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第57話 見せしめ

「さて、笹島は気絶してるから後回しだ。先にアンタらに土下座して貰おうか……約束通りな」


「はっ!誰がするかよ!バカバカしい!」


「約束を破る気か?」


「へっ、そんな約束した覚えねぇな」


まあ予想はしていたが、やはり守る気はないらしい。

別にいいけどな。

強制的にさせるだけだし。


「そうか、じゃあ――」


仕方がない。

地面に伏せるのが嫌なら、強制的に伏せて貰う

俺は奴らに無造作に近づき、そのうちの一人の両膝を蹴りで粉砕してやった。


「ぎゃあああああああああ!!!足が!俺の足がぁぁ!!」


男はその場に倒れ、苦悶の声を上げる。

やれやれ、両膝を粉砕されたぐらいで大げさな奴だ。

言っちゃなんだが、限界突破に比べれば骨折程度何ともないからな。


「て、てめぇ何し――ぎゃあああああああああ!!」


次の奴の両膝をへし折る。

自分で出来ないのを手伝ってやる俺は、なんて優しいんだろうか。

エンジェルハニーの妹達なら、きっと「お兄ちゃんステキ!」ってなる筈だ。


「ま、待て!待ってくれ!俺はちゃんと土下座を――げぇああああああああ!!!」


最後の一人は自発的にやろうとしたが、これはサービスである。

俺は差別をしない主義だからな。

1人だけ手伝って貰えないなんて、そんな仲間外れを作る様な真似はしない。


皆同じ。

仲良くお手て繋いでゴールって奴だ。


「お前……えぐい事するな」


倒れて苦し気に呻いてる3人を見て、郷間がドン引きしていた。

まあ少々厳しめの対応だが、笹島と好んでつるんでいる様な奴らはどうせ屑だしいいだろう。


「さて、じゃあアレを試すか」


俺は基本、目立つつもりがない。

にも拘らず、堂々とこいつらをぶちのめしたのには理由がある。


「アレって何だ?」


「Sランクダンジョン攻略で、俺に毒を飲ませて来た馬鹿の事を話しただろ?」


――掌握毒。


柳毒指が能力で精製した、飲んだ者を自在に支配するという毒だ。

奴はそれを使って、参加した能力者達を支配しようとしていた。


「それを習得しておいたんだよ」


「さらりとエグイ能力覚えてるな……お前」


こういった揉め事が起こった時に便利そうだったので、優先的に習得しておいたのだ。

それが早速役に立つ。


「まあそのままじゃ、能力者(プレイヤー)には効かないんだけどな」


能力者は毒や状態異常に対する耐性を持っているため、そのまま飲ませても無効化(レジスト)されてしまう。


「だから……」


≪お任せください。マイロード≫


俺の考えを読み、アクアスがある物を生成する。

それは柳家秘伝の秘薬だ。

一度体内に取り込んだ事で、彼女はそのレシピを完全に把握していた。


「ああぁぁ……」


「ほれ、飲め」


俺はそれを能力で生成した掌握毒と混ぜ合わせ、呻いている奴らに

順次飲ませていく。

序に、アクアスの力でへし折った膝の回復もしてやる。


「う……うぅ……」


「はぁ……はぁ……くそっ……なに飲ませやがった」


「お前らはこれから俺に絶対服従だ」


「く……ふざけんな!俺達にこんな真似してタダで済むと思ってんのか!!」


怪我を治してやった瞬間、反抗的な態度を見せて来る。

また膝をへし折られたいのだろうか?


まあいいや。

俺は能力を使って3馬鹿を矯正する。


「今日あった事は誰にも漏らすな。俺にやられた事も、毒の事も。それと、これからは真面目に生きろ。間違っても、俺や郷間には2度と関わるなよ」


「う……分かりました」


「し……従います」


3人が俺の言葉に頭を下げる。

ほんと、便利な能力だ。

まあこれで俺の情報が洩れる事はないだろう。


「もう帰っていいぞ。行け」


こいつらはこんなもんでいいだろう。

只のチンピラだし。


「「「失礼します!」」」


「さて、じゃあ次は笹島だな」


チンピラ共が消えたので、気絶している笹島に水をぶっかけて起こす。

アクアス産の水なので、これで少しは心が綺麗に洗い流されてくれるといいんだがな。


奴自身の為にも。


「ぶえっぷ……くそ、何しやがる」


「楽しい楽しい土下座のお時間だよ」


「ふざけんな!誰が郷間如きにそんな真似するかよ!おい皆!こいつらを袋にするぞ!」


……こいつ、本当にどうしようもない奴だな。


「皆って誰だ?誰もいないぞ」


「は?何言ってん……だ……」


俺に指摘され、笹島が周囲を見渡す。

当然、奴のお仲間の姿は影も形も残っていない。


俺はしゃがみ込み、奴の目を真っすぐに見つめる。


「笹島……俺は郷間にした事を聞いた時、お前を地獄に叩き落してやろうと思ったよ。でも、それは俺がやられた事じゃないし。何より、同級生としてのよしみがあった。だからチャンスをやったんだ。郷間に謝るチャンスを。お前にな」


