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人間×ドラゴンのハーフの少年、地球侵略ドラゴン達と戦う-ハーフドラゴンのスバルくんっ!-  作者: アッキ@瓶の蓋。


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I Can Not Survive If I Do Not Fight -蠱毒より生まれし龍-(3)

ー前回のあらすじー

 エクレルが、シグマズルカの力でリュウシントとなった


 ‐‐‐‐スバル・フォーデンが、溶岩に飲まれた。


 その光景を引き起こしたリュウシント、主役龍シグマズルカは茫然としていた。


 なにせ、スバル・フォーデンはこの星を人間と共に歩もうとしている黒龍(マヌス)にとって、一番重要視している人物だ。

 その上、特殊なベルトを使えば他のドラゴンと融合して、さらに強力な存在となることが出来る。

 

 そんな相手だからこそ、シグマズルカは油断することなく、スバル封じを行った。


 スバルの地龍としての力の源である地球を使えなくし、その上でマグマという形にて相手の逃げ場を封じる事が出来た。

 それでもてっきり、逃げるものと思っていたために、あっさりとマグマの中に突っ込んでいく彼を、シグマズルカは変だと思った。



「えっ、えっと、マグ様。これで終わり、ですか?」

「……ん? あぁ、そうですね。スバルという相手を倒し、残るは鏡暴龍アルルカンに……そう、まかせればいい(棒)」


 ともあれ、これで終わりである。スバルはマグマに飲まれ、死んだ。

 マグマはもう冷え固まり、今や彼の冷たい墓標となっている事だろうと、口にしたら棒読みになってしまうような、楽しくて仕方がない事を考えつつ、シグマズルカは考えを纏めた。


 次に考えなければならないのは、とてつもなく弱気に作ってしまったラグリマを宥めることである。

 

「(あぁ、この棒読みは直さなければなりませんね。母に褒められて、それでこの棒読みでは嫌われてしまいます)」


 「いけない、いけない(棒)」と、シグマズルカは心の中で反省する。

 反省するとは言っても、その直前の言葉が棒読み口調だったため、自分で考えるのもなんだが説得力がないと、シグマズルカは苦笑する。


 ‐‐‐‐シグマズルカは、感情表現が苦手である。


 自己評価的に何故なのかを考えれば、それはあまりにも自分自身が多くの分身と共に生み出されたからであると、シグマズルカは考える。

 そのせいで、感情を上手く表に出せず、楽しいのにも関わらず、このような棒読み口調とつまらなさそうな顔になってしまう。


「(アルルカンの踊り、すっごく炭素良かったのに、それが上手く表現できずに、残念です。

 まぁ、そんなアルルカンも、既に私になっているでしょうが)」


 後は時間が来て、ラグリマの幸福(じんかく)が消えるのを待ち、そうしてシグマズルカは最強軍団となって、この地球を侵略しようと考えていた。


「さぁ、ラグリマ。後は時間を待って‐‐‐‐」

「あ、あれれれ?!」


 ラグリマを困惑させまいとしていたのに、彼女は勝手に困惑していた。

 無理もなかろう、彼女の足が徐々に消え始めていたのだから。


「ラグリマっ?!」

「たっ、たすけ‐‐‐‐」


 ラグリマの身体はそのまま消えていき、そして彼女が居なくなる。

 シグマズルカは残った、彼女が巻いていた巻物を手に取った。


「残ったのは(まき)(もの)だけ……。破壊された訳ではない、卵はないのだから。

 つまり基となったモノだけが、消えた……そんな事が出来る、のはっ!」


 キッ、と彼女はマグマの方を睨みつける。

 マグマの方を見ると、スバルが巻き込まれた部分辺りが、徐々にヒビ割れていく。


「‐‐‐‐なるほど、そう来ましたか。能力を全封じしたつもりが、一番重要な能力を忘れていましたね」


 あの時、地球との接続を切って、マグマをぶつけていたのだが、それに対してなんでスバル・フォーデンが無策にマグマに突っ込んだのか。それがシグマズルカにようやく理解できた。

 当初はただ無謀にも死を選んだと思ったが、どうやら‐‐‐‐その真の目的は、距離を詰める事。


「(そもそもラグリマは、光龍の卵をエクレルと融合させることによって生まれたリュウシント。そして、スバルもまた、他の龍、フレアリオンやユカリなどと合体していた。

 それらの情報を考えるに、きっとスバルは‐‐‐‐)」


 ばんっと、冷え固まったマグマを破り割り、見覚えのない人物が現れた。



 金色と黒の二色が絡み合うようにして混ざり合ったツインテールヘアーの、2m越えの美女。

 手足がモデルのように長く、背丈と同じくらい長い尻尾の先端には、木々なんて軽々と伐採できそうな斧と融合していた。ついでに言えば、爪もまた斧のように鋭く尖っていた。


【【完成っ! 僕/あたしの名は、【インドラ】ちゃん! 雷の英雄神ちゃんだよぉ!】】


 現れたのは、スバルとエクレルの合体した姿‐‐‐‐雷を操る雷神の名を関した、合体系であった。



 それを見て、シグマズルカは顔をしかめつつ、懐からベルトを取り出した。

 スバルの持っているのと同じく、真ん中に龍の紋章が刻み込まれたベルトである。


【【僕/あたしと同じ、ベルト?】】


 違いがあるとするならば、スバルが持っているのは真っ白のベルト、一方でシグマズルカの持っているのは真っ黒のベルトと言ったところだろうか?


