第13章一流の資格
小さい頃は何も感じなかった。
どこにでもいる普通の姉弟だ。
変わったのは、母が皇帝となり家庭が完全に崩壊してからだろうか。
明るくわがままだった姉は厳しい指導により、日に日に塞ぎ込んで行った。
一方、私の方は変わらない。
母は自分に対する態度を一切変えなかった。
それが自分が姉より劣っているからだと、知ったとき、私は劣等感と嫉妬で頭がおかしくなりそうだった。
ある日、遂に耐えきれなくなった私は直接母に問いかけた。
「母上。少しよろしいでしょうか?」
「何かしら李弘?」
「母上。率直に言います。母上は私ではなく、姉上を皇帝にするおつもりですね。」
「そうよ。」
平然とした母上の態度に私は思わず声を荒げた。
「何故ですか。」
母上は少し考えた後に言った。
「良いかしら。人を愛することの出来ない者は3流、人を愛することが出来るものは2流。あなたは3流で悠基は2流。でも悠基は今後の教育で1流にすることができるわ。悠基は運動も出来るし頭も良い。私の後の皇帝にぴったりだわ」
私はその言葉に凄く納得が言ってしまった。
たしかにそうだ姉上には愛がある。
それは自分にはないものだ。
私は母上に問いかけた。
「では一流とは?」
母上は言った。
「愛する者を切り捨てでも己の信念を貫き通す者よ。」
母上は得意げだったが私には何故か悲しく感じられたのだった。
☆☆☆
そんな昔の夢を見ていた私は、そこからの闇に落ちていく自分を見ることなく、強烈な苦しさで目を覚ました。
辺りを見回すと横で梅姫が笑っていた。
「鼻を摘まむと苦しくて起きるというのは本当なのですね。」
私は、その笑顔の美しさに一瞬動揺したがすぐに取り直して言った。
「随分と危ないことをするじゃないですか。」
すると梅姫は怒った様子を見せた。
「私との大切な逢瀬の時間に居眠りなどするからです。」
そうだった。
昼下がりに梅姫の邸宅を訪ね、庭を眺めながら、お茶を飲み話をしていたらいつの間にか眠ってしまったようだ。
私は素直に謝ることにして言った。
「すみません。」
すると梅姫は明るく笑みを浮かべて言った。
「あら。冗談ですよ。別に怒っていません。そんなに素直に謝られると困ってしまいます。ところで、何か複雑な表情を浮かべていらっしゃいましたが何か夢を見ていたのですか?」
その言葉に私は言った。
「はい。母上の夢を見ていました。母上が言うには私は3流だそうです。」
梅姫は言った。
「あら。随分、酷いことをおっしゃるのですね。」
私は言った。
「本当のことですから。でも私もいつまでも3流ではありません。最近は2流になろうとしていると自負しております。」
その言葉に梅姫は笑って言った。
「あら。志しの低いこと。どうせなら1流を目指されてはいかがですか?」
私もまた言った。
「私には無理ですよ。」
(あなたを切り捨ててまで貫き通すべき大切なものが私にあるとは思えませんから)
臆病な私は最後の言葉をそっと呑み込んだのだった。




