VS Maf-Delta -黄金の最高幹部ー(4)
前回、スバルくんが覚醒ベルトを使って……?
どうなるのかは、今回をお楽しみに!
マフデルタは、目の前の岩の壁にイラついていた。
目の前の壁が、全然壊れないからだ。
蛇髪の対消滅砲を放っているのだが、これはあまり見せたくないのと同時に威力も弱いからだ。
恐らくだが、いつものライフル銃ならば、一発で破壊できるのに、威力が弱いせいで、スバル・フォーデンが地面の壁を補充するスピードに勝れない。
結果として、いつまで経っても、こんな壁一つ消し去ることが出来ないという現実に、イラついていたのだ。
「(もう、面倒くさいですね。えっと、腹立たしい的な?)」
せめて、あの変な装置で出せなくなったブラックホールを出せれば、中にある対消滅弾の銃火器が使えるのに、と思いつつ、マフデルタは壁を壊そうと必死だった。
「(なんか壁の向こうで、ペチャクチャペチャクチャと話し込んでいるみたいで、こっちの事を無視してっ!
私はドラバニア・ファミリーの金メダルを与えられた、皇帝直属の最高幹部なのにっ!)」
もう許さない、マフデルタはそう決意すると、蛇達の攻撃を止める。
そして蛇達を一か所に、そう巨大な大砲を撃つ準備を始める。
蛇達の放つ、小さなブラックホールが近くにあることでぶつかり合い、肥大化していく。
「《マフデルタ・ヤマタノオロチキャノン》っ!」
マフデルタが力んだ瞬間、蛇達は肥大化したブラックホールを、目の前の壁に向かって放つ。
今まではただの小さな点だったブラックホールは、蛇達の力が重なり合うことによって、極太のレーザー光線となって、岩の壁----ひいては、その奥のスバル達を貫いた。
レーザーは壁の奥に、その奥の木々を丸ごと消滅させた。
壁の後ろにいたのならば当然、死亡確定案件コースである。
「ふぅ、死体は確認しませんよ。なにせ、私がやると常に細胞一つ残さない消滅コースですからね」
さて、これで自称娘とやらのご機嫌取りも出来ただろう。
マフデルタはそう考え、いつもはブラックホールで帰っているアジトにどう帰ろうかと悩み、
【【待てよ】】
いきなり現れた、その見慣れぬ相手に、躊躇なく、蛇達の対消滅砲を放っていた。
☆
岩の壁は、蛇達の合成ブラックホール・レーザーによって、一瞬で消滅した。
その代わりに現れたのは、見たことのない人間……いや、龍である。
身にまとう気配、そして太い尻尾から判断して、自分と同じくドラゴンであるのはすぐにマフデルタは理解したが、それでも今まで見たことがない者であることは確かである。
「あなたは……誰?」
岩の壁がなくなって現れた相手、それは2つの首と顔を持つ者。
顔はモデルを思わせる顔立ちだが目が4つあり、その上、身体も大柄。恐らくは3mはあろうかというくらい。
そして、尻尾も赤々と輝き、赤い髪が轟轟と燃える炎のようにその存在感をひき立てている。
「(火を操る龍? いや、それ以外のエネルギーも感じる)」
マフデルタが迷っていると、2つ顔のドラゴンは、口を開く。
【【僕/私か? 僕/私はスバル・フォーデン/フレアリオン。お前を倒す、マヌスの龍だ】】
2つ顔のドラゴンの答えに、マフデルタはきょとんとする。
何故ならば目の前の相手はスバル・フォーデンでも、ましてやフレアリオンでもなかったからだ。
それなのに、相手はそれが当然のことのように答えた。疑問にも思っていない、あくまでも当然のことのように、だ。
【【‐‐‐‐って、なんじゃこりゃあああああああああああああああああああああああ!?】】
……訂正、どうやら気付いてなかったようである。
☆
【【なにが、なにがどうなってこんな風に?!】】
スバル・フォーデン、そしてフレアリオンは焦っていた。
あのベルトを着けたら、いきなり目の前が白い光に包まれたと思ったら、2人の身体が融合していた。
さっぱり意味が分からないのは、こちらの方である。
「‐‐‐‐って、なんですか?! あの龍は?!」
「やはりっ! やはり理論は正しかった! この光景なら5分と言わずとも分かる、僕は天才だとっ!」
と、後ろの方で2人----この光景に驚いているユカリ、そしてこの光景に喜んでいるリチャードの声が聞こえてきた。
「せっ、つっ、めっ、いっ、しなっ、さ~~いっ!」
「や、やめっ……! よ、酔っちゃうからぁ~~!」
ガシリッと元凶の肩を掴んで首がもげるかというくらいに揺らすユカリに対して、タップして止める事を要求するリチャード。
目を回しながらも、「おっ、恐らくだったんだけどっ!」と彼は答える。
「ごほんっ! ハーフドラゴンの覚醒は……ドラゴンの能力の覚醒ではなく----ハーフドラゴンとしての真の能力の覚醒といった訳だったんですよ!」