普通に謝れって言われても、簡単に頭を下げる事は出来ないだろう。

この手のふざけた奴は。


だから勝負で負けて、頭を下げるチャンスをくれてやったのだ。

だがこいつはそれすらも無碍にした。


「は?な……何言ってんだ?」


「お前、エギール・レーンに紹介しろと言ってたよな?いいぜ紹介してやるよ」


「な、何だよ。それなら最初っから――っ!?」


笹島が言葉を途切らせ、絶句する。

魔法を使って女――エギール・レーンに姿を変えた俺を見て。


「お前を殺す」


「ひっ……」


序に声も変え、笹島に向かって死の威圧(プレッシャー)を発動させる。

このスキルは相手に死の恐怖を植え付けるだけの物で、精神力の強い者にはほぼ効果のない微妙なスキルだ。

異世界でも、どちらかと言えば弱い魔物の使って来るこけおどしでしかなかった。


……だが笹島には効果てきめんだった様だ。


『じょ~』と、間抜けな音が奴の股間から聞こえて来る。

恐怖でお漏らしするとか、メンタル弱すぎだろ。


「た、助けて……」


「郷間だって、お前にそう言ったんじゃないのか?お前はその時どうしたんだ?」


裏切った上に、ふざけた言葉をかけて郷間を怒らせた。

世の中やっていい事と悪い事の区別もつかないこいつは、間違いなく屑だ。


「お、俺が悪かった!だから許してくれ!蓮人!」


「謝るのは俺じゃないだろ?それにもう遅い。お前は俺のチャンスを蹴ったんだ。殺す」


「ひぃぃぃ」


まあ本気で殺すつもりはない。

痛い目を見せてやるだけだ。

本気で殺すつもりなら、郷間の見てない所でやっている。


「お、おい蓮人。なにも別に殺さなくっても……」


予想通り、郷間が止めに入って来た。

何だかんだいって、こいつは優しいからな。


「こいつのやった事を考えたら、当然の報いだと思うぞ。お前はそう思わないのか?」


「そりゃあ、裏切られた時は腹が立ったよ。心の中で何度も死ねって考えもした。でも、やっぱこいつは俺の中で友達だったんだ。それに何より……お前が同級生を手にかける所なんか、俺は見たくねぇよ」


「郷間……」


生きるか死ぬかの世界だった異世界なら、甘ちゃんと鼻で笑われる所だろう。

だが、俺はこいつのこういう所は嫌いじゃない。

だからこそ、何も考えず迷惑をかけて来るアホでも付き合ってこれたのだ。


「わかったよ。命拾いしたな、笹島」


「郷間……ありがとう……ありがとう……俺……俺……」


笹島がポロポロと涙を流し、感謝の言葉を口にする。

このままだとちょっといい青春話で終わりそうな雰囲気だが、罰はちゃんと与える。


それはそれ。

これはこれって奴だ。


「笹島、口を開けろ」


「……へ?」


奴の口に指を突っ込み、俺は例の毒を流し込んだ。


「今日から……そうだな3年間、お前は女として生きるんだ」


「……は?」


「化粧して。女物の服を着て。女言葉で3年間生活しろ」


「じょ、冗談……よね?」


笹島が自分の口から出た言葉に、ハッと驚く。


「今日から3年間、お前は笹島霧子ちゃんだ。周りの目は厳しいだろうが、それがお前の(みそぎ)だから我慢しろ」


郷間の苦悩を考えたら、たった3年間女として生きるぐらいどうって事ないだろう。

我ながら優しい裁定だぜ。


「あ、それと俺の事は誰にも漏らすな。いいな」


「分かり……ました」


「じゃ、頑張れ」


唖然とする笹島を残して、俺は運動場を後にする。


苦労を知って、初めて人は他人に優しくできる様になるって言うからな。

これからの3年間で、笹島が真人間になる事を祈るばかりだ。


「お前……おっそろしい事するな」


「郷間……俺は裏切り者が大っ嫌いなんだ。お前はそんな事、しないよな?」


今日この勝負を組んだのは、2つの目的があった。


一つは郷間に笹島をぶちのめさせてやる事で。


そしてもう一つは、俺が知り合い相手でも容赦しないって所を見せる為だ。


誰に?

もちろん言うまでもなく、郷間にだ。


こいつは悪人ではないんだが、直ぐに調子に乗るからな。

放っておくとまた何かやらかしかねない。

だから、俺を怒らせたら怖い所をキッチリ見せておく必要があった。


――郷間のブレーキとして。


「あ、当たり前だろ!俺達は親友だろ!」


「ああ、そうだな。親友だ。今の所は」


俺はニヤリと、郷間を見て笑う。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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