表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
身代わり令嬢に終わらない口づけを  作者: 和泉 利依
第四章 一輪の贈り物

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/50

- 1 -

「奥様、申し訳ございませんが、急いでお支度を」

 次の日の午後、別のメイドに呼ばれて部屋を出て行ったソフィーが、慌てた様子で戻ってきた。


「何かあったの?」

「はい、旦那様……公爵様が奥様をお呼びでございます」

「公爵様が? お戻りになられたのですか?」

 ソフィーが慌ただしい理由を知って、ローズもソファから立ち上がる。


「今日の昼にはお戻りになられていたようです」

「わかりました。公爵様はどちらに?」

「本館の、ご自分の書斎でお待ちになっておられます」

 それを聞いて、ローズは眉をひそめた。

 本館には、結婚式に招待された親類などが滞在しているはずだ。できれば、あまり顔を合わせたくはない。

 そのローズの雰囲気を察したのか、ソフィーが微笑んでいった。


「ご招待客の皆様は、今日はお芝居を見に全員外出しておられます。夕方までお戻りの予定はありませんので、お気になさらなくても結構ですよ」

「そう。では、着替えます」

 その言葉に、ほ、としたローズは、緊張しながらドレスを着替えた。会いたくはなかったが、さすがに義理の父親には挨拶しないといけないだろう。


「緊張なさらなくても大丈夫ですよ。公爵様も、この度のご結婚については、心からお喜びでしたから」

 ローズの緊張を感じとったのか、着替えを手伝いながらソフィーが言った。

「そう……なの?」

「はい。奥様とは、数度面識があるとうかがっております。ふふ、レオン様が公爵様にそっくりで驚かれませんでした?」

(あ、怖い顔なのね)

 だとしたら、レオンの顔になれた今なら、もうそれほど怖いとは思わないかもしれない。

(あとは……ばれないといいのだけど)


 ソフィーの言う通り、ベアトリスはレオンとは顔を合わせたことはなかったが、カーライル公爵とは数度同席をしたことがあるはずだ。ベアトリスはパーティーやサロンに行くときは淑女のたしなみとして扇で顔を隠していたはずなので身代わりがばれることはないとは思うが、やはり緊張する。



「失礼いたします」

 ソフィーに案内された部屋に入ると、正面の机には重厚な雰囲気の男性が座っていた。彼がカーライル公爵だろう。ソフィーの言った通り、顔はレオンによく似ていた。どうやら、ここは公爵の執務室らしい。

 その公爵の隣には、無表情なレオンが立っていた。


「ああ、呼びつけてすまない」

 見た目よりも温和な口調で、カーライル公爵はローズに言った。笑みを浮かべると目元に細かい皺ができて、表情が柔らかくなる。

「留守をしていてすまなかった。久しぶりだな。そなたに会える日を半年前から心待ちにしていたぞ」

 やはり、ローズやベアトリスの知らないところで、この結婚はかなり早くから用意されていたのだ。この口調からすると、よもや公爵も、この結婚をベアトリスが聞いたのは数日前などということは知らないのであろう。 

 ぬるい笑顔を浮かべそうになった顔をあわてて伏せると、ローズは丁寧な動作で淑女の礼をとった。


「ベアトリス・リンドグレーンにございます。この度は、わたくしを選んでくださりありがとうございます。今後、よろしくお願いいたします」

「そなたを公爵家一同、心から歓迎しよう。少し、痩せたようだな」

「夏の暑さに負けたようです。けれどこちらでレオン様に丁重にご接待いただいております故、じきにもとに戻りましょう」

「そうか。ところで、今レオンとも話しておったのだが……」

 ちらり、と公爵はレオンをうかがった。レオンの表情は変わらない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=9269224&siz
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