「ダメだ、こいつ! 早くなんとかしませんとっ!」
またしても始まるユカリによる、激しい揺らし攻撃。
リチャードの体力がどんどん削られる中、スバルとフレアリオンの合体系は----と言うよりも、フレアリオンが1つの結論にたどり着く。
【【ふむ、なるほど。ドラゴンとして、地龍の能力のパワーアップだと思っていたが、どうやら"他のドラゴンと合体して強化する"というハーフドラゴン独自の能力が覚醒したという訳か。
なるほど、これがハーフドラゴン特有の能力だとすれば、マヌスで重要視されるわけだな。こんなのは初めてだ】】
ふむふむと頷くも、同じ身体であるスバルもその説明でなんとなく理解した。
と言うよりも、そう感じたのだ。フレアリオンが感じる納得が、確かな意思として自分の身体に流れ込むのを。
「フレアリオンさんっ! だったらなんでスバルくんとの合体相手が私じゃないんですか!? なんでフレアリオンさんと合体してるんですか!」
【【えっと……ふむ、それは知らん】】
「リチャードくんっ! どうしてっ、どうしてっ、どうしてぇぇぇぇ~!」
ユカリが揺らし攻撃を強める中、スバルとフレアリオンの合体系は、マフデルタへと視線を移す。
マフデルタはと言うと、冷静な時間があったのか、帽子を被りなおしており、さらに効果切れで使えるようになったブラックホールから新たにライフル銃を取り出していた。
「‐‐‐‐ハーフドラゴンとドラゴンが合体して、1匹のドラゴンに。にわかには信じられませんが、消してしまえば同じこと。
的が大きくなったと思えば、済む話ですよっ!」
バンッ、とライフル銃を放つと、スバルとフレアリオンの合体系にブラックホールが物凄い勢いで飛んでくる。
避けられないとスバルが感じるも、ブラックホールがぶつかる前にマグマが地面から沸き上がり、ブラックホールを防いでいた。
「なっ、なにっ!?」
マフデルタは驚く、防がれるのは先ほどからやられていたことだ。
問題なのは、ブラックホールを防いだマグマが、"消えてない事"。
今までどんなに凄い技も、どんなに大きなものも、当てれば消滅させてきた自慢のブラックホールが、あのマグマは消していない。
【【ふむ、それだけではない。単純に力も強化されているようだ。これって凄いねっ!
よし、この形態を【ハイパードラゴンモードーカグツチ】と名付けよう! スバルがそれで良いなら良いが】】
ちなみに、スバルが何故、神話の神の名を知っていたかと言えば、単純に遊んでいたゲームで出てきたから、なのだが。
兎にも角にも、カグツチと命名されたこの2つ首のドラゴン。
2人が意識を集中させると、自分達の手に見たことのない武器が握られていた。
簡単にその武器の形状を表すとすれば、バズーカ砲。それも先端が火山のような、円錐型の形状をしていることだろうか。
そして全身を、ドロドロと溶け動くマグマが、鎧のように纏っているのも感じる。
明らかに強くなっていると感じるカグツチ、それに対してマフデルタはイラつきを隠さない。
「パワーアップがなんだと言うんですか、こうなったらこちらもとっておきを見せますよっ!」
「全砲門、開けっ!」、マフデルタが言うと共に彼女の背後にいくつものブラックホールの穴が開き、そこから大量の銃火器類が現れる。
ある穴からはライフル銃、別の穴からは大砲、上の穴からはマシンガン。火縄銃にバリスタなど、古今東西、歴史にこだわらずに集められたであろう大量の銃火器が、カグツチの方向に向いていた。
「喰らえ、マフデルタ必殺の射撃攻撃! 龍の財宝!」
マフデルタの合図の元、空中に浮かぶ大量の銃火器類が一斉に発射される。
銃の群れから放たれた対消滅の弾丸、それらはカグツチに向かって放たれ、
【【‐‐‐‐ふんっ!】】
カグツチの身体が一瞬ブれたかと思いきや、身体にかかっていたマグマが無数の手の形となって対消滅の弾丸をその手のうちに吸収していた。
「なっ?! 私の、最強の技が!?」
固まるマフデルタに、カグツチはバズーカの照準を合わせる。
【【これで終わりだ、マフデルタ! 喰らえ、カグツチ・エクスプロージョン!】】
火山バズーカの引き金を引く。
すると、まるで無理やり勢いを止められた水が出口を求めて一斉に飛び出すかのように、大量のマグマがマフデルタに向かって襲い掛かる。
「くそっ!」
ダメで元々と、最後のあがきにマフデルタは帽子を外して、髪の蛇を集合させて、さっきの岩を貫通させたレーザーを放つ。
「《マフデルタ・ヤマタノオロチキャノン》っ!」
