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紙幣の話
「それは私の息子たちがそれぞれ十と十二のころ。春の日だったと記憶している。子供には月の始めに五千円ずつを与える決まりでね、しかしその日はちょうど一万円札しか私の財布には入っていなかった。上の子はその時買いたいものがあったようで、私が小遣いの日を先送りにしようとすると、強く反対した。それで、一万円札を半分にしたものでいいからおくれと言うんだ。そうしてその月彼らの手元には、半分にされた紙切れが渡ることになった。上の子は賢い子供で、半分になった紙幣は銀行に持っていくと書いてある半額の値段のお金に引き換えてくれることを知っていた。私から紙を受け取ったその足で銀行に行き、文具やら何やらを買ったそうだ。下の子はそんなことは知らないから、半分のお札を折りたたんで、小さな紙飛行機にして橋から飛ばした。五千円分の紙飛行機だ。彼はその後三度寝て三度起き、思い立って一枚の絵を描いた。種を飛ばす蒲公英の絵だ。これがたいそう出来が良く、市のコンクールで大賞をとった」