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第23話 美女4人?

「おはようございます」


「おはよう」


「おはようございます」


記者会見を終わらせた翌日、朝一で凛音の車でAランクダンジョンのある場所へと向かう。

予定の30分程前に着いたにもかかわらず、既に衛宮姉妹と姫宮零がスタンバっていた。


早すぎだろ、こいつら。


「あんた、ちょっと着込み過ぎじゃないの?」


全身を黒衣の鎧で包まれている俺を見て、玲奈が眉を顰める。


「備えは万全にするタイプでな。そう言うお前こそ、その恰好でダンジョンに入るつもりか?」


玲奈と聖奈は肌の露出が多めの、ひらひらの付いたアイドルっぽい格好をしていた。

とてもこれから戦い(ダンジョン)に向かう者の姿には見えない。


「ふん。あんたには分からないでしょうけど、あたしたちの着ている物はダンジョンで手に入る稀少な幻糸で作られた特注品なのよ。だからこの格好にも、ちゃーんと意味があるの」


どうやら只のドレスではない様だ。

玲奈が胸を仰け反らせ、此方をドヤ顔で見て来る。


「これは姉さんの特殊能力、ハーモニーの効果を上げる衣装なんですよ」


どういう物なのか聖奈が補足してくれた。

ハーモニーは玲奈の能力だ。

どうやら彼女達の格好は、それを強化する効果がある様である。


「その剣……」


姫宮零が此方の腰辺りを凝視してくる。

どうやら彼女は、俺の身に着けている剣に興味がある様だった。


姫宮零は――一言でいうなら絶世の美女だ。


彫刻の様な寸分の狂いのない完璧なその造形は、俺が今まで見てきた中でも屈指の美貌と言わざる得ない。

衛宮姉妹もリアルにしてはかなり可愛い方だとは思うが、彼女の美しさはその上を行く。


とは言え、姫宮はアイドル向きではない。

整い過ぎたその顔から少し冷たい印象を受けるのと、極端に口数が少なく、また表情も乏しいからだ。

アイドルに求められるであろう愛嬌や朗らかさなんかは、残念ながら彼女からは欠片も感じられなかった。


「剣に興味があるのか?」


「少し」


彼女の格好は――上半身に胸部装甲パーツの付いた着物の様な服を着ており、下はスパッツにブーツという変わった出で立ちをしている。


「手に取っても……いい?」


「悪いが、それは許可できない」


「そう……残念」


姫宮零は断られて少し寂しそうな顔をするが、まあ仕方がない。

自分の武器を他人に手渡すなど、愚の骨頂だからな。


――異世界時代の苦い失敗を思い出す。


実は以前、異世界で美女に魔剣を見せて欲しいとねだられ手渡した事があった。

その時はまだ色恋関係の女性不信に陥っていなかった時期で、つい鼻の下を伸ばしてしまったのだ。


「しねぇ!」


だが手渡した瞬間、豹変した美女は俺をその魔剣で斬り付けて来た。

その女の正体は、勇者としての俺の存在を目障りに思った神殿が送り付けた暗殺者だったのだ。


急な奇襲に俺は対応できず――


「勇者様あぶない!!」


その際、仲間が俺を庇って命を落としてしまう。

俺は自らの愚かさを呪い、以降、自分の武器を誰かに渡す様な真似は二度としないと心に誓っていた。


「ちょっとあんた!姫が触らせてっていうんだから、触らせてあげなさいよ!」


本人が諦めたというのに、何故か玲奈が噛みついて来る。


「お前は私が『義妹を育てろ!エンジェルハニー♡完全版』を貸せと言えば、貸してくれるのか?それならば武器を貸してやってもいいが」


「か……貸す訳ないでしょ!」


当然の反応だ。

プレイ中の神ゲーを人に貸すなど、ありえない。

もし承諾していたら、俺はこいつを軽蔑していただろう。


「だろうな。私も同じだ。大事な魔剣(限定グッズ)を、気安く他人に貸す事など出来る訳がない」


「まあそうですよね。姫も姉さんも、レーンさんに無茶を言ってはダメよ」


聖奈はアイドルにしては比較的常識人だった。

因みに言うまでもないが、郷間の視線は彼女に釘付けである。

こいつもそのうちアイドルオタクになりそうで怖い。


「皆さん。先に宣材写真の方、いいですか」


カメラを持ったおっさんが声をかけて来た。

宣伝用の写真に載るのは、姫宮と衛宮姉妹。

それに俺を含めた4人だ。


――今回のダンジョン攻略はこの4人で行う。


AランクはBランクのダンジョンと比べて、一気に難易度が跳ね上がると言われている。

そのため、本来なら十人以上の大人数で挑むのがセオリーだ。

だが今回はレベル6が4人という過剰戦力という事もあって、このメンバーだけで攻略する事になっていた。


美女4人によるAランクダンジョン攻略。

そう言う触れ込みで、話題をかっさらう目論見なのだろう。


ま、俺は美女所か、男な訳だが。


「いいですねぇ」


4人で並び、カメラマンに言われたポーズになって写真を取られる。

気分はモデルだ。

まあフルフェイスの全身鎧姿で、モデルも糞もないが。


「ありがとうございます。最高の絵が取れました」


「では少し早いですが、そろそろダンジョン攻略の準備をお願いします」


4人全員に小さな革袋が渡される。

見た目は小さいが、ダンジョン産の超高級特殊アイテムで、中には携帯用の食料や水やらが大量に詰まっていた。


Aランクダンジョンはかなり広いそうなので、攻略には数日かかる為だ。


「では、出発をお願いします」


カメラマンは、今度は動画用のカメラを回している。

出発シーンを収めるつもりの様だ。


リーダーである姫宮が無言でクリスタルに手を翳すと、俺達の目の前に半透明のパネルが現れる。

そこに表示される【イエス】をクリックすると、程なくしてクリスタルが発光し、俺達はダンジョンの中へと転移した。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
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