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第55話 開始

郷間と笹島の勝負の場は、広い運動場だ。

ここはフルコンプリートがこれから雇うであろう――あくまでも予定――能力者の訓練用に新しく抑えた場所らしい。


「よう」


直ぐ横の駐車場に車を止めた笹島が、ニヤケ面で此方に近づいてくる。

その背後には、知らない顔ぶれが3人程いた。

これは勘だが、恐らく全員能力者だろう。


「会社潰れなかったんだって?よかったなぁ、おい」


「ふざけんなよ……」


笹島の奴が馴れ馴れしく郷間の肩に手を掛けようとするが、郷間がそれを手で払う。

ま、やった事を考えると当たり前だわな。

寧ろよくそんなフレンドリーな態度で接する事が出来るもんだと、呆れを通り越して感心してしまうレベルだ。


「おいおい、なに怒ってんだ?俺は別に法律違反した訳じゃないんだぜ。恨むのは筋違いってもんだ」


「その事は別にどうこう言うつもりはねぇよ。こっちが馬鹿だったってだけだからな。単純にテメーと仲良くする気がないだけだ」


笹島のやった事はふざけた真似ではあるが、郷間は自分達のミスとしてある程度消化している様だった。

大人の対応って奴だ。


流石社会人だぜ。

俺なら間違いなくぶん殴ってるな。


「なんだよ、つれねーなー。ま、いいや。クレイスちゃ~ん。俺がこいつをボコボコにする所を、見ててくれよぉ」


笹島が猫なで声で、その場にいたクレイスに声をかけた。


エギール・レーンを紹介しろって勝負で、他の女にいい所を見せようとか……


二兎を追う者一兎も得ずの典型だな。

精々郷間にボコられて、べそかいて帰るといい。


「おい、エギール・レーンが居ないじゃねぇか」


連れて来た連中の一人が、周囲を見渡してから口を開く。

どうやらこいつらの目当てはエギール・レーンの様だ。


「勝負に勝ったら紹介する約束だからな。今この場に居る訳ないだろ?」


「はっ!鑑定能力なんてゴミが、笹島に勝てる訳ねぇだろ。ねぼけんな。さっさと連れて来い」


態度の悪い奴らだ。

糞野郎の笹島とつるんでるだけはある。


「何勘違いしてるんだ?仮に笹島が勝っても、紹介するのは笹島にだけだ。関係ない部外者に紹介する義理はねーよ」


「はぁ!?」


「態々俺達が足を運んでやったってのに!ふざけんな!!」


一番デカい奴が荒い鼻息で俺に顔を近づけ、威嚇する様に睨みつけて来る。


光の速さで目玉でもくりぬいてやろうか?


いやまあやらないけど。

そんな真似したら即警察に御用だし。


「ふむ、じゃあこうしよう。笹島が勝ったら、お前らにエギール・レーンを紹介してやる。但し、負けたらこの場にいる全員で郷間に土下座だ」


この勝負、笹島が負けた場合は郷間に土下座して謝罪する事になっていた。

勝ったら自分達にも紹介しろというなら、負けた場合、当然こいつらにも土下座して貰う。


「はぁ!?なんで俺らがそんな真似しなゃなんねーんだよ!!」


「勝った際の利益だけ得ようとか、虫が良過ぎるだろ?嫌なら諦めろ。つってもまあ、笹島が勝つって信じてるんなら断る理由はないだろうけどな」


まあ他の奴らの事はどうでもいいんだが、笹島のせいで土下座させられたとなれば、こいつらの関係がこじれるのは目に見えている。

嫌がらせとしては上々だ。


「へっ、そうだな。いいぜ、鑑定しかないゴミ野郎に笹島が負ける訳ないしな」


「ったりめーだ」


「おいおい、あんま俺を舐めんなよ」


「あん」


「今の俺は2種能力者(ダブル)なんだぜ」


「なんだとっ!」


郷間がドヤ顔で2種能力者(ダブル)である事を宣言し、笹島の顔色が変わる。


「ふ……聞いて驚け!俺は新たに結界の能力に目覚めている!」


が、能力を耳にした瞬間、笹島の顔が半笑いに変わる。

結界を使えるからなんだと言わんばかりの表情だ。


「はは、そいつは良かったな」


「結界かよ。あー、怖い怖い」


どうやら彼らは、結界の有用性を理解できていない様だ。

まあ確かに、ただ結界を張るだけの低レベルな能力ならその判断は間違いない。

一対一じゃ、時間稼ぎが関の山だろうしな。


だが、レベルの上がった結界は盾にも鉾にもなりえる。

そこに高い身体能力が加われば、まあちょっとした物だ。

それをこれから笹島は、身をもって体感する事になるだろう。


「じゃあ相手が降参するか、気絶したら終了だ。怪我はこっちが用意したポーションで治すから安心してくれ」


「おいおい、結界相手に何をどう怪我をしろってんだ?」


「やればわかるさ。二人以外は下がってくれ。郷間、準備は良いか」


「おう。新生郷間武様の強さを、笹島のアホに見せつけてやるぜ」


「寝言は寝てから言えよ。郷間」


「郷間さん。ファイトですぅ」


「へへへぇ。頑張りますから、見ててくださいねぇ」


クレイスの応援に、郷間がデレデレとだらしない顔になった。

これから戦う戦士のする顔ではないが、まあ緊張していないのは良い事なので良しとする。


「じゃあ……始め!」


全員が戦いに巻き込まれない程度に下がった所で、俺は2人に開始の合図を出した。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] いや、普通に法律に違反しるだろ(笑)
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