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身代わり令嬢に終わらない口づけを  作者: 和泉 利依
第五章 たった一度の口づけ

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「……は? なに馬鹿なこと言ってるんです?!」

「でも、ローズはカーライルのレオン様のことが好きなんでしょう?」

「なっ……!」

 とりつくろう間もなく、ローズの顔が薄闇の中でもわかるくらい赤く染まった。それを見てベアトリスが笑う。


「ほら、ね」

「レ、レオン様はとても素敵な方です! でも、恐れ多くも私がそそそそそそそそんなこと……!」

「さっき一緒にいた方がレオン様なんでしょう? 二人の雰囲気はどう見ても恋人同士そのものだったわよ?」

「見てたんですか?! なら、さっさと声をかけてくれればよかったのに!」

「やあね、私そこまで野暮じゃないわよ」

「! ど、どこからどこまで見て……」

「うふふふ」

 にやありとベアトリスがご令嬢らしくない笑みを浮かべた。ちょっと見ないうちに、やけに庶民臭くなっている。


「ねえあの様子だと、絶対にレオン様もあなたのことをお好きなのよ?」

「……そんな、こと……」

 とたんに、ローズの目に涙が浮かぶ。

 そう見えたとしても、レオンの目に写っていたのは、伯爵令嬢のベアトリスだ。


「私は、ずっとお嬢様のふりをしていたのです。だから、レオン様が私のことをお好きなように見えたとしたら、それはきっとお嬢様のことを……」

「なんで? 私、レオン様になんて会ったこともないもの。ずっと一緒にいたのは、あなたでしょう? ローズ」

「私……?」

「僕にもそう見えたよ」

 きょとんとしたローズに、ベアトリスの後ろにいた青年が声をかける。


「彼が好きになったのは、ベアトリスという名前の君だよ。頑固で融通のきかない彼が、あんなふうに血相変えて女性を追いかけるようになるなんて、思ってもいなかった」

 真面目で実直を悪い方に言い換えて、その青年は笑った。


「でも、あの方はお嬢様の夫となる方で……」

「そんなの、好きになるのに関係ある?」

「ありますよ! 私は……ただの、使用人です。私では、駄目です……」

 ぽたぽたと、ローズの目から涙が落ちる。

 レオンのことを考えるだけで、胸が苦しくなる。彼がいい人だと思えば思うほど、ベアトリスにお似合いだという気持ちの裏で、ローズの心は苦しくなるばかりだった。

 ようやく、ローズはその苦しさの理由に気づいた。


「もしかして、私、レオン様のことが……」

「好きなのよ。あなたは彼の事を。ね、ローズ」

 ベアトリスが優しく涙をぬぐってくれる。

 だが、たとえいまさらそのことに気づいても、どうにもならない。二人の間には大きな身分差の壁が立ちふさがる。彼の隣に並ぶことができるのは、ベアトリスのように身元のしっかりとした伯爵令嬢だ。短い間だから身代わりもできたが、夫婦となったらそうはいかない。


「大丈夫だよ。きっと彼も君も、お互いをあきらめなくてもいいだろうから」

 妙に明るく言った青年にローズが涙で濡れた目を向けると、ベアトリスは呆れたように言った。

「あなたのそういうのんきなところが好きだけれど、早くその大丈夫の根拠を聞いてこの子の涙を止めてあげたいわ、ハリー」

「あなたは……」

「ああ、紹介が遅れたわね」

 ぴたりと寄り添いながら、ベアトリスが言った。


「この人はハロルド。雑貨の卸しをやっている商人で、私の夫となる人よ」

「ハ……ロルド?」

 聞いたことのある名前だ。どこで聞いたのかローズが思い出している間、ハロルドはレオンによく似た笑顔でローズを見つめていた。



第五章おしまい!いよいよ、大団円のエピローグです!甘いよ!

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