Mixed With Human And Dragon -スバル・フォーデンー
怪人などが出てくる、戦隊ものを意識して描いている作品です
そういうのが好きな人などに、読んでくださると嬉しいです
とある寂れた、それほど珍しくもない港町----レイク・ラックタウン。
その砂浜で、1匹の龍が暴れていた。
その龍は、物を容易く切り裂く鋭い爪を持っていた。
その龍は、大きなモノを一口で食うことが出来る大きな口を持っていた。
その龍は、地面に跡を残す強靭な足を持っていた。
そして同時に、その龍は、毛の量が凄まじい大きなアフロを持っていた。
「もう諦めるがいい! 我々の手によって、この地球は我々が住みやすい植民地となるのだ!」
頭が大きなアフロとなっているこの龍、その名も【吸水龍アフロディーノ】。毛を自由自在に操る、毛龍である。
その巨大なアフロの中に、地球の6割を占めると言われる海の水を全て吸水してしまったという、見かけに反して恐ろしいことをやってのける龍である。
そんなアフロディーノは、海水を多量に含んだその髪をうねる蛇のとぐろのようにうねうねと動かし、自らの行動を邪魔する者達に向けていた。
「いや、そういう訳にはいかん。お前から、海を取り返さねばならないからな」
そう言いつつ、海水が大量に含んだ髪を、火焔によって生み出した剣で斬る女。
2mはあろうかという長身の、デキる女といったような赤い髪の女。
美しい彼女は人ではない、火を操る火龍である。
「えぇ! この地球に海は必要です、そしてあなた達はこの地球から出て行ってもらいます!」
背中の翼で浮きつつ、風の刃によって、アフロディーノの髪を切る女。
スレンダーな身体で、クールな雰囲気を漂わせる黄緑髪の女。
綺麗な彼女は人ではない、風を統べる風龍である。
「独り占めなんてさせないよぉ! そんなの、あたしは許さないんだから!」
大きな爪を用いて、髪を束ごとにまとめて切り落とす女。
眼鏡をかけているが、愛らしい金色の髪の女。
可愛らしい彼女は人ではない、雷を制する雷龍である。
人の姿こそしているが、龍という生き物である3人に対して、毛を司る毛龍であるアフロディーノは、歌舞伎のように毛を豪快に振り回す。
その髪の先端がまるで大蛇のようになると、大きく口を開け、そこから細く集約させた水を発射する。
それは、水のレーザー。一点に集約させることによって生まれる、鋼鉄を容易く切る。
水のレーザーを放つアフロディーノの髪は、伊引き、また一匹とその数を増やしていく。
そして出来たのは、10匹の髪で出来た大蛇。
「この蛇髪で、このギリシャ神話の怪物であるメデューサを思わせる髪で、あんた達をホロボース!」
10匹の大蛇から水のレーザーを放つ、アフロディーノ。
そのレーザーは地面に大きく線で跡を作り、3人に迫っていた。
「あなた達はドラゴンなのに、この地球を守ろうとする愚か者達!
結局、弱者は強者に従うしかなく、故に強者であるこの我らドラゴンに従う事こそがこの地球の辿るべき運命なりっ!」
と、そんなアフロディーノの腕に、大きめの石がぶち当たる。
石がぶち当たると共に、彼女の腕がまるでおもちゃのように吹き飛んだ。
「なっ、なにっ!?」
アフロディーノが石がどこから来たのか、誰がやったのかを探ろうと辺りを見渡す。
「なるほど。防御力も、まさに毛と同じくらい柔いと」
そう言うのは、ヘッドフォンをつけた中学生の少年である。
ちょっぴりツリ目のせいなのか、生意気な印象を与えるこの少年。
この少年の名は、スバル・フォーデン。中学3年生。
彼の血は半分は人間のモノである。
「なら、今の要領で、今度は心臓に当ててやるよ」
そして、彼のもう半分の血は、地を味方につける地龍の血。
彼の龍の血の力によって、地面から浮かび上がった多くの岩々は魚の群れのように、彼の周りでゆっくりと浮かんでいた。
「‐‐‐‐さぁ、いけっ!」
彼の指示のもと、いくつもの岩がアフロディーノの方に向かっていく。
アフロディーノは、毛を自分の身体へと纏わせて何重にも編み重ねる。
毛を司る毛龍は文字通り毛ほどの防御力、薄くて柔い障子紙ほどの耐久力しかないこの龍にとっては、髪を幾重にも編み重ねることしか、自身を守る方法を思いつけなかった。
そして、その目論見は見事に成功する。
幾重にも編み重なった髪の防御のおかげで、アフロディーノに迫る石の攻撃から身を守っていた。
‐‐‐‐しかし、しょせんは髪である。毛である。
「行くぞ、スバル・フォーデン」
「えぇ、スバルくんを援護です!」
「スーちゃん! いっくよぉ!」
赤髪の火龍が火をつけ、黄緑髪の風龍が風で髪を切り裂く殺傷能力を与え、金髪の雷龍が雷で焼き切る力を。
それぞれスバルが放った石に、髪の防御を破る術を与えたのだ。
当然、アフロディーノは削られていく。
火を纏った石は髪を燃やして、腕に当たり。
風を纏った石は髪を切り裂き、足を引きちぎり。
雷を纏った石は髪を焼いて、腹に穴を開ける。
そうして、僅か5分という時間で、アフロディーノの全身に石が大傷を与えたところで、アフロディーノは爆発する。
爆発の白い煙が収まったそこには、毛が描かれた卵。そして使い古されたスポンジが落ちていた。
火龍は卵を拾うと、スバルに話しかける。
「やったな、スバル・フォーデン。
今日も助かった、ありがとう」
‐‐‐‐これは、人間と龍。2つの血を受け継いだ、半分龍----ハーフドラゴンの少年の物語。
地球を侵略しようとするドラゴンを、それから守ろうとするドラゴン達と共に戦う、ハーフドラゴンの物語である。
【Tips】
〇妖怪/火取り魔
…電気がなかった時代、夜はか細い明かりがなければ、先も見えないほど暗かった。この妖怪はその火を奪う事で、人々に夜の恐怖を与える妖怪であった
吸水龍アフロディーノはそんな妖怪に酷似しており、このリュウシントは水を奪う事で、人々に恐怖を与えようとしていた




