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人間×ドラゴンのハーフの少年、地球侵略ドラゴン達と戦う-ハーフドラゴンのスバルくんっ!-  作者: アッキ@瓶の蓋。


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VS Maf-Delta -黄金の最高幹部ー(3)

VSマフデルタ!

さぁ、戦いが始まるよ!

 僕を始めとするドラゴン3人、それとリチャードの姿を確認したマフデルタは、二丁のライフル銃の銃口を向ける。


「‐‐‐‐まぁ、想定とは違うけれども、良いでしょう。

 さて全員、倒しましょうか。こちらもお母さんとして、娘に良いところを見せませんと」


 マフデルタが引き金を引くと共に、ライフル銃から小型のブラックホールが放たれていた。





「さぁ、始めよう! 5分で出来る、対マフデルタ対策!

 と言う訳で、作戦通りに、フレアリオンさん、やっちゃってください」

「リチャード・ラフバラーに言われるまでもないが……」


 フレアリオンが手を大きく振るうと共に、大量の火焔が放出される。

 放出された火焔がマフデルタの放ったブラックホールにぶつかると共に、ブラックホールの力によって2つとも対消滅される。

 1発撃って残弾なしとなったライフル銃を捨てて、マフデルタは闇の中から新たに二丁、ライフル銃を調達する。


「やっぱり能力の詳細が知られてるってデカいですね。とは言え、一発でも当たれば勝ちなので」


 一発、また一発、そして一発。

 闇の中から新たにライフル銃を取り出し、またブラックホールを放っていた。


「火焔! 火焔! 火焔!」

「岩! 岩! 岩!」


 一方で僕とフレアリオンはそれぞれに、お互いが得意な属性を広範囲に広げる事で、マフデルタが放つブラックホールの攻撃から防いでいた。


「まだまだ、まだ!」


 一発でも受けると消滅してしまうマフデルタの攻撃は受けていなかったが、それでも状況的に不利なのはこちらであった。

 相手は闇の穴からいくらだろうとライフル銃を出して引き金を引きまくる、それに対してこちらは大きめに無駄に力を消耗する技でないと相殺できない。


 例えるならば、相手は最下級の魔法を放っているのに、こちらは最上級の魔法でない限りは相殺できない。

 その上、こちらは相手の技を一度でも受けた時点で死亡という条件付き。


「(あちらは涼しい顔をしているけれども、フレアリオンさんは普通の顔でも汗をかいているし……。

 時間が長引いたら、押し込まれるのはこちらの方)」


 僕もそんな事を真剣に考えこむ暇もあまりなく、フレアリオンと共にマフデルタのブラックホール弾幕の対処をしていた。


「ねぇ、リチャードくん! 早くっ、早くしないとフレアリオンさんとスバルくんがっ!」

「分かってますって、データは手に入れたし、後は……」


 カタカタカタッと、リチャードはキーボードを叩く。

 背中のランドセルから取り出したサッカーボールのような形をした装置、その装置に取り付けられたキーボードでなにかを必死に打ち込んでいく。

 リチャードは打ち込み終わったのか、蓋を閉じて、そのボールをユカリへと渡す。


「さぁ、それをあの敵に向かって投げて!」

「えっ……なんで私が……?」

「なにって、小学生が速く投げられる訳ないじゃない。さぁ、早く!」

「私、このボール投げる要員?!」


 なんか後ろで漫才(はなし)ているみたいだけど、こっちはこっちで辛いから早く助けて欲しいんだけれども!


「ほら、早く! 早く!」

「えぇい! こうなったなら、自棄(やけ)ですよ!」


 ガシッとボール型の装置を手にすると、ユカリはえいやぁと、分かりやすい女の子投げでマフデルタの方に飛ばす。

 フォームとか、勢いとかを考えれば、全く速度が出そうにないような投げ方だったのにも関わらず、ユカリの風の力で物凄い勢いでマフデルタの方に飛んでいく。


「くらえ、マフデルタ!」

「何が来ようとも、私の消滅殺法に死角はありません。消えてなくなれ!」


 そのボール装置に向かって、マフデルタはライフル銃からブラックホールを放つ。

 ボール装置はブラックホールに飲み込まれて、そのまま消えてしまう。


「ふふっ、どうやらただのボールみたいだったようですね。じゃあ出番のない方は、そろそろ消滅していただきましょうか」


 マフデルタはそう言って、ライフル銃をユカリとリチャードの方に向ける。


「それじゃあバイバイ、お二人さん」


 カチッと、マフデルタはライフル銃の引き金を引く。

 ----しかし、ライフル銃から、ブラックホールは出なかった。


「‐‐‐‐あれ? えっと、整備不良?」



「やったっ! やったっ! 5分で出来る、対マフデルタ対策が功を奏したみたいだ!

