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身代わり令嬢に終わらない口づけを  作者: 和泉 利依
第二章 あふれかえるお菓子とお花

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「今度……」

「はい?」

「……いや。なんでもない」

 それだけ言うと、館へと戻っていった。待っていた執事と表門の方へ向かっていくのに気づいて、ローズは軽く目を見開く。


「もしかして、どこかへ行く途中だったのかしら」

 だとしたら、わざわざローズと話をするためにこのガゼボに寄っていったのだ。

(見た目怖くてちょっととっつきにくいけど、思ったより悪い人じゃないのかもしれない。よかったですね、お嬢様)

 ローズの中では、ベアトリスの夫としてのレオンは、とりあえずは及第点だ。ただ。

(いろんなことの認識が、どうも私たちとずれているみたい。でも、一方的に決めつけて人の話を聞かないような堅物ではなさそう。あの方なら、お嬢様ともうまくやっていけるかも)

 垣間見たレオンの人柄にローズは安心と心配を忍ばせて、ベアトリスの新婚生活に想いをはせた。


  ☆


 ゆっくりとお茶を飲んだ後(がんばってほとんどの菓子類はおなかに収めた)、ローズは館内を見て歩いていた。


 ローズの部屋があるのは、本館とは別の客用の離れだった。すでに結婚式に参列する縁者が何組かこの館に滞在しているが、彼らはすべて本館に部屋を用意されていて、花嫁とは式まで顔を合わせないように配慮されていた。そう聞いてローズは、安心して館内を歩く。


(うう、お腹いっぱいで苦しい)

 少し動かないと食べ過ぎて苦しいとは言えず、他の庭や館内に飾ってある装飾品を見て回りたいとメイドに頼んだのだ。

 こじんまりとしたその建物は、離れとは言ってもかなりの大きさがあり、ローズが数えただけでも十以上の部屋があった。


「こちらは奥様のお衣装のお部屋でございます」

 案内してくれたのは、ソフィーというメイドだった。彼女が、レオンのつけてくれたベアトリスの専属メイドだ。きびきびと他のメイドに指示を出しているところを見ると、まとめ役のような地位なのだろう。受け答えもしっかりしていて、彼女の教養の高さをうかがわせる。美人だが、それゆえに少し話しかけにくい雰囲気を持ったメイドだった。

「まあ……」

 その部屋に入ったローズは、思わずため息をもらす。


 部屋の真ん中のトルソーにかけてあるのは、真っ白いウェディングドレスだった。ベアトリスの結婚式のために用意されたものだ。

 体の線をなぞって床に流れ落ちていくドレスは、裾を長くひいた美しいシルエットをしていた。細かいレースが窓からの光できらきらと輝いている。ローズでなくとも、これを目にした女性なら誰でもため息をつきそうなドレスだった。


(やっぱり、このために、せっせとお嬢様の採寸をやってたのね)

 一度に採寸を終わらせると怪しまれると思ったのだろう。幾度にも分けてベアトリスの身体の採寸は行われていた。変だな、と思わないこともなかったが、デザインの違うドレスを何着か作るのだろうとあまり気に留めていなかった。


「最終的な仕上げはこちらに来てから、と聞いておりますので、明日からこの館のもので仕上げをしてまいります」

「ええ、お願いね。それにしても、本当に綺麗……」

「そうでございますね。きっと奥様にお似合いになると思いますよ」

「そうね」

 うっかり同意してしまってローズはあわてて咳ばらいをしてごまかした。ソフィーはわずかに怪訝そうな顔をしたが、それほど気にした様子もなかった。


 今はローズがベアトリスなのだ。気を緩めると、他人事のように話をしてしまう。

 気をつけなければ、と、改めてローズは気を引き締めた。


  ☆


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