黒に変わった瞬間
いよいよ検査結果が出る
いくつもの、病院を周り様々な検査をした
検査、検査、検査
俺の身体はそんなに悪いのか
あぁ、不安が募る
でも、後ろを向いてもなにも良いことないな
大きな病気だったとしても
乗り越えて、笑い話にしてやろう
コンコン
不安な思いを抱え、俺はドアをノックした
「どうぞ」
「失礼します」
「藤谷 哲哉さん、お久しぶりです
体調はいかがですか」
「えぇ、まあ日によっていい日も悪い日もあります」
「ん、う〜ん」
先生は重たい雰囲気で、黙り込んだ
「先生?検査結果どうでしたか?」
「う〜ん、今から話すこと、諦めないで
難しいだろうが受け止めて欲しい」
「え?そんなに悪かったですか?癌とか?
すぐ手術が必要ですか?」
治療をすれば治る病気だとばかり
俺は思っていた
「え〜ぇ、あらゆる検査をしたところ
藤谷さんの病名は"筋ジストロフィー"という
難病です」
「え?」
目の前が真っ暗になって
なにも言葉が出なかった
先生は淡々と話して行く
「筋肉が徐々に壊れて、筋力が衰えていきます
心臓や呼吸等の内臓機能に症状をきたす場合も
あります、専門の病院を紹介しますから
そちらで、治療していきましょう」
「・・・・・」
「難病・・・筋ジストロフィー・・・
俺はどうなるのか?・・・先生治療で治るん
ですよね?」
「・・・現時点で根本的な治療薬はありません
ただ、日々研究の進歩により薬の開発が進められています
今より、悪くならないために専門の病院で
しっかり治療をして行きましょう」
「・・・・・はい」
病室を出ると、足がガクガク震えた
息が詰まって止まりそうになった
今より悪くならないように・・・
俺はてっきり、手術すれば治る
薬を飲んだら治る病気とばかり思っていた
俺は動けなくなって、死ぬのか?
悪いことばかり思いつく
お金持ちになりたいなど高い夢を持っている訳じゃない
結婚して、子どもを産んで、おじいちゃんになって
ただ、幸せな人生を送りたい
その俺のちっぽけな夢が今日、儚く散った気がした
いや、最初から夢の種などなかったのかもしれない
黒い世界への扉は、すでに開いていた