先ほどよりも気合をこめて放ったレーザーは、先ほどの倍以上の破壊力を持っているのは、放った当人であるマフデルタは十分理解できた。
問題は、それをもってしてでも、バズーカのマグマを止められなかったことだろう。
マグマはマフデルタを飲み込み、そして爆炎が周囲を覆った。
☆
「やりましたっ! スバルくんとフレアリオンさんの力で、あのマフデルタを倒せましたよっ!」
ぐったりとして、伸び切っているリチャードの亡骸(死んでないけど)を捨てて、ユカリは万歳などをしてガッツポーズをする。
カグツチの中にいるスバルも倒せたことに安堵したのだが、フレアリオンの方は安堵できなかった。
【【待て、2人とも。どうも様子がおかしい】】
「えっ? 何を言っているんですか、フレアリオン……さんで良いんですかね? どう見ても、マフデルタはあのマグマで----」
と、ユカリが言い切ろうとした時、煙が晴れる。
そして、そこにはマフデルタの卵----ではなく、マグマによって溶けた枯れ木しか見当たらない。
「いや~、実に良い破壊力でしたねぇ~。敵ながら天晴れ、とはまさにこういう事を言うんだという、見本のような素晴らしい攻撃でしたねぇ」
パチパチパチと、カグツチ達の後ろ、バズーカを撃った反対方向から賞賛の拍手が鳴り響く。
振り返ると、そこにいたのは、三つ目の龍女。電子的な配線が施されている黒のジャケットを着た、大きな角を持つその龍女は、惜しみもない拍手を続ける。
「素晴らしい、良いものを見せていただきましたよ。
いやぁ、地球などという辺境の惑星に来た意味があったというものです。アイ・ラブ・ユー、地球も我は愛してるってね」
そういう三つ目の龍女の横には、肩で息をしつつも無事な様子のマフデルタの姿があった。
「残念ながら、マフデルタの母を殺させるわけにはいかないんだよ。彼女には我の愛する、忠実な弟や妹を作っていただければならないんでね。
と言う訳で、マヌスの諸君。ここはこの、"覚"のオキクロンの顔を立ててくれたまえ」
ぺこりと、一切ごめんという謝罪の気持ちを見せずに、自分の意見を押し通そうとするオキクロンに対して、ユカリは風の刃の球を自分の手の上に作ることで対応する。
「そう言って、「はい、そうですか」と渡すほど、この私は甘くないんです!
スバルくんとフレアリオンさんばかりではなく、このユカリの存在も、お忘れなくっ!」
ぴゅーっ、とまさしく目にも止まらない速さで、ユカリは風の塊を投げつける。
そして、それは確かにマフデルタとオキクロンの方向に飛んで行ったのだが、何故か風の塊は当たらずに、あらぬ方向に飛んで行く。
「えっ、なんで? ちゃんと当たるように放ったはずなんですが----」
「そこはほら、なにせ思考を読む妖怪、"覚"モチーフですし。あなたの思考を読んで、当たらないようにすることなんて造作もない、ってね。それでは、これにて失礼っ!」
どうして避けられたのかが分からないという様子のユカリに対し、「思考が読めるから」などという良く分からない理由を答えるオキクロン。
そして、いきなりマフデルタとオキクロンの2人が見えないほどの暗闇に包まれたかと思うと、2人の姿がていた。
‐‐‐‐逃げられた。
そう分かった途端、ユカリはカグツチのつけているベルトを外す。
外すとともに、カグツチの身体が赤く光り、スバルとフレアリオン----2人に分裂する。というか、元に戻った、というべきだろう。
2人に戻ったのを確認して、ユカリは初めて安堵する。
スバルも、フレアリオンも、肩で息をしているのだが普通に、腕や足などの欠損もなさそうだ。
なにせ、融合なんて初めてで、もしかしたら元に戻らないという可能性もあったからだ。
「ふぅ~、2人とも戻って良かったです。それじゃあ、スバルくんにフレアリオンさん。
なにか体調に変化はありますか? 2人とも、体調は無事で----」
"一緒に家に帰りましょう"、と言うユカリの言葉を、2人は聞けなかった。
何故ならば、2人が糸が切れた人形のように倒れたから、である。
「ふむ、まだまだ改良は必要みたいですな。これは、5分では終わらない素晴らしいテーマだな!」
「……それよりも! 帰ったら、覚悟してくださいよ。リチャードくん?」
興奮が収まらないといった様子のリチャードの肩を、そっと人を殺すかのような目をして見つめるユカリ。
この後、リチャードはユカリに物凄く折檻されたのであった。
【Tips】
〇半分龍
…龍としての力を半分だけ持つ者の事。力に関しては半分になったりはしないが、不変の龍が別のモノと交わった結果として、不変の性質は受け継がれなかった
覚醒ベルトを用いる事で、周囲の龍の情報を取り込み、新たなる龍として生まれ変わる