「覚醒ベルト、だっけ? 確か、このベルトの名前は?

 これを付ければ、欠けている(さい)(のう)を補填してくれる。私や君のように、才覚に乏しい者の才能を引き起こし、完全なる龍としての力を与えてくれる、本当に素晴らしい(どう)()ですよね」

【【どうして、あなたが覚醒ベルトを……?】】


 インドラ‐‐‐‐スバルとエクレルの頭に浮かんだのは、この覚醒ベルトを作ったリチャードの事だった。

 スバルの父、ダットンの家に居候の形でいる彼が裏切った、もしくは元々このナイトレス・ハーバーシティに住んでいた彼の研究資料かなにかから複製した?


 1人に合体した2人の脳内でクルクルと思考を巡らせるも、その答えは当人から発せられた。


「凄いでしょう、この覚醒ベルトは。あなたのベルトのアイデア、使わせてもらってますよ。

 なにせ、星龍にして私の腹心である、【忠臣龍フォルセット】の手によって作られた、特別製」

【【フォルセット……?】】

「あなたが、それを使うならば‐‐‐‐こちらも使わざるを得ませんね」


 ガチャッと、自分の腰に真っ黒のベルトを付ける。それと共に、シグマズルカが真っ黒の光に覆われる。


 黒い光が彼女の身体を覆い、腕や足などの四肢全てに龍の鱗が表れ、天にそびえる2本の黒い角が生えていた。

 先ほどよりも龍としての要素が増し増しになったシグマズルカは、足元にあった巻物を手に取ると、彼女の手の中で巻物は剣へとその姿を変えていた。


「完成系となったシグマズルカの力、今こそ見せてあげますよ」


 ベルトを付けて、龍として更なる成長を遂げたシグマズルカが巻物剣を振るう。

 振るうと共に、墨が辺りに飛び散り、その一滴一滴が墨の虎となって、インドラを襲う。


【【それじゃあ、やっちゃうよぉ!】】


 インドラがそう言うと共に、雷神となった彼女の手に弓が、電動コイルが弓に巻き付いた弓を手にしており、弓の先端には電気がビリビリと流れる銃口が取り付けられていた。


【【いっくよぉ! インドラちゃん特製の、レールガンアロー!】】


 インドラが弓を引くと共に、巻き付いた電動コイルに電力が溜まる。溜まりつつ、弓から電気が地面を伝いながら、シグマズルカの放った墨の虎を迎撃する。

 雷はインドラが弓を引くと共に、どんどんとその威力が増していき、雷は人の姿になったり、動物の姿になったりと、様々な形となってシグマズルカを襲っていた。


「雷で(こう)(げき)しているようですが、ラグリマの"墨を実体化する程度の能力"を舐めないでくださいよ」


 シグマズルカはそう言って、巻物剣を振るう。


「‐‐‐‐ふんっ! そりゃあ!」


 巻物剣を振るうと共に、墨から黒い塊人間が出現する。黒い塊人間はインドラへと一直線に向かってくるが、弓から放たれる余剰分の雷によって、近寄る前に倒されていく。

 

