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身代わり令嬢に終わらない口づけを  作者: 和泉 利依
第四章 一輪の贈り物

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- 2 -

「もしかしたら、そなたにとって予想外のことが起こるかもしれないが……何があっても動揺しないでほしい」

 妙な物言いに、ローズは首をかしげた。


「何か……ですか?」

「なに、こちらの都合だ。そなたは何も心配しなくてよい。リンドグレーン伯爵がこちらに着いた折には、また話すとしよう。そなたがこのカーライル公爵家に嫁ぐことは変わらない。数日ではあるが、それまでゆっくりしていてくれ」

「はい」

 その話を、レオンは終始無表情のままで聞いていた。


  ☆


 ローズが部屋を出ると同時に、レオンも退出した。緊張から解放されてふう、とため息をついたローズは、そのため息が一つでなかったことに気づいた。そ、と隣を見ると、レオンも仏頂面でローズを見下ろしている。


「あの……」

「なんだ」

 その声には、なぜかいら立ちがふくまれていた。なにか自分が怒らせるような発言をしただろうか、とローズは先ほどの会話を思い返すがこれといって心当たりはない。

 それ以上聞くこともなく、ローズは、いえ、と小さく答えると逃げるようにその場をあとにした。



 戻る道すがらローズは、廊下に飾ってある代々の当主の肖像画を見上げていた。来るときは緊張していて、ゆっくり見るどころではなかったのだ。

 いかめしい顔をした年寄りの顔がずらっと並んでいるが、総じて造作は悪くない。貴族の顔を見たそのままに描くような気の利かない絵師はいないだろうが、それでも今までの公爵たちはなかなか見目好い顔をしていた。


 眺めながらつらつら歩いていると、最後にとびきり若い男性の肖像画が飾ってあった。隣にあるのが今会ったばかりの現公爵だったので、順番からすればおそらく次期当主だろう。

 肖像画をこのように飾る時は、節目の歳に描き替えるのが一般的だ。今は若い絵だが、そうやって架け替えていき最終的に歴代の当主のように貫禄のある絵になるはずだ。


 それはともかく、その若い男性がレオンではないことをローズは不思議に思った。レオンに似ているが、彼よりも温和で優しい顔立ちの男性だ。

「この方は?」

 聞かれてローズの目線を追ったソフィーは、その先にある肖像画に気づくと困ったような顔になった。

「あの……ハロルド様です」

「ハロルド様? どういった方なのかしら」

「それは……」


  ☆


 その日の午後、ローズは庭のガゼボでお茶を飲んでいた。

 こんなに長い間ベアトリスの身代わりをするのは初めてだが、ローズはご令嬢の生活というものがつくづく自分の身に合わないものだと実感していた。


 なにしろ、何もすることがないのだ。侍女だった時のローズにはそれこそ朝から晩まで仕事があったから、暇だなんて思ったこともなかった。なのに、令嬢には仕事がない。一応、社交が令嬢の仕事といえば仕事なのだが、今のローズは結婚を控えた身で出歩くこともできない。おまけにいつでもメイドがついていて気を抜くこともできない。

 これは、ベアトリスでなくてもちょっとくらいなら抜け出したくなるかもしれない。


(私、やっぱりお嬢様にうるさく言いすぎていたのかもしれないわね)

 ベアトリスが戻ってきたら、もうちょっと優しくしようと反省した後、気持ちを切り替えてローズは先ほどの肖像画のことを考えることにした。今は、考える時間ならいくらでもある。

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