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第54話 餅つき

能力者は、魔物を倒すと経験値を得る事が出来る。

それが一定値まで溜まると、スキルのレベル――イコール能力者としてのレベルが上がる訳だ。


――但し、経験値は倒した人間にだけに入るのではない。


その綿密な算出方法までは判明していないが、仮にダメージなどを与えていなくとも、魔物を倒すのに貢献した分だけ参加者に経験値は振り分けられると言われている――因みに、探索や鑑定系の調べるという行為だけでは貢献に入らない。

そのため、相手を動けなくするなどして簡単に倒せる様にしてしまうと、その経験値の大半は拘束した人物に入る事になってしまう。


ので、俺が魔物を行動不能にして郷間に倒させるという手は使えない。

で、どうしたかと言うとだ――


「出すぞ」


俺が魔物を出すと宣言すると、それに合わせて郷間が重量のある両手斧を振り上げた。


「おうこい!」


パチンと指で合図を鳴らすと、郷間が手にした斧を振り下ろした。

その直下に、俺は魔物を生成する。

生成された魔物は、頭部に強烈な一撃を受けてそのまま死亡。


魔物が状況を判断する前の、訳の分からないうちに強烈な一撃を浴びせて倒す。

これぞ名付けて餅つきパワーレベリングだ。


ネーミングは、まあ何となく餅つきの動きに似ているから。

以上。


「よっしゃ!レベルアップだ!!」


3匹目にして郷間のレベルが上がる。

かなりいいペースだ。

因みに今倒したモンスターは、ゴブリングレートウォーリア。

俺がダンジョンで初めて倒した相手だ。


一応Fランクのボスで出て来る奴なので、普通に戦ったら、今の郷間じゃ1対1で勝つのは不可能に近い。

不意打ちかつ、2発目を考えない重量のある武器でのフルスイングだからこその勝利と言えるだろう。


「へへへ。これならレベル4所か、一週間ありゃ5まで行けるんじゃないか」


残念ながらそれは敵わぬ夢である。

何故なら、5に上がるまで付き合う気などないからだ。

笹島をボコるだけなら、4もあれば十分だろう。


「しっかし、ドロップは出ないんだな。死体も消えないし」


「当たり前だろ」


ダンジョン内の魔物は死ぬと消滅し、アイテムを落とす。

だがそれは魔物の生態ではなく、ダンジョンがそういう処理をしているだけに過ぎない――アクアス談。


当然ダンジョン外――俺の作った亜空間内――で魔物を殺しても死体は残るし、ドロップも手に入らない。


「ファイヤ」


魔法で炎を生み出し、ゴブリングレートウォーリアの体を燃やして灰にする。

焼却処分していかないと、亜空間が死体だらけになってしまうからな。


「んじゃ、次この武器な」


郷間に用意しておいた戦斧を渡す。


「デカいな、おい」


能力者としてのレベルが上がれば、その分身体能力は上がる。

なのでそれに見合った武器をチョイスする事で、より強い敵を確殺できる様になる訳である。


このレベル上げは、如何に格上を1発で狩るかにかかっているからな。

攻撃力は重要だ。


「次からはオークジェネラルにするぞ」


レベルが上がり武器も変えたので、郷間の破壊力は倍近くになっている。

Cランクのモンスターでも行けるはずだ。


……多分。


「アレを一撃かぁ……ちょっと不安なんだけど。まだゴブリンで良くね?」


「駄目そうなら俺が始末するから安心しろ」


「なら安心か」


「じゃ、出すぞ」


指を鳴らすと、郷間が戦斧を力強く振り下ろす。

そしてその先に俺は魔物を生成する。


「おらぁ!」


「ぐあぉぉぉぉぉぉ!!」


オークジェネラルは生まれたばかりだというのに、咄嗟に顔をずらし、頭部への直撃を躱してしまう。

そのため郷間の振り下ろした一撃は、魔物の肩を大きく抉るだけで致命には至らなかった。


……思ったより反応が早いな。


「おおおおおぉぉぉぉ!!」


「ひっ……」


オークジェネラルが怒りの形相で雄叫びを上げる。

それにビビったのか郷間は武器を手放し、その場で尻もちをついてしまった。


これが戦場なら死亡確定だ。

せめて結界ぐらい出せよな。


「はぁ……」


俺は悪友の情けなさに呆れつつも、オークを蹴り殺して止める。


「郷間、武器を手放すのは絶対アウトだぞ」


「わ、わりぃ。ビビっちまった。この事は、クレイスちゃんには内緒にしててくれよな。恰好悪いから」


郷間はクレイスをかなり気に入っていた。

まあ体格こそアレではあるが、顔と声はかなり可愛いからな。


「精霊の前で格好つけても意味ないぞ」


少し前までデレデレしていたアイドルの聖奈なんかより、クレイスの方が遥かに遠い存在だ。

何せ種族が全く別な訳だからな。

もし狙っているのなら、友として諦めろとしか言いようがない。


そもそもあの体は俺の分身が元になってる。

感覚がないとはいえ、郷間が迫って来るとか考えたら気持ち悪い事この上なしだ。


「ふふ、禁断の愛って奴だ」


「その面で、よくそんな気持ち悪い事言えるな」


「男はハートだ!」


「はいはい」


オークにビビッて悲鳴を上げてる時点で、そのハートも怪しいがな。


「じゃあレベル上げ続けるぞ」


次は躱しようのない、ギリギリのタイミングで生成する。

ダメージ的に見て、頭部にさえ直撃すれば一撃で倒せる筈だ。


「おう!ガンガンレベル上げて、クレイスちゃんに強くなった俺を見せてやるぜ!」


レベル5まで上げたとしても、クレイスから見ればワンパンレベルの雑魚なんだが?

正直、多少レベルを上げても何のアピールにもならないぞ。


だが余計な事は口にしない。

やる気をそいでも仕方がないからだ。


「まあ頑張れ」


「おう!」


パワーレベリングは3日程で目標に到達する。

郷間はレベル5まで上げたがっていたが、それは断った。


俺もゲームに訓練、そしてゲームと忙しいのだ。

奴の我儘になど付き合ってられん。


――そして笹島と郷間の、決闘の日が訪れた。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
レベルひとつぐらい上だと立ち回りは素のままだし普通にボコられそう
パワーレベリングって、分からん殺しが事だったのか
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