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第58話 御新規

「蓮人さん!お兄ちゃんだけズルいです!」


日課であるクレイスとの訓練を終えて外に出ると、テーブルに置いてあるスマホの画面に凛音からの着信を知らせる通知が出ていた。

どうやら鼻の差だった様だ。


正直無視してゲームしようかとも思ったが、何か緊急の要件かもと思い、渋々ながら電話した第一声がこれである。

するんじゃなかった。


「私のレベル上げもお願いします!」


どうやら郷間がパワーレベリングを凛音に自慢しまくっていたらしく、勝負終わったらじゃあ次は――一応勝負の事があったので、その間は自重していたらしい――自分がと電話してきた様だ。


「凛音。急増育成は基本的に能力が高いだけの、ご……ダメな奴が出来上がるもんだ」


『郷間の様な』という余計な一言は省いておく。

妹のまえでダメな奴呼ばわりする程、俺も無神経ではないからな。

ちょっと口から洩れそうになったが、まあセーフだろう。


「今、『郷間の様な』って言おうとしませんでした?」


むう……無駄に鋭い。

まあ惚けておこう。


「拙者には何の事やらさっぱりでござるよ」


「凄く嘘くさいですよ。まあそれは置いておいて。会社の為にも、出来たらレベル上げお願いしたいんです。駄目ですか?」


「会社の為?」


「はい。蓮人さん――エギール・レーンのお陰で、会社は大分有名になった方だと思うんです。でも――」


フルコーポレーションでは、常に能力者の募集を行ってはいるそうだ。

だが、未だその申し込みは0らしい。


エギール・レーンという凄い能力者がいる。

それは謳い文句としては申し分ない物だ。


にも拘らず人が寄ってこないのは、他に真面な能力者がいない事がネックになっているためだと、凛音は言う。


「成程な……」


言われてみればもっともな話だ。

仮に新人として会社にプレイヤーが入ったとして、そいつが高レベルであるエギール・レーンと組まされる様な事はまずない。

確実に俺以外の能力者――郷間や凛音と組む事になる。


片やレベル4とは言え、攻撃能力無し。

もう片方は初期レベルだ。


流石にこの面子だけの弱小企業に、好んで飛び込んで来る奴はいないだろう。


「という訳で、出来れば私のレベルも上げて欲しいんです。勿論蓮人さんの言う様に、それだとレベルに見合った実戦経験は得られないとは思います。けどそこは訓練を頑張りますんで、どうかよろしくお願いします」


「まあしゃあないな。けど、レベル4までだぞ?」


「それで十分です!ありがとうございます蓮人さん!」


最初は兄だけ狡いって感じかと思ったが、明確な理由があるなら話は変わって来る。


「それと――勇気蓮人本人名義で、会社の能力者一覧に加えといてくれ」


レベルもそうだが、人数も多ければ多い程いいはずだ。

だから勇気蓮人としても、参加する事にする。


「え?いいんですか!?」


「ああ。明日にでも協会に行って、能力者登録して来るよ」


ホームページに記載する能力者のレベルは、協会で公認を受けた物でなければ違法になる――そのため、エギール・レーンは非公開とプロフィールには記されていた。

余程有名でもない限り、登録してもレベル等が非公開じゃ意味がないので、俺は明日協会で登録して来る事にする。


勇気蓮人にはちゃんと戸籍があるからな。

まあ身体強化のレベル5か6にしとこう。


「蓮人さん!やる気ですね!」


「いや、全然」


寧ろ、面倒くさそうな会社関連の事をさっさと終わらせたいだけというのが本音だ。

その方が余計な事を気にせず、対魔王用の訓練、そしてゲームに気持ちよく集中できるという物である。


「ま、レベル上げも明日からだ。今日はちゃんと休んどけ」


「了解です!」


電話を切り、俺は携帯ゲーム機のスイッチを入れた。

すると小さな画面の中に、所狭しと可愛らしい義妹(てんし)達が咲き誇る。


「じゃあ私はぁ、こっちをしますねぇ」


クレイスが笑顔でゲーム機のスイッチを入れる。

彼女は精霊にも拘らず物の良さが分かる様で、俺が携帯完全版をやってる傍ら、いつも据え置き版のエンジェルハニーをプレイしていた。


ウェルカム・トゥ・ゲームオタクって奴だ。


まあ一つ難点があげるとすれば、悪い奴が出て来る度にゲームコントローラーを馬鹿力で握り潰してしまう事だろうか。

お陰でもう10個以上買い替えており、部屋の隅にはいつ壊れても良い様に、予備のコントローラの詰まった箱が置いてある状態となっていた。

金がかかってしょうがない。


……ま、同士への投資と考えれば安い物か。

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確かに……あの時もしも僕に力が有ったなら……! コントローラー握りつぶしてただろうね
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