オリエンテーション
新連載始めました。
開いていただきありがとうございます。
ちょっと一回落ち着こう。
おーきく息を吸って、吐いて、肩の力を抜いて__叫ぶ。
「いやなんでだよっ!」
目の前には大きなテーブルに悠然と腰掛ける顔だけ詐欺の人たち。隠れキャラも含めた七人の攻略キャラが勢揃いしていた。
ゲームでもこの七人が同じ画面にいることはまずなく、以前の私なら鼻息荒くカメラのシャッターをポチッとしていたと思う。
だけど、一言物申したい。
お前達にモテようと一生懸命なそこらの令嬢の前でもヒロインのマリでもなく、何故極力関わりたくない私の前でお前達は揃うのか。正直今すぐ逃げ出したい。
「リジーに会いたかったから」
しかもジロルドお兄様そのセリフ、あなたのルートで好感度が高かったらヒロインに言うセリフですよね。学園の長期休暇でなかなか会えないヒロインを追いかけて地方の村まで行った時の。『君に会いたくて来てしまったよ』そう言ってヒロインの頭を撫でるんですよね。あっ、私そのライバルなんです。なのでその頭を撫でようとしてる手を引っ込めてください!
そしてその甘々フェイスも引き締めてください。
「あの……マリさんや他の御令嬢たちは」
そもそも他の女をどこにやったのだ、と。まさか放って来たのかと七人に問う。
それにあぁ、と頷いてメイン攻略キャラの第一王子、ルードシャンクスが口を開く。
そもそも一国の第一王子がこんな所で何してるんだ。ヒマなのか?執務とかないのかよ。それが口の中まで飛び出したが、慌てて飲み込んだ。
「素直にリジーの所に行くと言うとアイツら面倒臭いからな。この辺りの調査だと言って置いてきた」
もちろん嘘だがな。そう言う王子の顔は小悪魔的でなぜだか私は身震いした。
女達の悔しそうな顔が脳裏に浮かぶ。そうだよねぇ、幾ら嘘だと思っても王子の調査に自分たちがついてく訳にはいかないもんね。
「ところでリジー、この辺りに魔物が出ると有名なんだが。オレ殺ってこようか?」
「うん、ボクも手伝うよー!リジーにもしもがあったら遅いしね!」
いやギシュラック、お前一応勇者で本当に出来るからってそう簡単に殺ってくるとか言わないで。それもう勇者じゃない。魔王だから。可哀想に獣人でイヌミミともふもふしっぽを付けたミルもだんだんと影響受けてきてるし。
「お嬢様、わたしこの命をかけていつまでもお嬢様について行きます。なのでわたしもお嬢様と同じ家に住まわせてください!」
「おいエリ、お前まだ俺がやった魔法具使ってないのかよ?」
「聞いてんのかエリザベス!お前とっとと屋敷戻って来いって。みんな一応、その……し、心配してっから!!」
癖の強い7人の攻略キャラたち。
外見だけはとてつもなく美しい彼らに、私は怒鳴った。
「もういいから帰ってよ!!」
お疲れ様でした。
また見ていただけると嬉しいです。