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身代わり令嬢に終わらない口づけを  作者: 和泉 利依
第二章 あふれかえるお菓子とお花

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 人目があるのは気にはなるが、伯爵令嬢なので仕方がない。ローズだってさんざん、ベアトリスに一人で出歩くなと文句を言ってきたのだ。けれど、自分がその立場に立ってみると、つねに誰かに見られているという状況は落ち着かないものである。

「これはちょっと、うっとうしかったかもしれないわね」

 わが身を振り返って呟くと、ローズは少し反省した。


 のんびりとあたりを見回しながらローズがお茶を飲んでいると、館の中からレオンが出てくるのが見えた。とたんに、ローズは緊張する。

(こっちにこないといいけど……)

 ローズの期待に反して、どうやらローズに気づいたらしいレオンがまっすぐにガゼボに向かってきた。

 視線をそらしたまま気づかないふりとしていると、レオンが声をかけてくる。


「よく眠れたか」

 言いながら、レオンはローズの目の前の椅子に腰を下ろした。ローズは会釈しながら微かにうつむく。

 昨日顔を合わせた部屋の中とは違い、明るい日の下では、ローズの顔がはっきり見えてしまう。


「はい。とてもよく休むことができました」

「部屋の装飾はメイドたちに任せたが、あのような賑やかな部屋でゆっくり眠れるものなのか?」

(へ?)

 聞かれた意味が分からず、ローズはついレオンの方を向いてしまった。


「賑やか……ですか?」

「ああ。あのようにごてごてとした飾りが無闇とあって邪魔ではないのか」

(ごてごて?)


「いえ……むしろ、華美な装飾もなくすっきりとまとまった趣味の良いお部屋だと思いました」

「そうなのか。女性というものは、あれでもすっきりと見えるものなのか」

 真剣な顔でレオンは考えている。


 ローズは、カーライル公爵の妻、つまりレオンの母親がすでに亡くなっていることを思い出した。この様子だと、おそらく姉や妹もいないのかもしれない。だから、レースのカーテンや凝った装飾の鏡台などを見たことがないのだろう。そういえば、兄弟はいるのだろうか。あわただしく結婚が決まったために、それすらもローズは聞いていなかった。


 考えていると、レオンは目の前にメイドが置いたお茶を口にする。さらにテーブルの上に置かれた焼き菓子を一つ手に取ると口に放り込んだ。

「いつも思うが、菓子というものは甘いだけで歯ごたえも何もないな」

(はい?)


「……これは、そういうお菓子ですから。歯ごたえを感じないほどに軽く焼くのには、パティシエの高い技術と長年の勘が必要です。こちらの厨房にはとても腕のよいコックがいるようですね」

「そうなのか」

 レオンが目を丸くした。はい、とローズは頷く。レオンはもう一つつまんで口に入れるが、一瞬でとけるその甘さに複雑な顔になる。


「食事など、腹に入れば同じかと思っていた。コックの腕など考えたこともない」

「では、機会があれば褒めて差し上げてください。私はとてもこれが気に入りました」

 それを聞いて、レオンが、ふ、と笑った。

「そうか」

 ふいに浮かべたその笑顔に、ローズはどきりと胸を鳴らす。


(怖い人かと思ってたけど、顔はいいのね)

 ベアトリスは顔のいい男性が好みなので、文句なくこの顔を気に入るだろう。

(お嬢様、みつかったかしら)

 ローズがぼんやりとしていると、カップのお茶を一気に飲み干してレオンが立ち上がった。


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