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身代わり令嬢に終わらない口づけを  作者: 和泉 利依
第四章 一輪の贈り物

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- 5 -

 ちら、とレオンを見上げると向こうも目だけをローズに向けていた。目があった瞬間、二人で思わず吹きだす。

 弾けるように笑い出したレオンには、最初に見た威圧的な雰囲気は欠片も残っていない。柔らかそうな茶色の髪を揺らして、彼は楽しそうに笑っている。ローズがレオンのそんな笑顔を見るのは初めてだ。その笑顔に、ローズは思わず見とれていた。


 日の光にすける髪が、きらきらと輝く。以前なら意識してとっていた距離が、今は呆れるほどに近い。ともすれば、お互いの腕が触れ合ってしまいそうな距離だ。でも、なぜかローズは、今はもうその距離を離そうとは思わなかった。むしろ、その近くでもっとその笑顔を見ていたいなどと思ってしまう。それほどに、彼女にとってレオンは魅力的だった。

(レオン様は、本当に素敵な旦那様になるでしょうね)


 そう思う一方で、なぜかローズは泣きたい気分になった。

「はは、お前、これを食べる気じゃないだろうな」

 からかうように言ったレオンを見れば、さらにその切ないような気分は増してくる。そんな冗談を言えるような仲になったことがくすぐったくて嬉しいほど、同時に胸の中に同じだけの苦しさがつのるのだ。

(こんなに楽しいのに……なんで、私は泣きたいんだろう)

 そのまま考えていたら本当に泣いてしまいそうな気がして、なんとか顔に笑顔を浮かべたままローズは話題を変えた。


「そういえば、レオン様」

「ん? なんだ」

 砕けた感じになったレオンが、笑みを浮かべながら返した。今なら、聞けるかもしれない。

「ハロルド様とは、どなたなのですか?」

 それを聞こうと、ローズはここまで彼を追ってきたのだ。そのことを話してくれなかったソフィーの前でこの話をするのは気がひけたので、わざわざ彼女を遠ざけた。


 ところが、その名前が出たとたん、レオンの顔から笑みが消えた。そのあまりの変化の激しさに、ローズも、は、と息をのむ。聞いてはいけないことを聞いてしまったことを、ローズは悟った。けれど、口から出てしまったものはもう遅い。

「レオン様……」

 とまどうローズから視線をそらすと、レオンは絞り出すように小さく言った。

「兄だ」


  ☆


 ローズは部屋で、ソフィーの持ってきてくれた本をおとなしく読んでいた。一応ページは繰っているものの、内容は頭に全く入ってこない。


 あの後すぐにソフィーが探しに来てしまって、それ以上はレオンから聞けなかった。けれど、たとえ時間があっても、あれ以上のことはレオンの口からはきけなかっただろうと、ローズは思う。むしろ、ソフィーが来てくれてそこで会話が途切れたことは、助かったのかもしれない。


 ハロルドという兄弟がいるにしても、兄だったのは意外だった。ベアトリスの結婚相手は、跡継ぎだと聞いていたからだ。

 跡継ぎより弟が先に結婚することはないだろうし、兄が結婚しているにしてはその兄も家族も見たことも聞いたこともない。レオンの表情からその理由を考えれば、おそらくは不幸な理由の可能性が高いだろう。そのことに自分が思い至らずレオンにあんな顔をさせてしまった悔しさに、ローズは唇を噛んだ。


 なぜそれをこの館の人々が隠すのはわからないが、それを知らないままベアトリスをこの家に嫁がせて良いのだろうか。知らないことで、ベアトリスになにか不都合が起きることはないのだろうか。


(やっぱり、このままにはしておけない)

 ぱたん、と本を閉じたローズは顔をあげた。

「ねえ、ソフィー」

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