 さっすがは、このリチャードの作戦通り!」


 ブラックホールが出現しなかったのを見て、リチャードは分かりやすくガッツポーズを披露していた。


 あのサッカーボール型の装置は、空間を安定させるための装置である。

 詳しい理論だとか小難しい技術とかの説明は抜きにすると、あの装置は周囲の空間を安定化させる、マフデルタの使うブラックホールを止める事が出来るモノである。

 あのブラックホールの中にこの装置を入れた瞬間、マフデルタの能力は封じ込めた。

 そしてもう1つ、用意しといたサッカーボール型装置によって、銃から放たれる分にも対応している。


「(銃のブラックホール、それに闇を作り出してワープで逃げるとかも出来ない!

 これで、ドラゴン達の勝利は確約されたようなものだ!)」


 そして勝利できたならば、"あの事"も頼みやすいだろう。

 リチャードはそんな事を思いながら、マフデルタとドラゴン達の戦いを見つめていた。


「……銃からブラックホールは出てこないし、逃げるための闇も出せないし。どうやら、能力が封じ込められると考えたほうが良かったり?」

「諦めろ、マフデルタ」


 と、深く考え込まさせずに、フレアリオンが火を出して畳みかける。

 実際のところ、リチャードが作った装置の効き目はおおおそ20分程度、逃げまどわれていれば自分の能力が使える事がバレてしまう。

 だからその前に、一気に叩き込む。これがフレアリオン達が考えた作戦である。


 勿論、ダメ押しとして、スバルには岩の壁で逃げ道を封鎖して貰ってる。

 これは勿論逃げ道の封鎖という意味だが、それ以外にも彼にも役割を作る意味合いもあった。

 正直、2人だけで十分だったが、彼にも役割を与えておきたかった。活躍させたかった。

 だって、この後、彼にお願いすることがある。その前に彼の気分を害す訳にはいかなかった。


「マフデルタよ。お前を倒して、卵に戻してやる」

「そうです! そうして復活させて、マグノリア様の素晴らしさを伝えてあげますよ!」


 フレアリオンの火を、ユカリの風によって強めて、さらにダメ押しをする。

 2人がマフデルタの方に歩いて、迫力をつける。


「(自身の能力が使えない状況下で、武器をちらつかせて近づく。

 冷静に考えさせず、ただただ一気に! これぞ、5分で出来る対処法なのだ!)」


 拳を握りしめて、マフデルタの挙動を観察する。

 次に何をするのか、それを見てすぐさま、5分で対処してやるとリチャードは意気込んでいた。


「‐‐‐‐これは、あんまりしたくなかったんですけど」


 魔女を思わせる帽子の裾を掴んで、マフデルタは帽子を取る。


 ----シャー!

 ----シャシャシャ!

 ----シャー! シャー!

 ----シャーボ!


 そんなマフデルタの帽子の下、そこには


 自由に動く、蛇の髪があった。



「「「「……蛇髪女(メデューサ)?」」」」


 リチャードも、ドラゴン達も揃って、目を合わせることで石にするメデューサを思い浮かべていた。

 アニメとかなどで有名な上で、蛇の髪というのを見せたのだ。知っている人ならば、思わず言ってしまうだろう。


「言ったなっ! 私は《メデューサ》じゃない! わったしは《ヤマタノオロチ》の、マフデルタ!

 だから嫌だったのに! この髪を見せるのは!」


 日本妖怪に異常にこだわるマフデルタは、顔を真っ赤にして怒り、


「‐‐‐‐しかし、この髪を見せた時点で、お前達はもう終わりなのですよ!」


 マフデルタの蛇の髪は荒れ狂っていた。



「マフ"デルタ(Δ)"だけれども、"ガンマ(γ)"ン大作戦! 開始っ!」


 荒れ狂うマフデルタの蛇の髪、その蛇の口が開いて小さな黒い弾が発射される。

 蛇の口からは大量の弾が、まるでマシンガンのように、僕達を襲っていた。


「"土の壁"っ!」


 対消滅するライフル攻撃をするマフデルタ。そんな相手の蛇の髪から放たれるマシンガン攻撃であったから、すぐさま警戒して大きな土の壁を作る。

 土の壁に、蛇髪の放たれるマシンガンが当たる度に、ちょっとずつだが抉られているような感じがする。


 高笑うマフデルタ、そして彼女の蛇髪から放たれるマシンガン、そして弾が壁を抉る。

 壁によって守られている僕達、その平和が崩れていく音がただただ聞こえてくる。




「嘘だろ嘘だろ嘘だろ、嘘だろ!」


 とりあえず皆を土の壁で防いでいるのだが、リチャードの様子がおかしい。

 ぶつぶつと言葉を言っていて、ただただ気持ち悪い。


「ライフル銃だけじゃないのかよ……髪からマシンガンとか……」


 彼は閉じた状態のパソコンをただただ叩いていて、どうも精神が狂っているとしか思えない。


「あぁ、スバルくん。スバルくんはあんな風になってはいけませんよ。あんなパソコンを閉じたまま叩く、などと言う無意味な行為をするような人間なんかに!」

「大丈夫だろう、ユカリ。もとよりスバル・フォーデンはただの人間ではなく、半分は龍の特別な人間なのだから」

「そっ、そういう事を言っているのではありませんよ! フレアリオンさん!」


 フレアリオンとユカリがコントのようなことを繰り広げる中、僕はリチャードに声をかける。

 僕よりも歳下の、小学生のリチャードを安心させようと。


「大丈夫だよ、リチャード……くん。僕の土の壁はまだまだ持ちそうだし。消滅することはない、よ」

「違う! 消滅することが怖いんじゃない! そんなのは5分で、すぐに決意してる!

