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身代わり令嬢に終わらない口づけを  作者: 和泉 利依
第四章 一輪の贈り物

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- 6 -

「はい」

 花瓶の水を入れ替えていたソフィーが、こちらを向いた。レオンにもらったバラの花は、ソフィーがかいがいしく手入れをしてくれているおかげで、まだ瑞々しく咲いていた。

「ハロルド様について教えてちょうだい」

 その名前が出ると、ソフィーの顔がこわばった。


「奥様、どうか、それは……」

「レオン様から、お兄様だとうかがったわ。でもそれ以上は聞けなくて」

「レオン様が、ですか?」

 少し目を丸くしたソフィーは、それでも迷っているようだった。


「お願い。あなたから聞いたことは、誰にも言わないわ。結婚する相手の事は、どんなことでも聞いておきたいの」

「でも……」

「何か、不幸なことだったら、よけいにレオン様や公爵様には聞けないもの。何も知らなくて、この館の方々を無神経に傷つけるようなことはしたくないの。私は、知るべきだと思うのよ」

 ローズがいうと、何か考えていたソフィーは頷いた。


「そうですね。いつか知っておしまいになることなら、妙な噂をお耳に入れるよりは……」

「ありがとう」

 ソフィーは姿勢を正すと、口をひらいた。

「ハロルド様は、レオン様のお兄様でカーライル家の次期当主になられる方でした」

 その言葉が、過去形だという事にローズは気づいた。やはり、すでに亡くなっているのだろうか。


「奥様のご結婚相手も、実は最初に決まっていたのは、ハロルド様だったのです」

「え? レオン様ではなくて?」

「はい。半年前、リンドグレーン伯爵家のご令嬢とご結婚が決まったことを、ハロルド様もそれは喜んでおられました。けれど、そのハロルド様が、先月の末から行方不明になってしまわれたのです」

「ゆ、行方不明? 誘拐とかではなくて?」

「前後の状況から考えると、ハロルド様ご本人の意思で姿を消されたようです。それに、あの……ハロルド様は時々そういう騒ぎを起こされる方でしたので……」

 言いにくそうに話すソフィーに、ローズはめまいを覚える。


(もしそのハロルド様がここにおられて、そしてお嬢様がみつかってご夫婦となられたら、きっとものすごい似たもの夫婦に……なんて恐ろしいご夫婦なのかしら)

 この館の関係者にどんな騒ぎが起こったのかは、なんとなく想像がついてしまう。ローズは、その騒ぎを身をもってよく知っていた。


 ソフィーは小さく咳ばらいをすると、話を続けた。

「それで、結婚に向けて急遽、レオン様をご当主とされることが決まったので、公爵様は当主の変更を国王へご報告に行っておられたのです」

 ローズがこの館へ来た時に公爵が不在だったのは、そういう理由だったのだ。


 リンドグレーン伯爵家は、地位こそ公爵の下にはなるが、カーライル公爵家よりもよほど古い家柄だ。その伯爵家とつながりができるのなら、カーライル家では長男でも次男でもかまわなかったのだろう。家と家をつなぐ目的が強い貴族の結婚には、事故や病気で相手が変わることは、ままあることだ。


「それまでも度々いなくなることはあったのですけれど、たいていは一日二日でどこからともなくお戻りになられていました。けれど今回は本当にお姿を隠されてしまわれて……結婚式も間近に迫っておりましたし、公爵様も仕方なくご決断されたようですわ」

「ハロルド様のまわりに、何か問題でもあったのでしょうか。たとえば、跡継ぎの問題でレオン様と確執があったとか」

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