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第11話 広告塔

「あ、蓮人。次の仕事決まったから」


マイエンジェルを見事にクリアー。

さあ次のキャラはと考えていると、郷間が訪ねて来て言った一言がこれだ。


「早くね?」


ある程度は協力すると、言ってはいる。

だがこいつが抱えていた問題を解決したのは、昨日の事だ。


昨日の今日でもう仕事とか、俺を過労死させる気かこいつ?


いやまあ、この程度で死んだりは絶対しないけども。


「いやー。協会に行ったら、丁度破格のダンジョンを薦められちまってさ。ま、クリアさえ出来れば大儲けだ」


協会ってのは、ダンジョン関連を管理する国の組織だ。

そこが破格で押し付けたって事は、きっとろくでもないダンジョンなのだろう。


ダンジョンには当たりはずれがある。


難易度を示すランクは――協会所属の特殊能力者が鑑定――中に居る魔物のだいたいの強さで決まると言われている。

逆に言うと、それ以外の要素は完全に無視されているという事だ。


――ダンジョンは画一化された形状ではなく、広さや地形は基本まちまちである。


例えば、毒の瘴気が立ち込めている様なダンジョンだと、対処するためにそれ専用の能力者や装備なんかが必要になってくる。

更に、持ち込んだ装備なんかは毒で腐食して使い捨て状態になりかねない。


当然そう言ったダンジョンでは経費が嵩んだり難易度が高くなるので、必然的に売れ残って、値段も下がるという訳だ。


「どう考えても不良物件だろ?」


「まあな。けど、俺達の会社には何でも出来るスーパーエース社員がいるからな」


「契約社員だ」


永久就職するつもりは更々ない。

あくまでも郷間んとこの会社――フルコンプリートが順調になるまでの腰かけである。


「はっはっは、まあ今はそう言う事にしておこう」


郷間は人の話を軽く流してしまう。

まあ辞める時は奴がなん言おうとすっぱりやめるから、別にいいけどな。


「で、どんなダンジョンなんだ?」


「聞いて驚け!溶岩地帯のダンジョンだ!」


……ん?

……溶岩地帯?


「ごめん、良く聞こえなかった。もう一回言ってくれ」


「おいおい難聴か?溶岩地帯だよ!よ・う・が・ん・ち・た・い!」


「……成程。そりゃ破格になるわ」


聞くからに糞熱そうなダンジョンだ。

溶岩に囲まれた場所とか、環境としては最悪の部類だろう。


「おう!本当ならCランクダンジョンの相場は軽く1億以上なんだが、なんとたったの5000万だったんだぜ!」


「よくそんな金があったな?」


以前の二つは合わせて2000万だ。

それすらも、一部借り入れしてって話だったはず。

郷間は何処からそんな金を捻り出したんだ?


「ははは!振り込みは来週だから、それまでにクリアすればいいのさ!」


「見切り発車かよ」


ランクもDを飛ばしていきなりCだし。

こいつ……万一俺がクリアできなかったら一体どうするつもりだ?


そのいい加減っぷりから、我が悪友が絶望的に経営に向いていない様に思えて仕方がない。


「俺はお前を信じてるぜ!異世界帰りの勇者蓮――げふっ!?」


「その呼び方はすんなつっただろ」


郷間の脛を軽く蹴っとばしてやった。

昔から人の話を聞かないマイペースな奴だったが、6年経っても全く変わっていないから困る。


「いててて、もうちょっと加減しろよな。で?いつ行く?明日なんかお日柄も良くって、て感じだぜ?」


「どこがだよ。明日は降水確率100%だぞ?」


今日も土砂降りで、この雨は明日も続くと天気予報にあった。


こういう雨の日は部屋に籠ってゲームに限る。

濡れると分かっていて、外に出かける奴はアホだ。


「ははは、ダンジョン内に天気は関係ないって。それに、濡れても溶岩地帯ならすぐ乾くさ」


どうやら郷間は雨などお構いなしな様だ。

まあ一週間以内って期限があるから――アイテムの売買なども考えると、実際はもっと短い――しょうがないか。


「わかったよ。けどいいのか?」


「ん?何がだ?」


「俺は溶岩でも平気だけど、お前らはきついんじゃないか?」


特殊能力者は、身体能力も強化される。

とは言え、郷間達はゴブリンすら倒せない有様だ。

溶岩地帯で真面に活動できるとは到底思えない。


「何言ってんだ?俺達はお留守番だぞ。当たり前だろ?」


「……」


どうやら、今回は俺に丸投げの様だ。


「それと、記者が来ると思うから明日はちゃんとした格好しろよ」


「は?」


「FやEランクみたいなダンジョンと違って、Cにもなると記者が取材に来るんだよ」


成程。

ネットとかでも、ダンジョンの情報は良く流れている。

そう言った情報源は、記事だったり公式発表だったりする物だ。


それを考えると、ある程度ランクの高いダンジョン攻略に取材がくるのは必然と言えるか。


「何せ無名の新人による、Cランクの単独攻略だ!正にビッグニュース!わが社にスポットライトが集まるぞ!」


郷間が鼻息を荒くする。

どうやら宣伝効果を期待している様だが、人前に晒されるなど冗談ではない。


「身バレは嫌だから、変装して偽名を使うぞ」


「は?」


「俺の個人情報を衆目に晒す気はない。それがダメだってんなら、ダンジョン攻略はしないぞ。楽しい借金ライフをエンジョイしてくれ」


「ぬぬぬぬぬ……ま、いっか。謎の能力者ってのも、ミステリアスでいいしな」


俺の言葉に少し唸ったが、郷間はあっさり了承する。

まあ広告塔は、勇気蓮人という人間じゃないと駄目だって理由はないからな。


「で?どんな変装するんだ?」


「こんな感じだよ」


俺は身に着けていた指輪に魔力を込め、異世界時代の格好になってみせた。

コスプレっぽくなってしまうが、これなら俺の顔が見られる心配はない。


「おおお!いいじゃん!いいじゃん!」


郷間の反応は上々だ。

何だかんだで、こいつはこういうの好きだからな。


「名前はそうだな……ま、エギール・レーンで行くとしよう」

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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