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規格外のストラテジー~異世界帰りの勇者、知り合いにばれてダンジョン攻略に駆り出される~  作者: まんじ(榊与一)


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第26話 嫌いなタイプ

「!?」


ダンジョンから出て来た俺達を見て、周囲の人間が驚いて固まる。

まあ1時間もかかってないからな。

こんなに早く出て来るとは思わなかったのだろう。


「随分と……早かったのですね」


「ボスの地獄からの遣い(ヘルデーモン)が、最初の広場に居たの」


「まさか……そのまま倒してしまわれたんですか?迂回せずに?」


「しょうがないでしょ。エギールが止める間もなく突っ込んじゃったんだから」


何だろう。

非難されている様な雰囲気なのだが……何か俺、悪い事したのか?


「おい蓮人。速攻でボスを倒しちまったら、他の雑魚のドロップとか経験値が入らねーだろ」


郷間が困った様な顔で俺に耳打ちして来る。


「ああ……成程」


ダンジョンでの利益は、魔物を狩って、そこから得た物を売却する事で得られる。

だがボスを先に倒してダンジョンをクリアしてしまうと、それ以外の魔物は全て消滅してしまう。


つまり、今回姫宮グループは本来見込めるはずだった利益を大きく損ねてしまった訳だ。


「レーンさん。ダンジョン内では他3名の指示に従うよう、お願いしていたと思いますが?」


スーツ姿の女性に、少し刺々しく言葉を掛けられた。

まるで此方が悪いかの様な態度に少しイラっとする。


こう言う静かに嫌味を言って来るタイプって、俺大っ嫌いなんだよな。


「あ、違うんです沙也加(さやか)さん。次の魔物はレーンさんが狩るって事になってて、そこにボスが出て来てしまって。だから彼女は指示を無視した訳じゃないんです」


「聖奈の言う通りよ。まさかボスが最初の広場に居るなんて思わなかったから……私のミスだわ」


玲奈が自分の非だと口にする。

こういう時、見苦しい奴はこっちにひたすらケチをつけ様とする物だが、流石は我が終生のライバル。

その潔さや良しだ。


そんな衛宮姉妹の言葉に、沙也加って女は聞こえない程度に小さく舌打ちする――俺は耳がいいので聞こえたが。

多分、責任を俺に押し付けたかったのだろう。


利益が減った分、こちらへの報酬を減らす腹積もりだったに違いない。


「失礼しました。どうやら此方のミスだったようで」


沙也加と呼ばれた女性が丁寧に頭を下げる。

だが当然、声には心が全くこもっていない。

形だけだと一目でわかる。


ミスの謝罪をビジネスライクにやられると、死ぬ程印象が悪いんだが?


まあ俺の事なんて、実際はどうでもいいって事なんだろう。

レベル6扱いとは言え、所詮弱小企業所属の能力者な訳だからな。


「仕事はこれで終わりのはず。用がないのなら、私はこれで帰らせて貰うが?」


相手にする価値がないので、謝罪はスルーしてやった。

すると沙也加の目つきが一瞬きつくなる。

まあ直ぐに元に戻ったが。


まさか、「気にしないでください」なんて優しい言葉が返ってくると思ったのか?

馬鹿め。

引き籠り気質の俺が、そんな寛大な反応を示すと思ったら大間違いだ。


「予定はここまでになります。お疲れさまでした」


「そうか。では失礼する」


俺はさっさと車へと向かう。

衛宮姉妹や姫宮に挨拶はしていないが、まあいいだろう。

別にそんなに仲良くなった訳でもないし。


「Aランクだってのに、超早かったですね。さっすが蓮人さんです。あ、チョコ食べますか?」


「ああ、貰うよ」


車に乗り込むと、待機していた凛音がチョコレートを差し出して来た。

フルフェイスの口の部分は自在に開け閉め可能になっているので、食事を摂るのには問題ない造りをしている。

俺はそれを受け取り、口に放り込んだ。


「やっぱりレベル6の他の人達って、強かったですか?」


「んー、まあまあかな」


姫宮の剣技には驚かされたが、強さで言うならそれ程ではなかった。

可もなく不可もなくといったレベルだ。

まあ彼女達位なら、たぶん分身でも問題なく倒せるだろう。


「日本最高のレベル6でまあまあですか……ほんっと、蓮人さんはとんでもないですね」


「ゲームしたり作ったりするのに、強さなんて何のメリットもないけどな」


まあ会社設立の資金稼ぎは今の強さあってこそだが、本来の目的には何の役にも立ちはしないだろう。


「相変わらず、何でもゲーム基準なんですね」


「ゲームは人生だ」


ドヤ顔で言ってみだが、よく考えたらフルフェイスの兜をかぶっているので凛音には見えなかった事に気付く。

弘法にも筆の誤りとは、正にこの事だろう。


「そうですか……まあ敢えて突っ込みませんけど」


「まあ凛音には分からないだろうな」


ゲームオタク以外にこの感覚を解って貰おうと思う程、俺も傲慢ではない。

俺には俺の、凛音には凛音の価値観がある訳だからな。


そんなくだらないやり取りをしていると、郷間が勢いよく車に乗り込んで来た。

そして開口一番――


「おいおい、大変な事になったぞ」


「何がだ?あの女にいちゃもんでもつけられたのか?」


「違う違う。そんなちゃちな話じゃねぇよ」


随分来るのが遅かったので、言いがかりでもつけられたのかと思い尋ねたが、どうやら違った様だ。


「出たんだよ」


「出た?」


なんだ?

今世紀最大級のでっかい屁でも出たのか?


「聞いて驚け!日本人初のレベル7が出たんだよ!!」


郷間は興奮気にそう叫んだ。


……うん、だから何?


奴のテンションとは裏腹に、俺は冷静にそう返した。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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