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身代わり令嬢に終わらない口づけを  作者: 和泉 利依
第四章 一輪の贈り物

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「? はい」

「俺も……そう、思った。だから……」

 もごもごと口ごもるように言われて、ローズはレオンを見上げる。視線を動かした時に、レオンの手にハサミが握られているのがちらりと見えた。

 そこでローズは気づいた。


(もしかして……自分で花を摘みに来たの?)

 ローズは素直に感動した。

 レオンはちゃんと、ローズの言った言葉の数々を自分で考えてくれていたのだ。


 今までのレオンだったら、自分できれいな花だと思ったとしても、あの執事やメイドに言ってそれをローズに届けさせていただろう。

 だがレオンは、贈るための花を自分で摘みに来たのだ。自分自身の考えで。

(お嬢様。やっぱりこの人は、良い方です!)


 ベアトリスは奔放な性格だが、一方で真面目でもあった。だから、どんなに愚直であろうとも、レオンのように一生懸命に真正面から向き合ってくれる相手にはきちんと正直に想いを返す。ベアトリスの夫となる人が良い人なのは、ローズにとっても嬉しかった。


 居心地悪そうに、レオンは聞いた。

「一本だけなら……お前の迷惑にならないか?」

「はい。もちろんです」 

 にこにこと笑いながら、ローズは花壇に視線を落とす。

 その花壇には、色とりどりのダリアが植えられていた。ローズの返事を聞いて、レオンは腰を落とすと一本のダリアに手を伸ばす。


「あ……」

「なんだ?」

 あわてて声をあげたローズに、レオンが振り返った。

「どうか、そのままで」

「なんだ。やはりいらんのか」

 む、とした顔で言ったレオンに、ローズは微笑む。


「違います。そのダリアは私がもらいましょう」

「ならば」

「ですから、毎日この花を見に来ます。手折ってしまえばすぐにしおれてしまいますもの。地におけば、手折るよりもずっと長持ちすることでしょう。枯れるまでは、わたくしが頂いたこの花を毎日見にまいります」

 かすかにレオンが目を瞠ったが、何も言わずにその場に立ち上がった。そこでローズはまた気づいた。


 そのダリアは、この花壇においてもほんの数本しかないピンク色だった。

(あの時のこと……覚えていてくれたのかしら)

 バラをもらったときにとっさにつぶやいた言葉を、律儀にもレオンは覚えていたらしい。だから、またこの色を選んだのだろう。

 ローズの胸が熱くなって、自分の手をぎゅ、と握りしめた。

(訂正します、お嬢様。この人はただの良い方ではありません。とても良い方です)


「ダリア、と言うのか」

「この花ですか? そうです。ご存じなかったのですか?」

「花の名前など知らんな。ただ……」

 言葉を切ったレオンは、ぽつぽつと言った。

「ただ、これを見つけた時、小さくて華やかで……お前みたいな花だと思った。だから、見せてやりたくて……」

 驚いて見上げたレオンの横顔は、真っ赤に染まっていた。つられてローズも赤くなる。

(本当にもう、この方は……!)


「あ、あの、それでこのお花、食べることもできるのですよ!」

「なに、食用なのか?」

「もちろん種類にもよりますが、宮廷料理などではよく飾りなどにも使われて……」

「そ、それで見たことがあると思ったのか」

 照れ隠しに口にした話だったが、レオンも同じように思ったのかぎこちなくのってくる。


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