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第111話 勧誘

「実は私、ゲーム会社を立ち上げるつもりなのよ。ギャルゲー会社ね」


玲奈がドヤ顔でそんな事を言ってくる。


「へぇ……」


もちろん知っている。

何故なら、その案を先に考えたのは俺だからだ。

人の真似の癖に、まるで自分初みたいな顔しやがって。


ちょっとイラっとしたが、まあ流しておく。

大人の余裕で。

所詮ちびっこだしな。


まあ今は俺の本体もちびっこな訳だが、それはどうでもいいだろう。


「あんたもギャルゲーやってるんでしょ?」


「無論だ。ギャルゲーは俺の青春だからな」


「やっぱりね。だったら私の立ち上げる会社で働きなさいよ。あんただって自分の手でゲームを生み出したいでしょ?そう……私と一緒に至高のギャルゲーを生み出すのよ!!」


がたんと音を立て、玲奈が椅子から勢いよく立ち上がって叫ぶ。

丁度頼んだメニューを持ってきた店員さんがぎょっと驚いたが、なんとか手にした品を落とさずに踏ん張る。

興奮したのは分かるが、迷惑なちびっこである。


「あ、ごめんなさい」


「すいません」


それに気づいた衛宮姉妹が慌てて店員に謝った。


「まあとにかく、私と一緒にゲーム会社を立ち上げるわよ。資金の事は気にしなくていいわ」


店員さんか頼んでいたドリンクを受け取り、少し落ち着いた感じで玲奈が勧誘してくる。


「姉さん。いきなり勧誘なんかされたら蓮人さんが困るでしょ。今は能力者として働いてるんだし」


「攻略とゲームクリエイターで二足の草鞋を履けばいいだけじゃない。あ、いい事思いついた!あんた、姫宮グループに移籍しなさい。そうすれば色々便宜も図りやすいしね。こう見えて私達、結構高い立場にいるんだから」


玲奈がぐいぐい勧誘してくる。

移籍もくそも、今の俺は姫宮グループにも所属してるんだがな。


「あ、それはいいかも!」


何故か聖奈が、玲奈の案に同調する。

ゲーム会社は兎も角、同じ攻略会社に入る事に何の意味があるというのか?


……というか、子供の頃ちょっと関わった程度の相手に誘われたからって、誰が会社移籍するんだよ。


常識的にあり得ないだろうに。

慎重な人間ならまず間違いなく詐欺を疑うぞ。

まあ俺は別件でこの二人の事を知ってるから、そんな事はないって分かってはいるけど。


「決まりね」


「いや気まりじゃねーよ。今のところは幼馴染がやってる会社だから移る気はないし、ゲーム会社も別口から誘われてるからな。近いうちに会社を設立するらしいから」


誘われてるって言うか、正確には自分で立ち上げるつもりな訳だが……


世間的にはエギールとして立ち上げるので、勇気蓮人としては誘われたって事にしておく。


「なんですって!一体誰が!?」


俺がゲーム会社に勧誘されてると言ったとたん、玲奈が眉根を釣り上げた。


「エギール・レーンに誘われたんだよ」


「な……ななな……エギール・レーンですって!?あいつ……私の所からヘッドハンティングするなんてやってくれるじゃないの!」


いやお前の会社に入ってないから、別にヘッドハンティングでも何でもないだろ。

勝手に初期メンバーに加えんな。


「エギールさんに誘われたって……ひょっとして、蓮人さんの所属してるのってフルコンプリートだったりします?」


「ああ。社長の郷間武が幼馴染だ。腐れ縁と言ってもいい」


「エギールさんと職場まで同じ……あの、ひょっとして……その……蓮人さんって、エギールさんと付き合ってたりしま……す?」


「いや全然」


聖奈がとんでもない質問を投げて来た。

自分とセルフ恋愛とか、そんな気持ち悪い事をする趣味はない。

女になって俺の子を産むとか言い出した、シェン並みに気持ち悪い質問である。


「そ、そうなんですね。良かった」


「良かった?何が?」


「ああいえ、気にしないで下さい。あ、蓮人さんはどういう感じの女性が好みなんですか?」


「俺?俺は三次元に興味はない」


好みを聞かれたので、俺はどや顔で返した。

リアルの女なんてものはノーサンキューだ。

俺が愛するのは二次元のみよ。


「あんた、そんなんじゃ絶対結婚出来ないわよ」


「そんなものは不要!」


一生独身。

大いに結構。

勇気家の系譜は俺が断つ!


まあそんな決意、親の前では絶対言わないけど。

言ったら泣かれるから。


「あんたはほんと、突き抜けてるわね」


呆れた様に玲奈が言う。

その言葉は誉め言葉として受け取っておく。


◆◇


「蓮人さん、かっこよくなってたね」


勇気蓮人と別れての帰宅途中、衛宮聖奈が姉の衛宮玲奈に問いかけた。

場所はタクシー内だ。


「そう?普通じゃない?」


「もう、姉さんったら素直じゃないんだから」


「あんたが色眼鏡で見過ぎてるだけよ。あれぐらい、芸能界ならゴロゴロいるでしょ」


「そうかなぁ?今まであったどんな人達よりも、蓮人さんが一番かかっこいいとあたしは思うんだけど」


「それが色眼鏡だったの」


アイドル活動をしている衛宮姉妹は、仕事で見目麗しい男性アイドルと仕事で接触する機会が多い。

勇気蓮人の見た目は悪くなかったが、流石に今までで一番というのは色眼鏡入り過ぎと、玲奈は妹に呆れてしまう。


「でも、振られちゃったね」


衛宮聖奈が言う振られたというのは、姉の玲奈が立ち上げるゲーム会社の勧誘の事を指す。

喫茶店では散々自分の立ち上げる会社の方がいいからと勇気蓮人を誘った玲奈だったが、結局最後までその首を縦に振らせることは出来なかったのだ。


まあ当たり前の話ではあるが。

本人の立ち上げる会社から、本人を引き抜けるわけもない。


「ふん。エギールに義理立てしてるだけよ。そのうち考えも変わるわよ」


どうやら衛宮玲奈は勧誘を諦めた訳ではない様だ。


「ふふ。姉さん。蓮人さんが会社に入る事になったら、あたしもその会社に入れてね」


「あんたは全然ゲームをやんないでしょうが」


「だって、私だけ仲間外れにされるのはいやなんだもん」


思い出の場所に久しぶりに向かった衛宮姉妹。

そこで思わず果たした思い出の相手との再会に、二人は心弾ませる。


勇気蓮人が、エギール・レーンの中の人とも気づかずに。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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