 ‐‐‐‐問題は君、なんだよ!」


 安心させようとしていたのに、リチャードは僕の手を掴み、必死な形相で迫っていた。


「僕は頭が良い! 尋常じゃないくらい、可笑しすぎるくらい、理不尽すぎるくらい!

 そんな僕にかかれば、本当は5分なんて時間は必要ない! 1秒でも十分なくらい!

 けれども、君と----ドラゴンの血を受け継いでいる君と仲良くしたい! 5分なんて言わずに、もっと一緒に居たい!

 だって、ドラゴンはカッコいい! 強い! めっちゃイケてる!」


 毎回、"5分"という言葉を使っていたリチャードの、涙目になりながら言う彼の本音であった。

 その証拠なのかどうかは分からないけれども、彼の背中のランドセルの中は、ドラゴンまみれだった。

 小学生向けの大量のドラゴン特集雑誌から始まり、ドラゴンをモチーフにしたヒーローフィギュア、ドラゴンのぬいぐるみなど……。


 それは小学生がヒーロー番組などのおもちゃを集めて持ち歩くような。そんな感じがする。

 初めて、彼が小学生っぽい一面を垣間見た気がする。


「早く帰りたいというのも嘘! ナイトレス・ハーバーシティに、僕の家はもうない!

 マイヨールの仲間と言うのも嘘! 彼女とは、前に一度会ったことがあるだけ!

 けれども----君の力に、スバル・フォーデンというハーフドラゴンに魅せられたのだけは、紛れもない事実!」


 そう語る彼の瞳には、ドラゴン愛がひしひしと溢れていた。


「リチャード……」

「それに、"君には特別な思いもある"」


 リチャードはそう言うと、ドラゴングッズまみれのランドセルに手を突っ込んで、奥の方からモノを取り出した。

 それはベルトであった。真ん中に龍の紋章が刻み込まれた、なにかのヒーロー番組グッズのような、そういうベルト。


「これは昔作った、その人の本能を呼び覚ます【覚醒ベルト】って奴なんですよ。人と人以外という2つの力を宿した人に対して、その人以外の部分を呼び覚ますモノ。

 前作った時は獣の力を制御するために使ったんだけれども、これを使えば、君のドラゴン、その力を完全に呼び覚ますことが出来る。

 そうすれば、あの闇龍に勝てる! ……多分! 少年漫画的に!」


 ハーフとしてではなく、完全なるドラゴンの力を、宿すことが出来る。

 リチャードはそう言った。


 なにが少年漫画的なのかは分からないけれども、そんな便利なものがあるのならば早く使わせてほしい。

 今も、マフデルタのマシンガン攻撃によって、土の壁が徐々に、徐々に、えぐられているんだから。


「……私は反対ですっ! スバルくんはスバルくんだから素晴らしいんです! それなのにいきなり変なので、スバルくんを誑かさないで欲しいですっ!」

「あぁ、そうだな。今まで出さなかったのも気になる。マフデルタを倒すのにはあったほうが良いだろうが、スバル・フォーデンに危険な橋は渡らせん」


 ユカリ、そしてフレアリオンは反対のようである。

 確かに、なんで今、出したのかは気になるが----


「リチャード、やってくれ。今のままだと、この土の壁がいつ壊れるか。

 それだったら、僕はそのベルトを使ってみたい」


 2人の静止の声が聞こえるが、僕はそれでもやって欲しいと頼む。


「僕は2人の役に立ちたくて、戦ってるんだ。

 だから----この状況を打破できる可能性があるなら、使いたい」


 僕の気持ちに対し、ユカリとフレアリオンも納得してくれたのか、それ以上は言わなかった。


「じゃあ、行くよ」


 リチャードはごくりと喉を鳴らして、僕の腰にベルトを装着する。



 ‐‐‐‐その時、世界が真っ赤な光に包まれた。

【Tips】

〇妖怪/ヤマタノオロチ

…日本神話で見られる大蛇。8つの頭を持つヤマタノオロチは獰猛に人を襲い、国を滅ぼしたともいわれている

 八又(ヤマタ)なら頭が9つないとおかしいという意見もあるが、このヤマタノオロチは、同じく8つの頭を持つ八面王(やつらおう)なる別の妖怪が転じたモノともされている

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アルファポリスでも、連載中です cont_access.php?citi_cont_id=836368854&s
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