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身代わり令嬢に終わらない口づけを  作者: 和泉 利依
第二章 あふれかえるお菓子とお花

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 鏡に映る自分の姿は、つくづくベアトリスに似ている。

 ぼんやりとその姿を見ていると、着替えの手伝いを終えたメイドたちが出て行き、代わりに今度はいくつもの皿を乗せたワゴンが運ばれてくる。

 その数は、見ていても見ていても終わらない。たまらずにローズは近くのメイドに声をかけた。


「あの……」

「なんでございましょう」

「こちらでは、いつも朝食はこんなに召し上がられるのですか?」

「いえこちらは、レオン様が奥様に、と特別にご用意したものです」

 テーブルの上に乗せられた朝食は人並だ。問題は、それ以外に所狭しと置かれたワゴンだ。どれにも色とりどりの果物やお菓子が乗っている。


「こんなに……」

 呆れて見ていたローズは、給仕に促されて席に着く。一通りの食事を終えても、デザートの方までは、あまりの量の多さに手をつけきれない。

(う、この焼き菓子も美味しい。この果物、初めて見るわ。せめてあのクリームだけでも……でも、食べきれない……)

 手を出すのを躊躇していると、ローズの食事が終わったと思ったのか、メイドたちが皿を片付け始める。


「そちらはあとでいただきますので、そのまま置いていってください」

 ほとんど手つかずのデザートまでメイドたちが片付けようとしているのを見て、あわててローズは声をかけた。


 わざわざレオンの指示で出してくれたものだ。このまま下げてしまうのは失礼のような気がするし、何よりももったいない。

 一度食事として提供したものは、手がつけられていようといまいと下げられればすべて破棄されてしまうことをローズは知っていた。


「かしこまりました。今日は天気もよいことですし、よろしければお庭にお茶を用意いたしましょうか?」

「庭……」

 ちらりと、ローズは窓の外を見た。

 館の中をふらふらとして誰か他の人たちに顔を合わせてもよくない。けれど、この場でこれ以上はもうお腹に詰め込むのは難しい。

(少し動けば、また入るようになるかしら)

 すぐそこの庭くらいなら、それほど使用人たちとも顔を合わせないで済むだろう。


「では、お願いします」

 お茶の用意をメイドに頼んで、ローズは部屋をでた。庭のガゼボまでは、別のメイドが案内してくれる。

「まあ」

 案内された庭を見て、思わずローズは声をあげた。


 そこには、色とりどりのコスモスが咲き乱れ甘い匂いを放っていた。その庭の真ん中にあるガゼボに、メイドたちが先ほどのお菓子とお茶を用意しているのが見える。

 テーブルに着くと、ローズはゆっくりとあたりを見回した。


「素敵なお庭ね。どこを見てもいろんなコスモスが目に入るわ」

「満開にはまだ少し早いので、これからもっと増えてまいります」

「そうなの」

 席についたローズの前に、メイドがお茶の入ったカップを置いた。


「こちらのお茶には、庭で取れましたローズヒップを使っております」

「バラの花もあるの?」

「はい。本館の中庭には、バラの花壇がございます。今は季節ではないのでわずかな花が咲くのみですが、春になると様々なバラが咲いてとてもきれいです」

「楽しみだわ」

(春になったら、お嬢様と見に行こう)

 そう思いながら、ローズはカップを手に取る。中に入っているお茶は、きれいな赤色をしていた。一口含むと、程よい酸味が口の中に広がる。


「おいしい」

 ローズが呟くと、メイドは会釈をして下がっていった。そうしてもう一人のメイドと、少し離れたところで姿勢よく立っている。

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