出合荘の晩ご飯〜高校初日を終えて〜
〜山田春人〜
「「「いただきまーす!」」」
高校初日を終えた俺たちは、晩ご飯を出合荘の住人全員で食べている。
「いやぁー、うんめぇなぁ〜」
どこかの美食屋みたいな声をあげ、ご飯にかぶりつく真友。
今日のご飯は理香さんが1人で作ってくれた。
麻婆豆腐、春巻き、春雨サラダ、中華風あんかけなど、中華料理が揃っている。
「そういえば真友。今日の放課後どこ行ってたのさ」
俺は早速気になっていたことを聞く。
今は19時。
真友が帰ってきたのは18時だ。
「ん?どこ行ってたかって?フッフッフ。それはなぁ!当ててみて!解答権は1回!」
真友がうざい顔で俺の指をさす。
「だるい!その絡みだるい!無視して良いんじゃなーい?春人ー」
久留美さんもうざかっている。
「そうだね。もう興味なくなったしいいや」
本当は気になるけど。
「おいぃぃ!ちょ待てよ!教える教える!」
真友が焦って止める。
言いたかったんだろう。
「俺はバイト探しの旅に出てたんだ!高校生になったらすぐ始めようと思っててさ!」
「え!?お、驚いたな。バイト探してたんだ」
まさかの出来事に驚きの声をあげてしまう。
「へぇ。偉いわね。真友くん!」
理香さんがものすごい笑顔で真友を褒める。
「でへへ。あざーす!」
「うわっ!ひっどい顔!」
恵美さんが真友の褒められた嬉しさで溶けている顔に引く。
「てか、早くない?バイト始めるの。まだ初日だよ?」
確かに。
始めるとしても、せめて学校が始まって1週間後とかじゃないだろうか?
「まあ、早く始めることに越したことはないと思ってさ。ほら、お金欲しいじゃん?」
真友が当然だろ?見ないな顔で聞いてくる。
「まあ、お金は欲しいけど……ボランティア活動とかに支障は出ないの?まだ詳細は出てないけど」
そう。
俺たちにはボランティア活動がある。
これはおそらく放課後に行うこと。
同じく放課後にあるバイトと被らないだろうか?
「そうよ!あんた!まさかサボるためにバイト入れんたんじゃないでしょうね!?」
恵美さんが真友のサボりを疑う。
「待ってくれ!そんな邪な考えは無いぞ!ちゃんとボランティアがある日は休みだったり、時間ずらしたりしてもらう予定だから!それが通らなかったら……その時はその時さ」
「てか、どんなバイト始めたの?もう受かってんの?」
久留美さんの質問。
俺も気になっていたことだ。
「ん?ああ。俺が始めたのは早朝の新聞配達さ。火、水、金に入れてる。そこは受かってて、早速明日からスタートだよ。もう1つはまだ合否は来てないな」
「2個やるつもりなの!?どんだけお金に貪欲なのよ」
恵美さんが驚いた声を出す。
正直俺も驚いている。
まさか2つもやるつもりなんて……。
真友は高校生なのを利用してたくさん遊ぶと思ってたから。
ん?
そうか。
「真友。そのお金の使い道はもう決めてるの?」
遊ぶためにはお金が必要。
だから真友は2つもバイトを入れたんだ。
「ああ、決めてるぜ!半分は遊びでもう半分は貯金だ!こう見えても俺は将来を見据えてるんでね!」
そう言ってドヤ顔をする真友。
「最後のそれが無かったら、おおぉ〜ってなったのに。もったいなーい」
久留美さんが真友に呆れる。
でも真友、将来をしっかり考えてるんだ……。
俺は……全然……。
俺もバイトを始めた方が良いか?
「おい春人。お前今俺もバイト始めた方がいいかな?とか思ってないか?」
「え!?あー、いや、うん。思った」
15年一緒にいるから、真友にはなんでもお見通しらしい。
「あのなあ。いつも言ってるけど、俺は俺。春人は春人だから。春人がしっかり考えてバイトを始めるなら構わないが、俺が始めたから始めようなんて気持ちで始めるなら、俺は止めるぞ。なんか始める始める言いすぎて頭おかしくなってきたわ」
いつもそうだった。
中2の頃、真友が始めた塾に追って入った。
結果、自分で勉強してる時とほとんど成績が変わらず、真友より先に辞めた。
中3の頃、職業体験で行きたいところが決まらず真友について行った結果、何も得ずに帰ってきた。
「そうだね。ちゃんと自分で考えるよ。ありがとう」
俺も高校生になったんだ。
自分のことは自分で考えて決めなくちゃ。
「おう!んで、今日!高校生活初日が終了したわけだが、みんなどうだった!?」
続いて、真友が高校生活初日の感想を求めてくる。
「1組はどうだったよ?」
「別にどうもこうもないわ。まだ自己紹介しただけなんだから。何もわからないわよ」
恵美さんが答える。
「そうかぁ〜。一目惚れとかしなかったのぉ〜♪」
真友はすごくご機嫌な様子だ。
「はあ!?するわけないでしょう!?」
「てか失礼だけど恵美ちゃん、異性を好きになったことあるの?」
真友が踏み込む。
「ないわよ!そうゆう話苦手だからもう辞めてくれる?」
恵美さんが少しだけ頬を赤くする。
「おけおけ了解。なあ!これ見てくれよ!俺たちのクラスで配られたパンフレットなんだけど、すごくね!?」
すると真友は最初から用意していたのか、
足元からパンフレットを取り出す。
それを俺たちに渡す。
「へぇ。すごいな。ものすごく細かい」
そのパンフレットはこれからの学校行事や、時間割、学校の規則などがびっしりと細かく記載されている。
「え!?校外学習!?聞いてないんだけど!?」
恵美さんが驚きの声を上げる。
「校外学習だって!どこいくんだろ!楽しみね!愛希!」
「そうだね。同じ班になれるといいけど」
恵美さんがすごくはしゃいでいる。
初めて見る姿だ。
「そういや槍彦はどうだ?中2だろ?新しいクラスに友達いたか?」
「うるせぇ!嫌になるぐらいうるさい奴らと一緒になったわ!」
「そりゃあ良かった!今度そのうるさい奴ら俺にも紹介してくれよ!」
「嫌だね。頭が破裂するくらいうるさくなる予感しかしねぇ」
「ええぇぇ〜」
なんだかんだで真友と槍彦くん、恵美さんが仲良くなっていて良かった。
出合荘と私立楽青学園。
俺たちの新たなスタートは、実に好調だ!
どうぶつの森を買おうか悩んでます……。