第121話 ツンデレ風
「あ、蓮根君。お兄さんは一緒じゃないの?」
事務所に着いたら衛宮聖奈が声をかけて来た。
大人の姿の分身で乗り込もうかと迷ったが、もうエギールってのもバレてるし、今更子供の姿である事を隠す意味もないと思いそのまま乗り込んだのだ。
「俺に兄はいない。弟のレンコンってのは、あの場で爺ちゃんのついた嘘だ」
「へ?」
「どういう事?」
俺の言葉に聖奈が首を捻り、玲奈が眉を顰める。
「俺が結城蓮人だ」
「え?でも、蓮人さんは大人で……」
「蓮人はあんたと一緒にいたでしょ。まったく……」
自分が結城蓮人だと告げるが、衛宮姉妹は俺の言葉を信じない。
まあ、大人バージョンの分身と一緒に居てやり取りしてるんだから、当然といえば当然か。
「Sランクダンジョン攻略の時に話しただろ、魔王の事。俺はその魔王にやられて、子供に成っちまったんだよ」
「えぇ……」
「冗談抜きで言ってるの?まあ仮にそうだったとして……だったら、私達が話した蓮人は誰だった訳?ちゃんとあたし達の事、覚えてたわよ」
「これだよ」
俺は彼女達の目の前で分身を生み出して見せた。
生み出したのは子供バージョンだが、そこから大人へと姿を変え。
そして最後は、女体化してエギールレーンの姿へと。
「「——っ!?」」
その様子に、衛宮姉妹が目を見開く。
「因みに、後ろの三人は精霊だ。俺の分身に憑依してる」
ついでに精霊も紹介しておいた。
普通に。
「その人達がですか!?」
「ふぉっふぉっふぉ。フーガじゃ」
「土の精霊でぇ、魔法少女のクレイスですぅ」
「炎の精霊イグニスだ……」
もう正体ばれてるわけだし、その状況でこいつらの事を隠す意味もないからな。
「あら。精霊なんて物まで使役してるのね、蓮人さんは。流石、兄が認めた人だけあるわ。あ、挨拶しておきますね。私はシェンの妹、シェン・ニャンニャンよ」
新顔——シェン・ニャンニャンが話に割り込んで来た。
シェンの妹はナイスバディの黒髪女だ。
顔立ちもかなり良く、男にモテそうな見た目をしているが、俺には一切響かない。
なぜなら3次元だから。
知ってるかお前ら?
3次元の女はオナラやゲップは元より、うんこやションベンまでするんだぜ?
全く恐ろしい話だ。
2次元の天使ちゃん達とはやはり比べ物にならない。
後、なんだろうか……こいつからは仄かに、何か邪悪なオーラを感じる。
まさか魔王の手先とかじゃないだろうな?
「俺は結城蓮人だ。挨拶も済んだ事だし、迷惑だからさっさと国へ帰れ」
「そういう訳にもいかないのよねぇ。あたしも一族の血を引く女だから、恋愛や結婚に興味がなくても……それでも、貴方の子種を貰わないと」
子種と来たか。
下品極まりない女である。
下品な女に靡くのなんて、エムッパゲの王子様ぐらいのものである。
「ちょっとあんた!人の話に割り込まないでよ!」
「あら、ごめんなさい。一応自己紹介だけは先にしておきたかったの。じゃ、お話の続きをどうぞ」
ニャンニャンが、噛みついて来た玲奈をやんわりと躱す。
どうやら、ひょうひょうとした感じの人物の様だな。
「で、つまり……本当の本当に、あんたが本物の蓮人って訳ね」
「ああそうだ」
「魔王にやられたって言ってましたけど……大丈夫なんですか?その……呪いとか、そういうのなんですよね?」
「それなら問題ない。これは呪いって言うか――」
俺は今の状況を、掻い摘んで衛宮姉妹に説明する。
「強化、ですか。呪いじゃなくって……」
「ああ。目的はおそらく……強くなった俺の力を手に入れる事だろう」
魔王は殺した相手の力を奪う能力を持っていた。
勇者である俺をわざわざ強化したのは、強くなった俺を喰らうために違いない。
より効率よく力を得るために。
もちろん、そんな真似は絶対させないが……
「魔王が本当にいて、蓮人の力を手に入れるために強化した……ねぇ。ちょっとにわかには信じられない話だわ」
「まあ、別に信じる信じないはどっちでもいいぞ」
彼女達に何か期待してる訳じゃないからな。
信じないなら信じないで、それだけの話である。
「べ、別に信じないなんて言ってないわよ!勘違いしないでよね!」
なにそのツンデレ風返し。
あと、絶対使い方間違ってると思うぞ。
玲奈の唐突なツンデレ芸に、俺は心の中で突っ込みを入れるのだった。
拙作をお読みいただきありがとうございます。
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