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雑文集  作者: 白内 十色
4/7

拳銃のための

 あるところに泣いている子供がいるとします。世の中の理不尽さに打ちひしがれ、前を見ても希望をそこに見出すことが難しくなってしまったような、そんな子供です。

 そこに旅人が現れて、子供に一丁の拳銃を渡します。日本では御法度、アメリカでも子供が拳銃を持つことは簡単にできることではないでしょう。ともあれ、それは拳銃です。

 別に拳銃である必要はないのです。それは例えば空から降ってくるマッコウクジラでも、道の角からこんにちはと声をかけてくるエイリアンでも、何でもよいのです。子供が得たのは、ただの金属の塊であるだけではなく、ひとかけらの奇跡でした。苦しいまま停滞した日常に新しい風を吹き込む奇跡です。

 彼は手に入れた拳銃でいじめっ子の頭を打ち抜くことができます。あるいは、自分のこめかみに拳銃を向けて引き金を引くこともできます。けれど彼は、拳銃を勉強机の引き出しに入れてそっと閉じ、そのまま学校に行くことができます。

 学校に行った子供は、いつもより少しだけ勇気があり、瞳にはわずかながらの自信が宿っていることでしょう。拳銃を使って何をしようといったイメージがあるわけではないけれど、拳銃があるという小さな奇跡は彼の目を前に向けるでしょう。

 ことによると、子供はその後ドラマチックな冒険の数々に遭遇するでしょう。なんでもない日常が頭の中でドラマチックな冒険に変わっていくということもあるかもしれません。そうした冒険を潜り抜けた子供は、精神的に少しだけ成長していることでしょう。

 さて、これまでは、物語の話です。現実ではこうはいきません。不法に入手した拳銃はあっという間に警察に見つけられ、少年は良くて大目玉でしょう。ドラマチックな冒険も、普通は起こることではありません。

 けれど、物語の中だけは、少年が救われてもよいではありませんか?


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