【【いっくよぉぉぉぉ、インドラ・ブレイクっ!】】


 そう言って、インドラは引き切った弓を、そのまま‐‐‐‐



 ‐‐‐‐剣のように、横に振るう。




 振るわれた弓は、雷の斬撃となってシグマズルカへと襲う。

 墨を集めて慌てて防ぐことで、シグマズルカはダメージを受けずに済んだ。


【【それそれ! まだまだ、いっくよぉぉ!】】

「それ、(かん)(ぜん)に、弓として使い方が違う気がしますが?!」


 弓を振って電撃の斬撃が上から、下から、右から、左からと、不規則にシグマズルカへと襲う。

 シグマズルカは巻物剣を地面へとぶっ刺す。ぶっ刺すと共に巻物剣が開き、描かれている墨の虎達が現れ、1つに纏まっていく。

 そして巨大な墨の虎になると、雷撃の衝撃波を物ともせず、その大きな肉球付きの手をインドラの頭上へと上げる。


「やれ、墨で出来た黒い白虎。奴を踏みつぶせ」

「ガォォォッォ!」


 黒い墨で出来ているのに、白虎という矛盾を抱えている敵は、そのまま勢いよく手を振り下ろして----


【【‐‐‐‐レールガンっ!】】


 インドラは先ほどまで剣のように振るっていた弓を持ち替え、そのまま墨の白虎の眉間めがけて、弓のレールガンを放っていた。

 放たれた弓矢は光の弾丸となって、白虎を撃ち滅ぼしていた。


【【見たかっ! これぞ、レールガンアローの力だよぉ!】】


 どやぁ、とインドラはレールガンアローを構えて、シグマズルカに見せつける。

 墨へと戻されて、大量の墨を被って真っ黒になってしまったシグマズルカは「羨ましいなぁ」と吐露する。


「その武器、実に羨ましいなぁ。実に強い。

 ‐‐‐‐やっぱり、世界ってのは理不(りふ)(じん)ですよ」


 そう言いながら、龍の手を地面へと触れて、


「けれども、負けるわけにはいきませんっ」


 ぐるっと、回転する。


 すると地面は、地球の回転速度以上の、目に見える速度でクルクルと回る。

 固定されていないバス停の標識や機器などが飛び、インドラも立っているのがやっとの状態だ。


【【またっ?! 地面とのリンクが切れた?! けれども、雷は使える!】】


 弓を手放し、両手に大きな爪を出すインドラ。その爪で地面に刺して体勢を整え、そのまま地面に向かって電気を放出する。

 雷は地面を辿り、回しているシグマズルカのもとへと向かい、そのまま地面につけている彼女の手を焼き焦がす。


「~~~っ!」


 地面から手を離した瞬間、インドラは使えるようになった重力によって、シグマズルカを空間に固定する。


「しまっ‐‐‐‐!」

【【これで、終わりだっ!】】


 そのままインドラはレールガンアローを、先程の剣のように構え、薙ぎ払う。


【【‐‐‐‐レールガン・スラッシュ!】】


 (ガン)なのか、(スラッシュ)なのか良く分からない技名は、放たれた雷にも表れる。

 斬撃のような鋭さ、そして銃撃のような回転力を持ち、回転しつつ斬撃の威力は増していく。


 シグマズルカに当たる頃には、その威力は地面に大きな跡をつけ、そして彼女の腹に大きな風穴を開ける。


「主役に……ならねばぁ……」


 ----轟音。


 爆発音と共に、黒い煙が上がる。

 黒い煙の中から、いくつか物体が飛び出してくる。


 壊れた、黒いベルト。

 星模様の《星龍の卵》、白い光の描かれた《光龍の卵》。

 そして、《ジグソーパズルの欠片》。


 黒い煙と共に出てきたのは、シグマズルカが倒された証だった。



【【よっしゃー! やったねっ!】】


 インドラは喜び、ベルトを外す。

 エクレルは勝利に酔い、スバルもまた勝利に喜んでいた。


「(終わったんだな……)」


 見ると、宙を飛んでいた地面は元の場所に戻るかのようにはまっていき、溶岩も消えている。

 地獄のような光景から一転、元の近未来都市たるナイトレス・ハーバーシティの面影に戻ろうとしていた。



「おーい! スバルくん、エクレルちゃん!」

「2人とも、無事ですかっ!」


 遠くの方から走って、ユカリとマイヨールも近寄ってくる。

 どうやらあちらの方も、無事にリュウシントを倒せたようである。


「いこうっ! スーちゃん!」

「あぁ、だな」


 スバルもまた、2人に色々と話したいことがあった。

 確かな強敵たるシグマズルカを倒せた高揚感というモノだろうか、中学生の少年たる彼がごく普通に持っているだろう感情だった。


 スバルとエクレルの2人は、ユカリとマイヨールの方に向かって歩き出し、そして‐‐‐‐





「‐‐‐‐戦いは、まだ終わりませんよ?」


 ガシュッ、とスバルの腹を、"シグマズルカの手"が貫いていた。


 そんなシグマズルカの手の先には、なにもなかった。

 ただ、龍鱗の手だけが、動き、スバルを貫いていた。



「スバルくん?!」「スーちゃん?!」


 ユカリとエクレルが動揺する中、マイヨールはすぐさまヨーヨーをスバルへと巻き付けた。

 それによって、シグマズルカの手を逃がさない作戦、である。


「もう、遅いけどね」


 シグマズルカはそう言い、そして‐‐‐‐


【Subaru-Foden! She Ran Through Time】


 ‐‐‐‐スバル、そしてシグマズルカの手。さらにはそれを逃がさないようにしていたマイヨールの姿が、


 この世界から消えた。


〇雷龍インドラ

…スバル・フォーデンが覚醒して、エクレルと混ざることで生まれる姿

 攻撃範囲が広く、武器である電動コイルを巻いてある弓を用いる

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アルファポリスでも、連載中です cont_access.php?citi_cont_id=836368854&s
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