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身代わり令嬢に終わらない口づけを  作者: 和泉 利依
第四章 一輪の贈り物

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- 9 -

「うむ。せっかく相手をしていてくれたお前にはすまないが、予定通り、あの娘はハロルドの妻にする。ハロルドの結婚が済んだら、次はお前の妻を選ぶとしよう。実はもう目星をつけてあってな。ルモンの街に住む男爵家の娘で……」

「いえ、私は……!」

 勢いよく顔をあげたレオンに、公爵は目を瞬く。


「うん? 誰か心当たりの相手でもいるのか?」

「……いえ」

「そうか。まあ、まずはハロルドの式が終わってからだな。おとなしそうな娘でよかったよ。結婚してハロルドも落ち着いてくれるといいのだが……。まったく、結婚式はもう四日後だというのに、あれは本当に戻ってくるのか」

「もし……兄上が、戻ってこなかったら……」

 小さなつぶやきは、ぶつぶつと文句を言っているカーライル公爵には届かない。


「レオン? 何か言ったか?」

 レオンは首を振った。その手は、硬く握りしめられている。

 気を取り直すように顔をあげると、レオンは父に言った。


「今日はこれから、秋まつりの寄附のために例の孤児院に行ってまいります」

「ああ、そういう時期だな。頼むぞ」

「はい」

 そう言って、二人は別の方向へ別れて行った。


  ☆


 結婚式は三日後に迫っていた。だが、伯爵家からはまだベアトリスが見つかったとの連絡はない。何度か問い合わせたあげく、伯爵夫妻は前日にこちらに来るという短い手紙が来ただけだ。

 さすがに、結婚式は本人でないとまずいだろう。このままローズが結婚するわけにもいかないだろうし。

(どうしよう。いざとなったら、私も失踪するしか……でもそれではリンドグレーン伯爵様が困ることに……でも……)

 ローズが悶々としながら考えていると、向かいに座っていたレオンが言った。


「具合でも悪いのか?」

 我に返って、ローズは令嬢の笑みを顔に張り付けた。

「いえ。なぜです?」

「それならばいいが……では、プディングは嫌いか?」

 言われてローズは気づいた。考え事をしながらお茶をしていたので、さっきからスプーンを持ったまま、目の前のプディングには全く手をつけていなかった。見れば、レオンの方はもうとっくに食べ終わっている。レオンは、特に甘いものが好きというわけではないが、ローズが菓子を食べている時は一緒にそれを食べるようになっていた。


「すみません、少し考え事をしていました。嫌いではありません」

「そうか」

 ローズは、ゆっくりとプディングを口に運んだ。

 まだなにか言いかけたレオンは、結局何も言わないまま口を閉じる。結婚式まで日がないことで気もそぞろになっていたローズは、物問いたげなレオンの様子に気づかなかった。

 お互いに何かを考え込んでいる二人の間に、ぎくしゃくとした沈黙が落ちる。


「そういえば、昨日お前によく似た女性を見かけた」

 無難な話題を見つけたらしく、ようやくレオンが口を開いた。

「……わたくしに、ですか?」

「ああ」

 レオンは、ローズが話を続けたことにほっとしたように言った。


「昨日、出がけからの帰りに馬車から見たのだが、少し髪の色が濃いくらいでお前によく似ていた。あれほどそっくりな人間もいるものだと……」

「どこで見かけたのです?!」

 思わずローズは席を立っていた。予想外の剣幕に、レオンが目を瞬く。

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