというのもある。

折角の楽しいゲームを、邪魔なく浸りたいと思うのはゲーマーなら当然の事だろう。


「それっぽいのは6人か」


アクアスの言う通り、この家を見張っているらしき人間の気配を察知する。


「レベル6だから見張られてるのかねぇ」


今はもうレベル7が要るとはいえ、少し前まではレベル6が日本における最高レベルだった。

無名の人間がいきなり協会でレベル6として登録すれば、マークされてもおかしくはない。


もう一つ考えられる可能性があるとすれば――


「それとも、エギール・レーン関連かねぇ」


エギール・レーンの素性を調べるために、所属している会社の人間を全てマークしている可能性だ。


「確認するか」


単に見張りが付くだけなら、それ程大きな問題はなかった。

これからはエギール・レーンとして活動する機会も減るので、バレない様に少し気を付ければいいだけだし。


だが、そいつらがこのままずっと見張っているだけとは限らない。

流石に可能性はそう高くは無いと思うが、襲撃されたら厄介だ。

相手も馬鹿ではないだろうから、レベル4の郷間達を襲うならレベル5以上を用意するだろうし、俺の家族や郷間の親父さんが狙われる可能性もある。


それを放って置けるほど、俺はのん気物じゃない。


「変化はないな」


俺は魔法で分身を生み出し、それとほぼ同時にスキルで気配を完全に消す。

見張っている奴らに動きはないので、俺がした事には気づいていないと考えていいだろう。


「少なくとも、能力で部屋の中を透視されたりはしていないみたいだな」


もし部屋の中が見えていたなら、俺が二人に増えた時点で何らかの動きがある筈だ。


「ちょっと外で遊んでくるから、クレイスはそのままゲームしていてくれ」


俺は偽装の魔法で、自分の姿を女に変える。

なんだったら魔法少女風にしようかとも思ったが、それは流石に自重しておいた。


「はぁい」


クレイスに出かけると告げ、俺は転移魔法を詠唱する。

転移魔法は詠唱が長く、消費魔力も多い。

しかも移動時に強い不快感がおこるので、俺はあまりこれを使うのは好きではなかった。


まあこの不快感は、一種のトラウマの様なものだが……


だがまあ仕方がない。

玄関や窓から出たら、気づかれる可能性があるからな。


「転移」


転移魔法を発動させる。

場所は見張りしている人間の後方、ちょっと高めのマンション屋上のフェンスの外側だ。


「うっ……」


転移した俺はその場でしゃがみ、口元を押さえる。

気持ち悪い。

吐きそうだ。


「すー、はー」


それをぐっと堪え。

俺は軽く深呼吸し、ゆっくりと心を落ち着かせる。


「よし」


不快感が消えた所で屋上のフェンスを飛び越え。

そして見張っている男の背後に、俺は音もなく着地する。


相手は全く此方に気付いていない。


「やぁ、いい月夜だと思わないか?」


いきなりぶん殴ってもいいのだが、一応話し合いから入る事にする。

彼らも仕事で仕方なくしてる訳だろうからな。

何事も平和的に進めるに限る。


――例の毒を飲ませるのは、まあその後だ。

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